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紙・板紙市場、春以降に需要減少か

 (株)矢野経済研究所は、国内外の紙・板紙市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

 同調査によると2024年の紙・板紙市場は、前年に引き続き物価高による個人消費の低迷に加え、コスト削減にともなう薄物化や包装材の簡素化の動きもあり、段ボール原紙や紙器用板紙などのパッケージング用紙は再び前年を下回る推移となっている。また、新聞用紙や印刷・情報用紙といったグラフィック用紙についても、デジタル化が引き続き進展する中で、ユーザー企業のコスト削減意識も強まり、一段と減少を強めている。

 ただ一方で、国内需要が低迷する中で、円安水準の長期化を背景に輸出が増加しているため、2024年の紙・板紙出荷量(国内出荷量+輸出)は減少するものの、前年より減少幅は縮まる見通しとなっている。

 紙・板紙需要が伸びない中、コスト上昇が続いたことで、2024年には多数の品種において再び価格改定が実施された。秋に実施された品種が多かったこと、また製紙メーカーの足並みが揃わなかったことで新価格を浸透しきれていない品種があることなどから、2024年内の需要への影響は軽微と見られる。

 しかし同調査では、「印刷・加工事業者の価格転嫁が本格化すると見られる2025年春以降、再び需要減少傾向が強まる可能性はある。ただし、価格改定は製紙メーカーにとって、現在推進している事業構造改革や経営基盤強化においては避けられないため、今後、他の品種においても価格改定が実施される可能性は高い」としている。

 2025年は景気が緩やかに回復していく一方で、海外経済の低迷や物価高にともなう買い控えの継続による景気下振れのリスクも拭えない。そのため、「製紙業界を取り巻く需要環境は多少の改善は見込めるものの、大きくは変わらないと考える」としている。こうした中で、価格改定が紙・板紙需要に大きな影響を及ぼすことになれば、2025年の紙・板紙出荷量(国内出荷量+輸出)は再び減少すると予測している。

 なお、矢野経済研究所では同調査のオリジナル情報が掲載されたショートレポートを1,000円で提供しているほか、「2025年版 紙パルプ産業白書」(2025年1月31日発刊 B5・1,115ページ 16万5,000円(税込)を発刊している。

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