DM体験価値に影響する2つの評価基準
UX(ユーザーエクスペリエンス)や人間中心設計などの研究を行う千葉工業大学先進工学部安藤研究室(以下「安藤研究室」)とトッパン・フォームズ(株)は、生活者がダイレクトメール(DM)を受け取った際の認知と行動に関する調査・分析を行い、DMの体験価値を左右する評価基準として「新しい情報への出会いの期待度」と「DMの必要性の認識」の2つのポイントが関連していることを確認した。
DMは現在も有力なメディアのひとつであり、本人宛のDMの開封率は63.1%、受け取り手が開封後に何らかの行動を行う行動喚起率は15.1%と調査結果が出ている。このようなDMのメディアとしての特性を示す指標がある一方、生活者のDMに対する考え方や態度について体系的な調査・検討が実施されるケースは少ないのが実情である。同社では、「受け取り手にとってDMがどのような体験価値として認識されているのかを明らかにすることは、DMが生活者中心のメディアとして発展していくために不可欠である」としている。
今回、DMなどの各種通知物に対する生活者の考え方や、DMを受け取った後の生活者の態度を明らかにすることを目的に、定性調査と調査結果の分析を実施。定性調査では、トッパンフォームズの社員30名を対象としたワークショップ形式の調査と、20代〜60代の男女1,000名を対象としたアンケート調査を実施。その結果、「新しい情報への出会いの期待度」と「DMの必要性の認識」という2つの評価基準が、DMを受け取った後の消費行動や情報取得の取捨選択に影響があると確認できた。
「新しい情報への出会いの期待度」とは、生活者が受け取ったDMなどの広告情報の中から、役立つ・関心のある情報にどの程度自ら出会いたいと感じているかという尺度を意味している。また、「DMの必要性の認識」とは、生活者が生活に関する重要なDMと広告情報が中心のDMをどの程度明確に区別し、広告情報をどの程度活用しているかという尺度を意味している。
次に、調査によって分かった2つの評価基準を組み合わせ、DMの受け取り手の態度を4パターンに分類。その態度分類を用いてDMを受け取った消費者の行動特性を分析した。その結果、生活者が「有益な情報が得られる」と感じたDMなどの通知物を、その後も継続的に受け取るという行動において、受け取り手は自分にとって知らないと不利益になる情報を重要情報として保存し、その中で利用できる有益情報がその後の消費行動につながる傾向があることを確認できた。
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