「挑戦」に向けた選択〜「アズーラ」で技術を磨く
[アズーラ採用事例]ユーザー間の横の繋がりに期待
エコスリーの迅速で柔軟なサポート
プレートをアズーラに変更後、印刷物の再現性についてクライアントから「良くなった」という評価を得ている。また、早坂氏も品質について「画線部の再現がシャープになった」と評価し、現像レスの優位性を実感しているという。同社では「まだ速乾印刷には取り組んでいない」としているが、エコスリーによると、「これは水が切れている証拠であり、アズーラ採用によって、すでに速乾印刷に近い域に達している」と評価する。
それは工場全体の生産性の向上という形ですでに証明されている。「後加工から見ても乾燥時間の短縮は顕著である。いままでは半日くらいの乾燥待ち時間を要したチラシの仕事も、いまでは2時間程度で断裁工程に移行している」(石坂氏)
「アズーラが速乾印刷に適している」。この理由はシャロウバレーと呼ばれる砂目の特長にある。浅くて細かな均一の砂目構造により水を絞れ、適正な水量・インキ量で印刷でき、油性インキでの速乾印刷を実現できるというわけだ。本来は水とインキを絞るのがオフセット印刷の原則であることは誰もが知っていること。乳化を最大限に抑えて印刷すれば、ドライダウンも減り、網点も美しくなり、彩度も上がる。当然の理論だ。
ただ、そこには「本来あるべき印刷機の姿に仕立て直さなければいけない」、いわゆる日々の機械メンテナンスが重要になってくる。ここを理解することでアズーラは「プロ仕様のプレート」ということになるし、理解できなければ、ただ「刷りにくいプレート」となってしまう。「水を絞る」というオフセット印刷の原理原則を踏襲し、そのためのメンテナンス改善を行えば、「アズーラによる速乾印刷」のハードルはそれほど高いものではないようだ。
前記のように、同社の強みは「人」である。そして今回の設備投資も岡本社長との出会いをきっかけに始まっている。その過程においても、エコスリーの迅速で柔軟な対応が同社の選択決定を左右した。
石坂氏は、「我々の困り事をエコスリーの担当営業に相談すると迅速に対応してくれるし、プレートの運用はもちろん、印刷についても品質評価方法などを手厚くサポートしてくれる。現場として非常に安心できる環境を提供してくれている」と評価する。
さらに、エコスリーのユーザー会の存在も同社に期待と安心感を促している。
「ユーザー会には一度出席したが、皆さんユニークで気さくな方ばかり。また何らかに特化している会社が多いように感じた。多くのヒントや刺激をもらう機会として非常に期待している。また、『アズーラ速乾印刷』というひとつの技術を共通の価値観とし、『工場の改善で印刷会社全体の変革を目指す』という同じ志を持つ印刷会社が集う『工場長サミット』には当社もぜひ参加してみたい。経営者ではなく、現場同士の繋がりを育めるユニークで他にない取り組み。現場が他社を知ることで、きっと刺激になるはず」(山根常務)
「新たな挑戦」を促す起爆剤に
同社では、アズーラ採用による環境対応や速乾印刷による品質向上について、とくにクライアントに積極的なアピールはしていない。「品質は良くなればクライアント側で気付いてくれる。やはり、当社が100年企業に向けて、印刷現場の意識と技術の両方を底上げしていくという『新たな挑戦』を促す起爆剤になればと考えている」

同社の印刷設備は、菊全判4色機1台、菊半裁4色機1台、菊半裁2色機1台、封筒印刷用の軽オフ以外はKOMORI製である。今後は、これら印刷機のメンテナンスを柔軟に効率良く実施するスケジューリングの構築を目指しており、とくに繁忙期でも安定した印刷機の稼働を実現させていく考えだ。
さらに、昨年は事業再構築補助金を活用して、フラットベッドUVプリンタ、レーザー加工機3台、カッティングプロッターも導入。紙以外のアクリルや木材などにも印刷できる設備に投資することで、困り事解決における提案の幅も広げていく。
印刷産業が「アフターコロナにおける印刷経営とはどうあるべきか」を模索するなか、同社はこれまで通り、印刷にこだわることなく、お客様に寄り添い、困り事をひとつひとつ解決していくことに経営資源を集約し、会社全体でこの理念や意思をより理解し、共有できる環境を整えていく考えだ。アズーラ採用による技術向上は、そのブランディングに向けた「挑戦」を支える一部の機能として期待が高まっている。
