若手の想像力をカタチに〜企画力が評価されIPA2021で入賞
思い出づくりをグッズで支援
東京オリ・パラ大会の思い出を子どもたちに
「『nonchan』とおうちでde応援」は、おうちでメガホン手づくりキット、おうちでテーブルマット、おうちでメダリスト、おうちでうちわ、彩りガーランドの5製品で構成される。「家族の大切な思い出作りを手助けしたい」という想いを込めて開発した応援グッズで、Color1000iPressやVersant2100Pressなどのプロダクションプリンターを使用して生産されている。
開発コンセプトとしては、コロナ禍によって増加した「おうち時間」を家族で楽しく過ごすための商品となっており、同社の狙いは、東京で開催されるオリ・パラ大会を自宅で応援するグッズとしての利用だ。
本来であれば、自国開催ということで大きな盛り上がりが期待されていながら、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、ほぼすべての競技が無観客で開催された今回のオリ・パラ大会。前回の東京大会をリアルタイムで観戦した世代にとってオリ・パラは、今もその興奮と感動が鮮明に思い出として残っている。しかし、前回大会を知らない世代は、せっかくの自国開催でありながらテレビ観戦などでしかオリ・パラ大会を体感することができない。そこで同社は、オリ・パラ大会の興奮と感動を少しでも家庭で味わうことができる応援グッズとして、「『nonchan』とおうちでde応援」を制作した。
無観客での開催決定のタイミングもあって、商品企画の確定から制作までは、かなりタイトなスケジュールであったが、若手社員を中心とした「新戦略開発室」メンバーの努力もあり、「『nonchan』とおうちでde応援」は、東京オリ・パラ大会の開催前に完成した。
丹羽氏は、SNSに投稿された「『nonchan』とおうちでde応援」購入者のコメントを見て「お子さんがグッズを一生懸命に手作りしている画像が投稿されていた。これを見て、このお子さんにとって今回の東京オリ・パラ大会は、確実に思い出の1つとして記憶に残ると確信した。改めて、この企画を実現できたことに満足している」と、BtoC戦略の成功という視点とは別に応援グッズを通じて、企画の趣旨である思い出作りに貢献できたことへの達成感を語った。
IPA2021で日本から入賞した5作品の中でも同社の作品は、高品位印刷や技術力といった視点よりも企画力やストリー性という要素において高く評価された部分があったのかもしれない。
IPAは客観的評価を知ることができる貴重な場
IPAに作品を応募する意義について白橋氏は、「客観的な評価」と説明する。
「我々が商品に込めた想いが、どう伝わるかを確認するためには、やはり客観的な目線が必要となる。今回、IPAに応募した理由は、我々の新たな取り組みが向かおうとしている方向が正しいのかを判断することが目的であった。その結果、入賞という栄誉を得たことで我々の挑戦が国際的にも評価されたことだと実感している」
また、丹羽氏も「今回の入賞により、グローバル規模で『白橋』というブランドを高めることができたと思う。また、今後も『白橋』としてエントリーする権利を得ることができたと実感している」と、IPAに参加したことで同社の若い力が国際レベルで評価されたことが確認できたと語る。
入賞後、同社の若い社員たちから、今まで以上に積極的に意見がでるようになるなど、モチベーションも変化していったという。加えて、さらなる上位賞の獲得にも意欲的になっていった。
「新しいことに挑戦することの大切さや現状に満足してはいけないという危機感の両方を今回の入賞を通じて社員に伝えることができた。その点からも参加してよかったと実感している」(白橋氏)
若い世代の力とアイデアでさらなる上を目指す
同社では今回の入賞作品のほか、「筆文字名刺」という作品も出品している。この作品は、著名な書家が注文の都度、筆でしたためた芸術作品である「毛筆書」を利用し、名刺を芸術作品に昇華させたもの。表面の氏名の印刷では、紫が混ざる風合いをシアン90%、マゼンタ90%、イエロー85%、ブラック80%のリッチブラックで再現。相手に渡した瞬間に記憶に残り、名刺の山の中に埋もれることのない、価値ある名刺となっている。
「筆文字で印刷した名刺はあるが、当社の筆文字名刺は、一流の書家がしたためた唯一無二の名刺である」(白橋氏)
コロナ禍によってスタートした同社のBtoC戦略は、若い社員を中心に進化・発展を目指してく。IPAにも継続的に挑戦を続けていく方針だ。
「IPAに参加したことで、改めて世界のレベルを肌で感じることができた。今回は企画力が評価されたと実感しているが、今後はそこに技術力を加えることで、さらに上位を狙うこともできるはず。今後も若い世代の斬新なアイデアと当社がこれまで培ってきた印刷技術で、世界に通用する印刷物をつくっていきたい」(白橋氏)