業界発展支えて100周年〜モノ売りからコト売り商社へ
機材販売から販促、環境、経営支援まで
昭和47年、古門慶造氏はモトヤに入社し、49年秋からタイプレスの技術サービス担当として奔走する毎日が続くことになり、「大阪市内担当から神戸へ転勤して配達からサービス、営業までやりました。東京に転勤して後継機のマイコン搭載のMT-5000が発売され、爆発的な売れ行きになり、電気系統の技術サービスが追いつけない状態となって開発部門と大喧嘩することもあり、『それならお前がやれ』ということで気がついたら本社の取締役開発部長の職に就いていました。まだまだ活字も使われており、思えば良い時代でした」と懐かしげに語る。
三代目 慶造社長の時代
基盤築いた活字と決別
昭和61年5月、サービスから技術開発部、時には営業も。鋳造工場から母型の現場まで、ひと通り経験した上で3代目代表取締役社長に古門慶造氏が就任して現在に至っている。

昭和57年、九州松下電器との共同で電子編集組版機WP-6000を開発し、組版機のシステム化と完全自動制御による高品質化、効率化に貢献。60年には電子組版システム「LASER7」シリーズを発売。63年に爆発的に市場に受け入れられた「EX」シリーズを発表後、組版機絶好調の平成8年、企業基盤の土台を築いてきた「活字」との決別の日を迎えたのを機に本社2階に「活字資料館」を設置した。鉛活字の製造や組版作業の様子、今に引き継がれているフォントデザインの過程などに加え、かつての名機の数々が展示されているが、この開設日はモトヤがアナログからデジタルの世界で生きていくことを宣言した記念すべき日となった。
「平成10年、プロ用ウインドウズDTP『PROX ELWIN』を発表し、18年まで組版機メーカーとして種々の機器を業界に提供してきました。私の思考の転機となったのが阪神淡路大震災です。毎年開催していた神戸支社の展示会は翌年に開催しました。開催にあたり社員から『来場者に対してモトヤの考え、方針についての話をお願いしたい』という申し出が再三にわたり、『それなら』ということで昼食を挟みながら雑談形式で開かせて頂きました。そこで私は開口一番、『今日は機械を買わずに印刷会社としての強みをもつヒントを持ち帰って頂きたい』と申し上げました。皆さん驚かれた様子でした。機材販売会社のトップとして、また展示会主催会社のトップの言葉だから皆さんキョトンとされた感じでした。『機械を買ってまた地震が起きたらどうしますか。大手にさらわれた後の仕事確保に値下げ受注という下請け的活動になりませんか。それなら止めてください。大切な資金であり、有効活用してください』、そうお願いしました。つまり厳しい競争社会の環境下、値段競争ではなく、他社にできない仕事、他社にない強みを見つけていただきたかったわけです」。この当時の考えがコラボレーションフェア開催の基になっている。
その後、古門社長は長期化している経済不況下、業界でいち早く「コラボレーションフェア」を企画開催し、印刷会社相互のコラボレーションを提案した。平成14年以来、これまで東京・名古屋・大阪・神戸・姫路・福岡の各地で開催し続けてきたが、近年では新型コロナウイルスによる感染防止の観点から中止されている。
この開催について古門社長は「印刷会社それぞれが自社の強みを共有し合うことで生産上の得手不得手を解消し、工場作業の効率化などに加えて市場からのあらゆる要望に即応する体制確立が実現して需給両社の絆を強めることになります」と語る。草創期に掲げた社是「顧客と共に栄える」の経営方針に基づく業界活性化に向けた同社の貢献姿勢を具現化する形の開催であった。
結果的にはこれが業界に浸透し、業界思考の商社だとの理解を深め、機材販売にも繋がった。
モトヤ書体
人材教育と人材派遣
書体開発は、大阪に本社を構えた昭和24年に始まり、鉛活字からタイプ活字、写植用文字盤、デジタルフォントなど、様々の情報発信手段に対応して製品形態を変えている。その生命ともいうべき可読性や美しさが開発の基本中の基本とされてきた。
情報伝達の正確さとデザイン性を併せ持ち、Web地図フォントとしてまた、携帯電話などに採用され、また組み込み分野では医療関係や精密機器、車載ディスプレイのほか、ゲーム機や地図など幅広い分野で採用されている。
平成12年にフォントのオンライン販売事業として「Moto Shop」を開設。22年9月、Google社の携帯電話向けOS「Android」の開発を推進する団体であるオーン・ハンドセット・アライアンス(OHA)に参加し、Androidプラットフォームに対してモトヤフォントを、オープンソースライセンスに基づいて提供を開始。また、28年にはモトヤ全書体が年間ライセンス方式で使用できる「モトヤLETS」の提供を開始した。こうしたフォントの理解を深めるために専用サイトを立ち上げ、ラインアップをはじめ、導入事例や「お試しフォント」が無料でダウンロードできるなどの必要情報を発信している。
さらに教育部門では平成13年に東京・大阪・名古屋・福岡の4地区に「モトヤDTPスクール」を開校し、(公社)日本印刷技術協会のDTPエキスパート認証試験指定校として認定を受けている。
翌14年には東京・大阪圏でDTPオペレーターに特化した人材派遣事業を開始している。
