DAC次世代検査装置「Prenity」導入
デュアルマスタで夾雑物過検知の問題解決 - 検査精度と歩留まり向上実現
総合印刷会社として事業展開する(株)セントラルプロフィックス(本社/東京都中央区、田畠義之社長)は2021年8月、ダックエンジニアリング(株)(以下、DAC)の次世代オンライン枚葉検査装置「Prenity(プレニティ)」を枚葉印刷会社として初めて、千葉第一工場(千葉市緑区)に導入し、強みとする安定した品質管理体制をさらに強化した。2枚のマスタを取り込む新機能の「デュアルマスタ」により、マスタを修正することなく、紙由来の「夾雑物」を印刷不良と判断しない検査の実現を可能にした。同社豊洲工場の佐野正浩副工場長は「夾雑物を気にする必要がなくなり、その分、検査精度を厳しくできるようになった」と検査精度と歩留まり向上につながったことを最大のメリットとしている。

事故多発の「素人集団」からスタート
同社の始まりは1950年。17名の写真製版業者が集い、技術者集団として設立した。当時の社名は「(株)セントラル・プロセス社」だ。しかしMacintoshなどの台頭によるデジタル化で、製版業だけでは厳しい経営環境になってきた。そこでオフセット印刷機を導入し、2008年頃から印刷業への本格的な業態変革を推進した。しかし、「印刷」のノウハウは皆無であったため、「当時は印刷事故を多発する素人集団であった」と佐野副工場長は振り返る。
そんな同社も、今では安定した品質管理体制を最大の強みとする総合印刷会社に変貌を果たした。そのきっかけとなったのが、2011年に豊洲工場(東京都江東区)に導入したDACのオンライン枚葉検査装置「Trinity(トリニティ)」である。
「2011年1月に小森コーポレーションの菊半5色オフセットUV印刷機の導入と同時に、さらなる合理的な検査体制を構築するために導入した。DACの検査装置は文字欠けに強く、検査アルゴリズムも簡単と聞いていたことと、印刷専門商社からの推奨もあったことから、数ある検査装置メーカーからDACの検査装置を選ぶことにした」(佐野副工場長)
第1号機の検査機を導入した結果、品質管理や作業負荷軽減など様々な効果が実感できたことから、「2011年夏には2台のオフセット印刷機にDAC検査装置を追加で設置した」(佐野副工場長)。現在は4台ある豊洲工場のすべてのオフセット印刷機にDACの検査装置を設置している。同社の印刷オペレーターは、「もう検査装置が設置された印刷機でないとこわくて印刷できない」と話しているようだ。
トラブルシューティングのツールに
同社が豊洲工場にDAC検査装置を導入して10年。この間に実感した最大のメリットは、印刷不良を「見える化」できるようになったことだ。
「モニターに時系列で欠陥画像が重なって表示されるのだが、どの位置にどのような欠陥が出ているかが一目瞭然で分かる。これにより欠陥検出はもちろん、場合によっては印刷機の不具合を見つけることもできる」(佐野副工場長)
また、従来は数百枚毎に1枚の抜き取り検査をしていたが、「その直後の印刷物から不良が発生すれば、そのあと数百枚は不良に気付けないし、また印刷後の全量検査も重要となり、かなりのプレッシャーとなる」(佐野副工場長)。検査装置を設置することで、印刷不良が発生すれば「アラート」ですぐに知らせてくれるため、「他の作業をしていても、すぐに画像をもとにヒットした箇所を確認、ナンバリングと紐付けされている用紙を確認し、印刷を続けるか止めるかの判断もすぐに行える。このため、ヤレ紙も大幅に削減できた」(佐野副工場長)
さらに、佐野副工場長がDACの検査システムで最大に評価しているのが、欠陥データ管理・閲覧システム「Gallery(ギャラリー)」の存在だ。
「ネットワークでつながっていれば、どのパソコンからでも後から検査内容を閲覧できるので、印刷中は印刷に集中し、印刷終了後にGalleryで確認してジャッジするようにしている。その他、検査中の様々な設定履歴も記録されるため、より適切な検査への管理・分析にも活用している。当社の千葉第一工場では、他の検査装置メーカーも使用しているが、閲覧ソフトの扱いやすさについてはGalleryが断然に使いやすい。抜け、水はね、油はねなど、欠陥のトラブルシューティングとして活用している」(佐野副工場長)
また、他メーカーの検査装置と比べて、DACの検査アルゴリズムは非常に理解しやすいことも評価のポイントとなっているようだ。
「例えば、現状の検査の設定では見逃してしまった印刷の汚れを検出させたいという場合は、RGB濃度差変化と縦横のサイズを調整して検出されるようにする仕組みのため、その設定変更についても明快である。ブラックボックス化しやすいメーカー推奨設定を、自社に合わせてカスタマイズすることも他メーカーのものと比べて容易である」(佐野副工場長)
もちろん、これはユーザー企業の環境や相性などによって違ってくるものだが、同社にとってDAC検査装置は本当に使いやすいものなのだろう。佐野副工場長のコメントからは、その思いがひしひしと伝わってくる。

