本紙校正用インクジェットプリンター「Proof Jet F780」導入
顧客やデザイナーも評価〜校正作業の課題を本紙出力で完全解決
(株)大鹿印刷所(本社/岐阜県損斐郡大野町、大鹿道徳社長)は昨年7月、(株)メディアテクノロジージャパンが開発した本紙校正用インクジェットプリンター「Proof Jet F780(以下、「PJ-F780」)」を導入し、本紙校正による本格運用を開始した。高度な品質が求められるパッケージ印刷において、「PJ-F780」による本紙校正は、同社にどのような成果をもたらしたのか。今回、同社・大鹿社長をはじめ、デザイン部の渡辺和也統括部長、生産部CTP課の古田広行課長、そしてデザイン部制作課の鈴木麻予氏と生産部CTP課の小林麻子氏に、「PJ-F780」を導入した背景やその後の成果などをうかがった。

(株)大鹿印刷所は、明治33年の創業以来、菓子や食品などのパッケージ印刷に特化した事業を展開し、現在では、企画からデザイン、印刷、加工、製函までの一貫生産体制によるトータルソリューションを顧客に提供している。同社の手がけるパッケージは、誰もが知る人気テーマパークをはじめ全国各地で使用されている。その顧客が評価する同社の強みの1つがデザイン力だ。
「当社は、デザイン面においてヒット商品の制作を1番のテーマとして日々取り組んでいる。当然、人気商品となれば追加受注につながり、逆に追加受注がなければ、今後のデザイン制作の検討材料として活用していく。これらを管理することで、より購入意欲をかき立てるデザイン制作を行い、結果としてお客様のビジネスに貢献することができる」(大鹿社長)
その同社は、昨年7月、本紙校正用インクジェットプリンター「PJ-F780」を導入し、稼働を開始している。
インクジェット専用紙のメリットとデメリット
「PJ-F780」導入の目的について、渡辺部長は、まずインクジェット専用紙による校正の課題を挙げる。
導入以前の同社では、インクジェット専用紙による校正出力を主軸としていた。インクジェット専用紙は、高品質な校正を出力できるが、その分コスト高になってしまう。加えてインクジェット専用紙と印刷本紙での視覚的な色の差も問題となっていた。
「お客様からオフセット印刷機による本紙印刷とインクジェット専用紙との色差を指摘されることもあった。白色度が異なるので印刷本紙は、インクジェット専用紙と比較して全体的に少し沈んだ色に見えてしまうこともある。大きな問題には至らなかったが、お客様からは、色における校正と本紙の整合性を求められるようになった」
そのため同社では、約2年前に他社メーカーの本紙に対応できる校正システムを導入し、これら課題の解決に向けた取り組みを開始。しかし、結果として、同社が思い描いた運用はできなかったという。
同社・デザイン部制作課の鈴木氏は「データの内容にもよるが、1枚の出力に約40分もかかることから作業効率が落ち、また、連続出力を行うと印刷時にヘッドが用紙に接触し、擦れたような仕上がりになってしまうこともあった」と、機械自体の耐久性が同社の作業フローに適していなかったことを指摘。さらに、常にメンテナンスを要することから作業負荷が増大していたことも問題となっていたと説明する。
しかし、本紙対応ということもあり同社は、試行錯誤を重ねながら使用を継続。その結果、この本紙対応の校正システムによる出力は月間200枚、インクジェット専用紙での出力が月間600枚と圧倒的にインクジェット専用紙による出力が多く、本紙校正への移行という同社の目的を達成することはできなかった。
本紙に対応し、さらに作業効率の高い校正システムを模索していたとき、メディアテクノロジージャパンから「PJ-F780」の提案を受けた。
「PJ-F780」は、商業印刷モデル、パッケージモデルの2機種のラインアップがある印刷本紙対応インクジェット校正プリンター。B1サイズの印刷本紙に対応し、色数はCMYKの4色に加え、商印モデルはライトシアン、ライトマゼンタ、ライトブラックが追加されることで色域が広がり、ハイライト部分の再現がより可能となる。また、パッケージモデルはオレンジ、グリーンが搭載されていることで特色の再現が可能。さらにオプションで白インクやニスインクを搭載することができる。同社では特色の原色化(カラー印刷化)を取り組みの1つとして推進しており、カラーの色域の高い商印モデルを選択した。
求めるのはオフセット印刷同等のクオリティ
「PJ-F780」導入にあたり、同社は、さらに違うメーカーが提供している本紙対応校正システムとの比較検証を実施。その結果、新たな本紙校正システムとして「PJ-F780」の導入を決定した。

その決定を大きく左右したのは、現場スタッフの意見だと、渡辺部長は説明する。
「実際のプリント業務を行うスタッフでPJ-F780の実機を見学したところ、基本性能や印刷品質など、すべての面で見学したスタッフの評価が高かった」
同社に在籍する56名のデザイナーのうち、36名が女性である。そのため女性が使いやすい機械であることも、導入条件の大きな選択肢となったようだ。
「PJ-F780」の本格運用に向け、同社では検証テストを開始。その1つが用紙検証だ。同社では、様々な用紙を使用してテストを実施し、デザイナーが求める色をしっかりと再現できているかなどを確認していった。
同社・生産部CTP課の古田課長は、「ベンチマークとしては、既設インクジェットプリンターの出力時間に対し、PJ-F780では、どのモードで出力すると品質が担保できるか、また、どれだけオフセット印刷の品質に近づけることができるかなどを検証した。いかに本紙対応といえども、オフセット印刷の品質、つまり本製品に近い色再現ができなければ、PJ-F780を導入した意味がない」と実施した検証作業について説明する。
同社が生産するパッケージは、消費者に対して商品をアピールすることが最大の使命である。陳列された数多くの商品の中で、いかに消費者の目を引き、購入意欲をかき立てるかが求められている。商品の売れ行きが好調になれば、顧客のビジネスにも影響する。そのため品質要求は年々高まり、校正といえども例外ではない。だからこそ、同社も検証テストに一切の妥協を許さなかったという。
そして約3週間のテスト運用を経て、本格稼働を開始。「フラットベットタイプであることから、これまでのプリンターとの機構上の違いに若干、戸惑いもあったもののメディアテクノロジージャパンとCGS Japan社のサポートもあり、CMSではインクジェット専用紙よりも印刷物に近い色域を再現することができ、スムーズな立ち上げを行うことができた」と小林氏。そして「PJ-F780」による本紙校正は、多くのメリットをもたらすこととなった。
