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日研化学研究所、「CSR委員会」でステークホルダーの要求に対応

CSRで印刷会社に貢献|下畑智裕CSR委員長に聞く

 印刷資機材メーカーの(株)日研化学研究所(本社/名古屋市中区栄2-16-1、牛田寛治社長)は、2006年に設置した「CSR委員会」を中心に、環境保全をはじめとした様々な活動を展開し、高度化・多様化するステークホルダーの要求に応えている。そこで今回、下畑智裕CSR委員長(情報技術課 次長)に同社のCSRの取り組みとともに、CSRが社内ならびに印刷会社など外部にもたらすメリットなどについて語ってもらった。


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下畑 CSR委員長


「エコアクション21」に継続的に認定。非常事態でも製品供給可能なBCP体制を構築

 世界的な社会環境の変化にともない、取引先や顧客から、従来以上に高度なコーポレートガバナンスを求められるようになってきた。そこで当社は2006年9月、それまで取引先や顧客のニーズに対応してきた「総合企画会議」の部署を「CSR委員会」に改称し、CSRの本格的な取り組みを開始した。

 当社の製造販売する製品は化学物質を含むものが多いため、コンプライアンスを遵守し、お客様に間違いのない情報を提供することが最重要課題と位置付けている。このため、ステークホルダーからのあらゆる要求に応えられる体制の構築を目的として、全社で取り組んでいるところである。

 現在、CSR委員会の中に、環境保全、品質標準化、倫理、情報セキュリティ、BCP策定という各小委員会を設置していて、それぞれの分野別に人を集めてステークホルダーの要求に応えられる活動を行っている。例えば、昨今では何かと取り沙汰される問題として環境問題の対応があるが、これについてはサプライチェーンとしての会社としての責任を果たすため、1つのツールとして環境省の「エコアクション21」に2009年から継続的に取り組み、認定を受けている。エコアクションのマークを名刺に使用したり、環境経営レポートとしてホームページに各項目の計画や、それに対する実績などをレポートとしてまとめて配信している。

 その中、事務局から指導されているのは、外部とのコミュニケーションが少ないというところだ。そのため、その活動の1つとして、名古屋工場の近隣で毎年行われている花火大会のゴミ拾いのボランティアに社員を集めて参加している。このほか、東日本大震災を契機に、事業継続に対する問い合わせが非常に増えてきたため、CSR委員会が主体となり、ソフト/ハードの両面で本格的なBCPの策定を行っている。いろいろと考えた結果、当社にとって重要なBCPとは、どのような時でも製品を供給できる構造を構築することだという結論に至った。このため、以前から安否確認のシステムは導入していたが、よりセキュリティの優れたシステムを導入した。これにより、地震や台風などの有事の場合だけでなく、コロナでのパンデミック対策なども含め、様々なシチュエーションにおいて社員同士が連絡を取れる体制を構築している。

QC活動を独自に簡素化した「カイゼングランプリ」を実施

 CSRに取り組むようになり、各分野の知識が増えたことで、あらゆるステークホルダーからの要望に「聞く耳」を持つことができるようになった。相手の言っていることに対して、会社としての明確な考え方を発信できるようになった。これが結果的に製品への付加価値となり、お客様から選んでいただける要素になっていると考えている。

 やはり、環境基準に対しての製品の開発製造が一番求められることだが、それについての調査依頼などについても、情報が蓄積できてきたため、明確な回答が素早くできるようになった。

 また、当社のCSR委員会は役員主導ではなく、私が責任者となり、委員も各部門の責任者や係長クラスも含めて議論しているため、単純なトップダウンではなく、横のつながりにより、CSRの理論を広げやすくなっている。これにより、社内のコミュニケーションが円滑に進むようになった。また、横のつながりのため、今まで見えにくかった社内の問題が明確に浮かび上がってくるようになったと感じている。

 また、QC活動を簡素化した「カイゼングランプリ」を2015年から実施している。半期に1つずつ、部署別で改善活動を社内グループウェアに投稿するというもので、従業員同士で「いいね!」ボタンを押せる仕組みになっている。コメントも入れられるようになっており、社員間でのコミュニケーションツールにしている。一般のSNSでもそうだと思うが、自分で発信したことに「いいね!」されることは嬉しいことだし、その活動をやって良かったと楽しみながら行うことができている。そして、優れたものは社長から表彰と備品を購入するための金一封がもらえるようになっており、それを目標に改善活動を頑張っている取り組みとなっている。

GP認定制度の資機材認定を第1号で取得。2019年には「GP資機材環境大賞」に

 当社では、「人と印刷とを化学で結ぶ開発型企業」という経営理念の中で、地球環境保全を重視しオリジナリティーのある技術開発を追及、また時代に則した付加価値の高い製品開発を掲げている。

 その具体的な取り組みとして、日印産連「GP認定制度」では、資機材認定メーカーとしては第1号で認定を受けている。環境に配慮した製品を求める印刷会社向けに製品を開発し、より多くの製品を選択してもらえるようにGPの資機材登録をしている。2019年には「GP資機材環境大賞」も受賞した。

 また、現像レスプレート対応の給湿液をこのほど上市したが、このほか法改正などにも素早く対応していく。当社は今後も社会から求められることに敏感になって製品開発を進め、時代とずれることのない製品の提供でユーザーメリットを高め、他社メーカーよりも一歩先を進んでいきたい。

 さらに、300社以上の代理店契約による全国展開の営業体制だけではなく、水質の部分も含めた現場の検査など、技術提供もできるメーカーとしてアフターフォローも含めてユーザーメリットを提供していきたい。

全社員に「eco検定」取得を推奨。社員の労働環境も随時改善

 CSRの根源となる持続可能な企業として存続していくことが、顧客に対しての責任を果たすことになると思っているので、今後も取引先、仕入先、金融機関などのステークホルダーから信頼される活動を展開することを目標にしていく。

 そのためにも、あらゆるステークホルダーと同様に、従業員の労働環境整備を継続的に見直していく必要があると社長からは指導されている。化学薬品の製造販売を収益源とする企業として、製造現場での安全確保のために化学物質の取り扱いに関する教育、製造設備の更新、その改善などを随時検討するとともに、メンタルケアなども含めて従業員の労働環境を改善していきたい。

 また、SDGsについてもやりましょうというより、まずはSDGsが企業にとって必要であるということ、最終的には個人にも返ってくるという考えを根付かせるため、全拠点にポスターを貼って段階的に進めていきたいと考えている。

 また、当社ではCSRの取り組みの1つとして、全社員に環境社会検定試験「eco検定」の取得を推奨しており、一部の新入社員を除いて全社員が合格している。これにより社員一人一人の環境保全への知識やモラルを高め、ステークホルダーの要求にさらに高いレベルで対応できる企業を目指していきたい。

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