三光、小型エコ.プレスバインダー「卓上型タイプ」をモデルチェンジ
スピードコントローラを搭載、メンテナンスもスムーズに
紙を歯型の圧着のみで綴じる「小型エコ.プレスバインダー 卓上型機」が、デザインを一新するとともに、ユーザー企業の声を反映させて生まれ変わった。新機能としてスピードコントローラを搭載、専用のエコ.プレス歯のメンテナンスが現行機よりスムーズに行えるようになった。エコ.プレスバインダーを開発・製造する(有)三光(本社/石川県河北郡津幡町字舟橋ろ75-1)の本吉友和社長は、「SDGsを追い風に、需要と認知は広がっている」と環境対応だけでなく、業界の活性化に貢献できる製品として、同機の普及に努めていく。
エコ.プレスバインダーは2010年、同社がCo2削減を目的に世界初の「針なし・糊なし・加熱なし」で中綴じ製本ができる技術として開発、業界の注目を集めた。コロナ禍においても、新しいことに挑戦したいというユーザー企業の声を背景に、新たなエコ.プレスバインダーの開発に着手し、エコ.プレスバインダー紙製クリアファイル専用機(自動機)と小型卓上タイプ(手動機)の販売を開始したという経緯がある。
コロナ禍という厳しい状況の中、SDGsを追い風に、これまでに量産タイプ(自動機)4台、小型卓上タイプ(手動機)は45台を納入している(2023年6月時点)。
「エコ.プレスバインダーに興味を持つ企業が増えていることを肌で感じている。認知が広がれば、今後も導入する企業は着実に増えていくと期待している」(本吉社長)
印刷会社をはじめ、新市場に挑戦したい製本会社や紙業会社、インキメーカー等で、今後も導入が広がりそうだ。
デザインを一新、障害者福祉仕様も設定可能に
同社が製品開発のポリシーとして掲げているのは、「ふだん何気なく使っているものを、環境に配慮したものに置き換えていく」ということ。SDGs17の目標の1つである「つくる責任 つかう責任」を意識した製品開発を展開している。
「昨今、社会全体でサスティナビリティへの取り組みが必須となり、地球保護の観点からCo2削減の達成が事業展開上重要な戦略として位置付けられていると言っても過言ではない。糊や熱などの副資材を一切使わないエコ.プレス技術を通し、サスティナビリティに配慮した製品設計を行うこと、継続的に提供することは不可欠だと考えている」(開発担当者)
今回、モデルチェンジした新型機(HEP-Z)は、ユーザー企業の声を反映し、SDGsの目標についてもさらに考慮している。開発担当者は「すべての人が安全に使えるよう設計を見直し、特に相談の多かった障害者福祉仕様としても設定可能なユニバーサルなデザインとなっている。ユニバーサルデザインには7つの原則があり、そのすべてに当機は当てはまるのではないか」と話す。
さらに、エコ.プレスバインダーで作る紙製品は「地域の活性化や雇用を含む、人・社会・環境に配慮した消費活動を促し、環境に配慮したものづくりを応援するとともに、この倫理的消費(エシカル消費)行動に果たすべき役割があると思っている」と開発担当者。本吉社長は「8月初旬の販売に先立ち、6月に開催された『2023北陸印刷機材展』に出展したが、大変好評だった」と自信をのぞかせる。
アイデア次第で強力なツールの製作が可能
市場ではストローの他、化粧品や菓子等の商品梱包や衣料品のハンガーなども紙に替わってきている、これも注目すべき点ではないだろうか。
エコ.プレスバインダーを活用するユーザーは、ただ単にプラスチックの代替として紙ファイルを制作するのではなく、サイズや形状、素材などに独自の工夫を凝らすことで、エコ.プレスバインダーの持つ優位性を何倍にも引き出している企業が多いようで、本吉社長は「当社が逆に教えられているほど」と話す。
例えば、食用に適さないお米を活用し、フードロスペーパーとして開発された紙などをエコ.プレスと組み合わせることもその一例だ。
これは、エコ.プレスバインダーがアイデア次第でSDGsの取り組みにより強力なツールの製作に役立っている証明と言えるだろう。糊や熱などの副資材を全く使用せずにエコ.プレスすることは、そのツールの製造過程においてCo2の排出を完全に削減することを可能にしている。
また学校など教育現場での採用が多くなっており、「今の若い世代は子供のころから当たり前に環境問題に取り組み、教育を受けている。学校内外の配布物にあえて紙ファイルを選ぶ事例が増えている」(開発担当者)
なお、新型機の価格は従来機よりも10万円プラスの95万円(税別)となっているが、本吉社長は「従来機にはない機能と使いやすさを追求しながらも、価格は100万円以下に抑えられるように設定した」とメーカーとしての企業努力を見せる。8月上旬より販売を開始し、販売前から予約を受け付けているため残り数台は即納可能。完売の場合は、3ヵ月程度で納品可能とのこと。初年度30台の売上を目指す。業界の設備投資意欲を掻き立てることになる製品となりそうだ。
