都インキ、用紙に特殊インキを含浸〜半透明の「クリアペーパーファイル」開発
「におわなインキ」など、独自性のある特殊インキの開発で差別化を展開する都インキ(株)(本社/大阪市鶴見区、原田邦夫社長)は、印刷用紙に特殊インキを含浸させることで、用紙を半透明にする技術に成功。これを紙ファイルの素材に使用し、さらに「サステナブルインキ」で印刷することで、「中身が見えにくい」という課題を解決するとともに、用紙もインキもSDGsに貢献する半透明の「クリアペーパーファイル」を開発した。サステナブルインキの特性を最大限に発揮できるSDGs商品として、印刷会社を対象に販売を開始する。
同社が、「クリアペーパーファイル」の開発に乗り出した理由には、脱プラというバックグラウンドがある。これまで様々な特殊インキを生み出してきた技術力により、同社には用紙に含浸させると高い透明度が出るインキを開発することができた。「この技術を活用すれば、中身が見えにくいという課題を解決する紙ファイルを開発できるのではないか」。このように原田社長が考えたことが、半透明の「クリアペーパーファイル」が生まれるきっかけになった。
そして、ここで大事なポイントになるのは、印刷用のインキには、同社が「JP2021・印刷DX展」で発表した「サステナブルインク」、もしくは「サステナブルブラックインク」を使用することを推奨していることだ。これにより、単なるプラスチック代替としての紙ファイルではなく、他の紙ファイルにはない特徴を有したSDGs商品としての「クリアペーパーファイル」になるのである。同商品について原田社長は「当社のクリアペーパーファイルはコシがあることも特徴。使い勝手についても極力、プラスチックのクリアファイルに近付けている」と説明する。
同社の本業は、あくまでもインキメーカーである。このため、注力するサステナブルインク/サステナブルブラックインクの特性を最大限に高める販促アイテムとして開発したのが同商品であり、原田社長は、「これにより、印刷物の需要創出に役立つことができれば幸いである」と話す。
ノンVOCインクの「サステナブルインク」
サステナブルインクは、持続可能な自然由来のバイオマス原料を、印刷適正を維持できる範囲で融合し、その含有率を極限まで引き上げたインクである。近年、環境問題で盛んに言われていることの1つに石油由来の原材料を避け、自然由来のバイオマスを積極的に使うことが挙げられているが、原田社長は「印刷業界においても自然由来のバイオマスを使った資材が求められる中、サステナブルインクはそのニーズに応える製品となっている。また、昨今話題になっている『フランスの包装材および印刷への鉱物油規制』の規制値をクリアしており、世界レベルでも環境に対応した製品である」と、環境適正能力の高さに自信を示す。
また、サステナブルインクのコンセプトは、限りある資源を大切にすること、そしてVOC削減であるとしており、原田社長は「クリアペーパーファイルにサステナブルインクを使用し、当該マークを貼付することにより、SDGsへの取り組みのアピールとなり、企業価値向上にもつながる」と説明する。
リユースにより、CO2削減に貢献する「サステナブルブラックインク」
一方、サステナブルブラックインクは不動インキを回収し、リサイクルすることで、資源を有効活用し、持続可能な社会の実現に貢献することを目的に開発された。
限りある資源を大切にすることをコンセプトに開発され、リユースにより石油由来資源の再利用とCO2の排出削減が可能。原田社長は「インク1tあたり、CO2排出量を約2.17t削減できる」と話す。また、排出削減量は証明書の発行により「見える化」を実現できる。
さらに、同社では「脱炭素経営宣言」に先進的に取り組んでおり、CO2削減に取り組み、SDGsに貢献することを目標に日々、研究・開発を行っている。SDGsの達成目標年である2030年以降も企業の努力を継続し、環境問題に取り組むとして脱炭素経営を宣言し、大阪府にも登録した。
「当社は、2025年大阪万博のプログラム『TEAM EXPO2025 共創チャレンジ』にもサステナブルブラックインクと、クリアペーパーファイルで参加している」(原田社長)
このほか、同社は国内の印刷業界では取得企業が少ない「中小企業向けSBT認定」にも認定されている。
同社は2030年までに「クリアペーパーファイル」の販売年間55tを目指すほか、半透明の素材をシートのままでも販売する方針で、印刷会社のアイデア次第では、クリアペーパーファイル以外のSDGs商品の開発にもつながりそうだ。
