[寄稿]モリサワが取り組むSDGsとは
2015年9月の国連サミットで採択された、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は、貧困・平和・人権・気候変動・環境破壊などの社会課題を含む17のゴール・169のターゲットから構成された、2030年までに達成することを目指し地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓った世界共通の目標です。モリサワは、文字を通じて社会に新しい価値を提供するとともに、SDGsの達成に向けて企業活動を行っていくことを宣言し、2020年8月にSDGs達成を目指すための特設ページを公開しました。この宣言では、以下の4つの重点テーマを掲げて取り組むこととしました。
▽お客様はもちろんのこと、社会における課題を文字の視点で解決します
▽隔たりのない共生社会の実現に向け、多様性を理解し尊重し合うダイバーシティ施策を推進します
▽次世代により良い社会を引き継げるよう、環境への配慮、文化の継承、地域の創生などの活動に取り組みます
▽持続可能な社会への貢献を通じて企業として成長し、企業の成長を持続可能な社会への貢献へとつなげていく、社会と企業の持続成長サイクルを実現します
モリサワ サステナビリティ トップメッセージ
(https://www.morisawa.co.jp/about/sustainability/)
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モリサワが社会貢献に取り組むルーツは1920年代の印刷技術の主流であった活版印刷の生産性や労働環境の改善のために、創業者・森澤信夫が1924年に「邦文写真植字機」を発明したことに遡ります。「写真植字機」は写真光学を利用した文字発生装置であり、重労働であった活版印刷の業務改善に大きな革新をもたらしました。また手が不自由な方のために「足踏みの写真植字機」を開発するなど、障害を持った方の社会参加を支援してきた歴史もあります。これらはひとえに、世のために役立ちたいというあくなき挑戦心と、どんな課題にもごまかしたり逃げたりせずに立ち向かってきた結果でした。
時代はアナログ技術の写真植字機開発から、デジタル技術のフォントや組版開発へと移り変わりましたが、その志は先人たちから私たちへと、DNAのように受け継がれ、今日のモリサワがあります。
フォントメーカーとしてのSDGs活動について
社会や経済活動において、フォントや文字は、情報と人々のコミュニケーションを支える「情報基盤(インフラ)」や、「文化遺産」と呼ばれることもあります。そのためモリサワでは、ただ情報を伝えるだけでなく「付加価値」を持った商品やサービスも含めたフォントの提供を常に考えて取り組んでいます。
以下の2つの商品は、印刷業界でも多くのお客様にご利用いただき、皆様が取り組まれているSDGsの活動に貢献できる商品としてアピールいただいています。
【UDフォント】
UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)とは、ユニバーサルデザインに対応したフォントです。モリサワのUDフォントは、「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読み間違えにくいこと」をコンセプトに開発され、第三者機関でのエビデンス(学術的研究結果)も取得しています。和文以外にも、151言語をカバーする欧文書体や中国語簡体字・繁体字、ハングル、アラビア文字、デーヴァナーガリー文字、タイ文字など、幅広く多言語にも対応しており、最近ではバスなど公共交通機関での多言語表示や企業のグローバルサイトでのWeb利用が増えています。
UDフォントは弱視や高齢者の方に起こりやすい読み間違いや、ディスレクシア(読み書き障害)の子どもたちに配慮した教育ツールの一部としても利用が拡がってきています。最近ではOSへの標準搭載やオープンソースとしての提供も始まり、さまざまなツール(アプリケーション開発やシステム構築)で、より多くの方が読みやすく読み間違えにくいUDフォントの活用が拡大していくでしょう。
UDフォント詳細(https://www.morisawa.co.jp/fonts/udfont/)
【多言語ユニバーサル情報配信ツール MCCatalog+】
長年にわたる日本語組版や電子書籍技術開発の取り組みが活かされた「MCCatalog+(エムシーカタログプラス)」は、既存の印刷データを利用し、スマートフォンやタブレット端末に手軽に情報を配信できるサービスです。時間・場所・言語にとらわれず、情報発信から閲覧環境まで、ワンストップで最適な環境を提供します。PDFデータがあれば誰でも配信作業ができる点と、最大10言語に多言語自動翻訳できる点を評価・導入いただいています。
情報の電子化は即時性というメリットだけではなく、ペーパーレス化や配送の負担軽減によるCO2削減で環境保護にも貢献できます。また閲覧するためのビューワー「Catalog Pocket」では、多言語翻訳された文字を「ポップアップ機能」や「読み上げ機能」で表現できるので、日本語が読めない方でも情報を目や耳で取得することが可能なため、多国籍の方々が居住する自治体の皆様からも情報配信の手段として活用いただいています。
MCCatalog+詳細(https://www.mccatalog.jp/)
製品利用によるパートナーシップの拡大
モリサワがSDGsに取り組むにあたって最重要項目のひとつとしている目標が、「SDGs目標17 パートナーシップで目標を達成しよう」です。過去のビジネス実績や関係性の有無に関わらず、SDGsをキーワードに、業種や業界の枠にとらわれない企業や団体との新たなパートナーシップを構築し、そこから生まれるビジネスと社会貢献の両立を目指しています。
前記2点の製品は、印刷業界や出版業界での利用に留まらず、自治体、教育機関、グローバル企業など、SDGsの達成やダイバーシティを推進している団体の皆様に幅広く、またさまざまなメディアでご利用いただいており、着実にその輪が拡がっています。
SDGs貢献(パートナーシップ)事例(https://www.morisawa.co.jp/about/sustainability/sdgs/contribution/)
ダイバーシティ推進室の設置
社員一人ひとりが働きやすい環境を実現し、持てる能力を充分発揮していくために、ダイバーシティの実現が必要と考えています。そのためモリサワは2020年にダイバーシティ推進宣言を行い、「ダイバーシティ推進室」を設置しました。社員が持つ多様性を活かし、誰もが働きやすく、また働き続けられる企業となるよう、さまざまなプロジェクトを推進しています。
役職に関係なく全社員が個々のプロジェクトに積極的に取り組み、他者理解を深め合うことにより、皆が生き生きと働き、助け合うことができる企業を目指します。
サステナビリティ活動(https://www.morisawa.co.jp/about/sustainability/report/)
最後に
企業としてSDGsやダイバーシティの推進にどうやって取り組むべきか分からないという声をよく耳にしますが、以前から取り組んできた企業活動が実はSDGsへの達成・ダイバーシティの推進に繋がっていたという事例が多くあります。今あるものを継続し、時代の変化に合わせて発展させていくこともSDGsの達成に向けて大切なことです。そして、未来をより良い社会にするために努力することは、新しい技術への挑戦や新たな製品・サービスを開発する原動力にもなり得ます。
モリサワは今後もお客様のお役に立つとともにさらなる成長・発展を遂げられるよう、パートナーの皆様のお力添えをいただきながら、これまで以上に社会に貢献できるよう邁進してまいります。
