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内藤印刷、亀岡市と紙袋共同購入事業実施

市がプラ製レジ袋の提供禁止条例〜事業者の安価購入支援

 世界に誇れる「環境先進都市」を目指す京都府亀岡市は2021年1月、亀岡市内の全事業者を対象に、プラスチック製レジ袋の提供を禁止する条例を施行した。印刷・看板・広告物制作の内藤印刷(株)(本社/京都府亀岡市西町39、内藤一徳社長)はこれを受け、2021年1月〜2022年3月まで、亀岡市内の事業者が紙袋を安価に購入できる「紙袋共同購入事業」を亀岡市と共同で実施。1年間で62万5,000袋を販売し、亀岡市のSDGs推進に大きく貢献した。


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内藤 社長


地域の「よろず屋」として創業150周年

 創業明治5年。内藤印刷は亀岡市で産声を挙げて今年で150周年を迎える。京都でも老舗中の老舗の印刷会社だ。同社はこの間、亀岡市との「地域密着型」の経営を心掛けてきた。5代目の内藤一徳社長は「紙の印刷にこだわらず、サインや店舗装飾など、地元の販促に関わることは何でもやるつもりで続けてきた。地域の『よろず屋』として事業を展開してきたことが、150年にわたり企業を存続できたと考えている。これからも、地域関係のことなら何でも関わっていきたい」と話す。

 JR亀岡駅は京都駅から20分程度であるにも関わらず、保津川渓谷を境に雰囲気が驚くほど一変する。「山地に囲まれた盆地であるため、地域性が強い。今でこそ京都市内からの仕事も一部あるが、以前は京都市内からの仕事など考えられなかった」(内藤社長)。このため、地域密着型の経営は生き残っていく上で必要不可欠だった訳である。

 「地域の情報発信基地を目指している」(内藤社長)。そんな同社が約16年前に開始したのが、フリーペーパー「バリューワン」だ。新聞折り込みで毎月1日、4万部以上を発行し、地元ではお馴染みの集合広告チラシとなっている。

 亀岡市では20年ほど前から量販店が数多く出店し始めたが、「地元の個人店舗が量販店に対抗しようと個別でカラー広告を出したくても、価格面で断念せざるを得ない場合が多かった。そこで集合広告なら個人店舗でもカラー広告が打てるのではないかと企画した」(内藤社長)。3万円程度からの枠があるため、個人店舗の広告媒体として定着しており、「年末までは8割以上の枠が埋まっている」(内藤社長)。まさに地域密着型ビジネスの成功事例と言えそうだ。亀岡市全域ほか、京都市内西部にも配布しているという。

亀岡市のSDGs推進と事業者の経営を橋渡し

 亀岡市はプラスチックのレジ袋を無料・有料であるに関わらず、事業者が消費者に提供することを禁止する条例を2020年3月に施行し、市議会で可決。2021年1月に施行された内容は、半年間の猶予期間を設け、違反事業者は市のホームページに店舗名が掲載されるという厳しい国内でも初めての条例で、「事業者対象の説明会でも相当の反発があったが、市長のリーダーシップで実現した。これが大都市であったら、実現は難しかったかも知れない」(内藤社長)。マクドナルドや大手すしチェーンなども亀岡市用に専用の紙袋を制作して対応していたようで、まさに亀岡市を世界に誇れる"環境先進都市"にしていくための一大プロジェクトであったと言える。

 ただ、プラスチックのレジ袋と比べて紙袋の制作にはコストがかかるため、「個人店舗が紙袋を個別に作るのはかなりの負担」(内藤社長)。そこで亀岡市内の事業者を支援するため、亀岡市から半分の補助金を受けて実施したのが「紙袋共同購入事業」である。

 そして、同社は亀岡市に様々な企画を提案。紙袋のサイズは、S・M・弁当用・L・2Lの5種類で決定し、合計62万5,000袋を制作。価格は亀岡市が半分負担するため半額となるが、「それでもSで100枚入り税込1419円。2Lサイズだと1枚25円もするので、売れるかどうかの不安はあったが、最終的にすべて完売することができ、約2,300万円の売上につながった」(内藤社長)。紙種はFSC認証紙を採用し、デザインは亀岡市でデザインを募集し、コンペで決定したという。

 今年3月で一旦事業は終了したが、「現在も問い合わせは多く、年末に市からの補助金が出れば、第2弾を実施する可能性もある」(内藤社長)


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亀岡市との共同事業で製作した紙袋


亀岡市の入札項目にUDフォントを提案

 豊かな自然に恵まれた亀岡市のランドマークともいえる保津川。内藤社長は「保津川をきれいに保っていくための取り組みをSDGsと交えながら行っていきたい」。また、サンガスタジアムの試合前の清掃活動にも参加するなど、同社は地域との関わりを大切にするため、地元密着型の印刷会社として様々な活動を展開しているようだ。

 さらに、「亀岡市の入札項目としてユニバーサルデザイン(UD)フォントを提案し、このほど採択された」(内藤社長)と印刷会社にしかできないSDGsの提案も行っている。「亀岡市は現在、SDGsパートナーの協力企業を募集している。これにも応募し、地域との関わりをさらに深めていきたい」(内藤社長)

 京都・亀岡市を世界に誇れる「環境先進都市」にしていくための事業を同社は今後も推進していく考えだ。

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