Koenig&Bauer社 - Japan Media Tour(2) 世界最大級のシングルパスデジタル印刷機「RotaJET」
装飾・パッケージ分野に強み〜機械性能を支える鋳造工場
デジタル&輪転印刷機部門[ヴュルツブルク]
ドイツ・Koenig&Bauer社は5月下旬、「Japan Media Tour」を企画し、デジタル&輪転印刷機部門の生産拠点であるヴュルツブルクの本社工場と、枚葉機部門の生産拠点であるドレスデンの工場を公開。広範囲にわたる産業用印刷機械の開発・製造における革新性を紹介した。2回目のレポートとなる今回は、ヴュルツブルク工場と、その中のカスタマーテクノロジーセンターに常設されている輪転タイプのシングルパスインクジェットデジタル印刷機「RotaJET」について紹介する。
1,500名が従事するヴュルツブルク
Koenig&Bauer社が本社を置くドイツ・ヴュルツブルクは、フランクフルトから南東へおよそ120km、ドイツ中部のバイエルン州にあるマイン川沿いの都市。機械や繊維などの工業が盛んで、またワインの産地としても知られる。
ヴュルツブルク工場は、デジタル&輪転印刷機部門の生産拠点で、19万8,000平方メートルという広大な敷地には、それぞれの開発部門や鋳造、組み立て工場のほか、カスタマーテクノロジーセンターやトレーニングスクールなども設置されており、世界における総従業員数およそ5400名のうち、約1,500名がこの工場に従事している。
今回、我々メディアを現地で迎え入れてくれたのは、デジタル&輪転印刷機部門でシニアセールスマネージャーをつとめるステファン・セガー氏。
「当社は、厚紙や段ボールをはじめとしたほぼすべての種類の素材・原反に対して、すべての産業用印刷方式の機械を提供できる『世界で唯一の印刷機メーカー』である。今回は、デジタル印刷分野にフォーカスしてKoenig&Bauer社を紹介したい。必ずや日本市場でも興味を持ってもらえると確信している」(セガー氏)
ヴュルツブルク工場視察の目玉となったのは「RotaJET」だ。同機は、インクジェットヘッド「SAMBA」(1,200dpi)を採用した輪転タイプのシングルパスインクジェットデジタル印刷機。オリジナルの水性顔料インクを使用し、最大2.8m幅までの印刷に対応、270m/分の印刷スピードを誇る。とくに20gの薄紙から450gの厚紙まで幅広い用紙に対応する汎用性の高さから、商業印刷や書籍分野というよりかは、装飾分野やパッケージ分野などの産業用向けをメインターゲットに位置付けている。
「モジュール」によるカスタマイズ化
ヴュルツブルクのカスタマーテクノロジーセンターには「RotaJET」が常設されており、世界中の印刷会社やブランドオーナーがテスト印刷を実施できる環境が整っている。視察当日も数組がテスト検証を行っていた。
機械構成としては、アンワインダー、フレキソベースのプライマーユニット、近赤外線乾燥装置、センターシリンダー式のインクジェット印刷ユニット(印刷幅138センチ、1,200dpi)、そしてCMYK印刷後、フレキソベースのニスユニット(水性ニス)、リワインダーが基本構成だが、現在納入されている機械はすべて顧客のニーズによってカスタマイズされている。「RotaJET」のバンディング補正機能はとくに秀逸で、無数にあるノズル個々の出力結果をソフトウェアで完全に補正するため、ここでは機械設置から4年間、ヘッドの交換を一度も行っていないそうだ。
「RotaJET」は、プロセス4色仕様だが、特色のニーズはないのか。「インク粒子が微細でカラーガモットが非常に広いため、現在は特色への対応は考えていない。ただ、フレキソのインラインによる特色対応は可能だ」と答えるセガー氏。前号でも触れたように、同社では機械および技術をモジュールと捉えることで、広範囲にわたる事業分野の機械および技術を柔軟に組み合わせたカスタマイズが非常にユニークで独創的な特徴となっている。
続けてセガー氏は「4色でも90%の色域をカバーしている。残りの10%のためにヘッドを増やし、コストを上げる必要が本当にあるのか。コストに関して言えば、インクジェットのインキも、将来はお客様自身が、それぞれのローカルで購入できるようにしたいと考えている」とも語っている。
一方、ヴュルツブルクではHP社との共同開発による世界最大の段ボール印刷向けインクジェット輪転機「HP T1100S PageWide Web Press」も製造している。これには新聞輪転印刷機のロール搬送技術が応用されている。
また、メタルシートへのデジタル印刷機も開発中だという。これは同社のオフセット枚葉印刷機「Rapida」シリーズとほぼ同様の構造で作られており、現在はプロトタイプでテストを繰り返している段階だという。