IGAS2022|理想科学工業、トランザクション市場向け小ロットジョブ対応機「VALEZUS T2200」
カット紙カラーインクジェットプリンター〜油性顔料インクで安定の印字品質、省エネを実現
立ち上げは「パソコン」、操作性は「大型コピー機」の感覚
今回の取材にあたり、2020年7月に同社の新規事業開発拠点として竣工し、「2021年度グッドデザイン賞」を受賞した理想開発センターII(茨城県つくば市)に訪問した。この開発センターが一般的な研究所と違うのは、ユーザーや協力会社を積極的に招き、意見を取り入れながら一緒になって開発を進めることができる点だ。開発本部の齋藤氏は「VALEZUS T2200はユーザーの意見を積極的に取り入れ、機能の随所に反映させている。ユーザーのワークフローを可能な限り効率化できることを重視して製品開発した」と説明する。電源ボタンを押せば立ち上がるため、パソコンのような感覚だ。操作性も「大型コピー機のような感覚で使える」(増田氏)など、ユーザビリティーに優れた構造に仕上がっている。「VALEZUS T2200」はユーザーや協力会社の意見と、事務機器・オフィス向けプリンターメーカーとして長年にわたり、誰でも簡単に使える機械を開発してきた同社の知見を融合させることで生み出されたプリンターであると言えるだろう。
デモの模様を取材したが、まずプリントがスタートすると、用紙は「エア給紙システム」により、浮上・吸着・分離の3つのエアで用紙の重送を低減し、高速かつ安定して搬送された。稼働中はパタパタとエアを切り替える音がするが、気になる大きさではない。営業開発部の杉山氏は「この紙送り機構により、高速かつ安定した給紙が可能になる」と説明した。インクは耐水性に優れる油性顔料インクのため、プリント直後に手で擦っても滲むことなく、しっかりと乾いていた。
また、「VALEZUS T2200」は重量が1t弱だがユニットごとに分離させることが可能とのこと。オフィスビルなどの人が乗るエレベーターでも積載できる。設置場所を選ばないということからも、「大型のコピー機」という表現が似合うプリンターである。乾燥機がない分、コンパクト設計を実現しており、機械の長さは5m強となっている。
安定した印字品質と正確な印刷位置精度、インクの色域も拡大
インクジェットプリンターはインクを直接用紙に出力することで画像を形成する。画像生成プロセスがシンプルなため、大量印刷時にも画像の劣化が少ない。設置環境や温度変化による色むらが発生することもないため、1枚目も1,000枚目も安定した色味で出力することができる。ここもトナーと比べた優位性の1つと言えるだろう。
さらに、「VALEZUS T2200」は、用紙搬送経路の各所に配置したセンサーが搬送状況を監視し、インク吐出タイミングを最適に自動調整することで、高い印字精度を実現していることも見逃せない特徴の1つだ。センサーで検知した搬送中の用紙位置をリアルタイムで印字ヘッドに送信し、センサーからの情報をもとに、高速で搬送する用紙にインク滴を速く、正確に着弾するようにコントロールしている。杉山氏は「この機能により、大型のロールインクジェットプリンターと同等の印刷位置精度を実現している」と強調した。
そして、新たに採用したインクは、成分を見直すことで従来機よりも色域が拡大して発色性が向上、より鮮やかな色再現が可能になった。
インライン検査ユニットで高い信頼性を兼ね備えた
「VALEZUS T2200」は、プリントしながらインラインで検品検査が可能。バーコード・2次元コードにより表裏の整合性を確認できる「コードリーダー」、表面および裏面の読取データ(文字・1次元コード・2次元コード)から表裏の整合性を確認できる「CCDカメラ」、プリント面を全面読み取り、プリントデータと比較することでプリントの汚れや欠けの検出ができる「ラインセンサー」の3つから業務に応じた検出装置を選択できる。
「カット紙はロール紙のように連なっていないので、何かの拍子に紙の順番が変わったりひっくり返る可能性も無きにしも非ず。このため、表裏の順番が担保されて初めて大型ロールインクジェットプリンターの代替機として使えるようになる」。杉山氏はこのように語り、「VALEZUS T2200」は大型ロールインクジェットプリンターのサブ機として、また小・中ロットジョブの代替機としても十二分に能力を発揮できるプリンターであることを強調した。
IGAS2022の会期中、ブースでは「VALEZUS T2200」のデモを随時実施しているが、「ホームページから事前に申し込んでいただければ別枠で時間を確保します」と杉山氏は多くの予約を呼びかける。「VALEZUSはゴルフのドライバーに例えると、スイートスポットが非常に小さいため初心者から上級者まで広く万人受けするというものではないが、芯にあたればものすごい飛距離を出せるドライバーです」(杉山氏)。
トランザクションプリント業界に新風を巻き起こすプリンターであることは間違いなく、業界関係者必見のブースになりそうだ。
なお、仕様における各種条件は同社ホームページを確認して頂きたい。