IGAS2022|理想科学工業、トランザクション市場向け小ロットジョブ対応機「VALEZUS T2200」
カット紙カラーインクジェットプリンター〜油性顔料インクで安定の印字品質、省エネを実現
トランザクションプリント市場向けに、従来の常識を覆す画期的なプロダクションプリンターが誕生した。生産性はカット紙領域で圧倒的なA4フルカラー・両面毎分330ページを実現。2段給紙ユニットにより、機械を止めることなく高速連続プリントが可能だ。油性顔料インクによる、安定した印字品質と用紙変形の少ない仕上がりで後処理加工への移行がスムーズにでき、乾燥機も不要のため省スペース。また環境に配慮した省エネ設計で100V電源に対応する。さらに、検査装置ユニットによる高い信頼性で、トランザクションプリントにおける1ロットあたり5千枚から5万枚の小・中ロットで効率的な生産性を実現する。「VALEZUS(バレザス)T2200」と名付けられたこのインクジェット方式のプロダクションプリンターは、事務機器・オフィス向けプリンターメーカーの理想科学工業㈱(本社/東京都港区)がプロダクションプリント分野への本格進出を目指し、2022年9月に発表。公式の場としては、IGAS2022の同社ブース(小間番号1-4)で実機初披露となる。小・中ロットジョブを守備範囲とする同機の登場は、航空業界が効率性を目指して中距離輸送機の運用にシフトしたのと同様に、大型のロールインクジェットプリンターという「ジャンボジェット機」が主流のトランザクションプリント市場に大きな衝撃を与えることになりそうだ。
近年のトランザクション市場規模に適した小・中ロット対応プリンター
数万部以上のロットをこなすのに適した大型ロールインクジェットプリンターで数十部から数千部のロットを出力するとなると、印刷時間に比して、印刷準備に時間がかかる。またヤレ紙が大量に発生するなど非常に効率が悪い。それでも請求書印刷などは期日に間に合わせる必要があり、非効率であっても大型ロールインクジェットプリンターで対応するのが現状である。またトナータイプのオンデマンド印刷機ではインクジェットとの印刷品質や生産性及びランニングコストの違いにより対応が難しいケースもある。これまで、それら「小・中ロットレンジ」に適したトランザクションプリンターは、業界にほとんど存在していなかった。
そんな中、近年のトランザクション市場のロットに理想的なプリンターとして登場したのが「VALEZUS T2200」だ。同社はフルカラーで高い生産性を実現する高速カラープリンター「ORPHIS(オルフィス)」を製品ラインナップに持つ。ORPHISはオフィス・学校向けの製品だが、「その生産性の高さから、プロダクションプリンター用途として導入するユーザーも出てきた。そこでORPHISのプリントエンジンをタンデム構成で2つ搭載すれば、単純に生産性は倍になるのではないかという発想から生まれたのが、VALEZUSである」と開発本部の米岡氏。
この発想だけを聞くと一聞、簡単に思えるかもしれない。しかし、実際に「VALEZUS」が誕生するまでには、印刷の信頼性を高める検査装置ユニットを搭載した前モデルをpage2020で参考出品し、その後も顧客の意見を取り入れ、2021年3月にようやく日本市場での発売に至った。そして、「用紙搬送の効率化により更なる生産性を追及して誕生したのが『VALEZUS T2200』である」と開発本部の増田氏。業界に衝撃を与えるであろう新製品開発の背景には、「世界に類のないものを創る」という同社の開発ポリシーを実現するために開発本部メンバーの飽くなき挑戦と探究心があったことは間違いない。
A4フルカラー・両面毎分330ページを「機械を止めることなく」連続プリント
カット紙領域では、圧倒的な生産性を誇る「VALEZUS T2200」。用紙搬送経路を限りなくストレートにつなぐ機構により、用紙にも機械にも負担が少なく、高速性を保ちながら安定した用紙搬送を実現する。ORPHISシリーズのプリントエンジンを2台装備することで、両面毎分330ページの高速プリントが可能になり、長時間の連続出力でもスピードを落とすことなく稼働させることが可能。
ここで重要なポイントは、単なるプリントスピードの速さではなく「機械を止めることなく」連続プリントができることだ。4,000枚対応の給紙ユニットを縦に2段装備することで省スペースながら最大8,000枚を積載でき、用紙補給の手間を軽減する。プリンター稼働中も切り替えて給紙するため、機械を止めることなく用紙補給ができる。
また、高速生産を行うためには、プリントエンジンの性能だけが高ければいいという訳ではない。同社では、耐光性、耐水性に優れ、色褪せや水滴によるにじみに強い油性顔料インクを独自に開発。速乾性に優れたインクなので高速プリントでも用紙が汚れたり、波打ったりすることが少なく、従来のインクジェットでは難しかった高速両面プリントを実現している。
さらに、排紙ユニットについても4,000枚排紙が可能な2台のユニットを搭載。満載になったユニットから用紙を取り出し、台車で運搬することで機械を止めることなく、継続的に出力用紙を後処理へ移行できる。