コニカミノルタジャパン、印刷ビジネスDXで経営課題を解決
「共創」でDX化を支援〜最適パートナーとして共に成長を
「攻めのDX」と「守りのDX」
印刷業界にのみならず、すべての産業界において求められているDX。同社では、実際にどのような取り組みや施策を通じて印刷会社のDXを支援しているのか。多くの印刷会社を訪問し、DX推進の課題解決のために活動している小林氏は、「多くの印刷会社では、業務プロセスの効率化など社内で完結する『守りのDX』は得意としているが、社外への影響を与える活動、つまり『攻めのDX』については、まだ着手している印刷会社は少ない」と説明する。
「守りのDX」とは、データの見える化や業務プロセスの効率化、コスト削減などを目指すもので、生産の自動化などが挙げられる。一方、「攻めのDX」とは、顧客への提供価値の向上や顧客との接点のデジタル化、そしてマーケティングやデータ分析によるビジネスモデルの創出などがある。では、なぜ印刷業界において「攻めのDX」が進まなかったのか。小林氏は、その理由として3つを挙げている。まず、1つは発注者と印刷会社のマーケティング力の格差だ。
IT化・デジタル化が普及する前のプリントメディアは、マーケティング戦略の伝達手法として重要な役割を担っていた。その際に印刷会社はプリントメディアの製作に必要な特殊な知識や、効果的な事例、豊富な経験など、印刷会社が有していた専門知識は多くの企業から高い評価を受け、頻繁に相談を受ける存在となっていた。しかし、プリントメディアは多様な用途と需給を持つため、印刷会社自身はマーケティング戦略に真剣に取り組む必要性を感じる企業が少なかった。この過去の市場環境が印刷会社のマーケティング力の成長に大きな影響を及ぼしたと小林氏は説明する。
「デジタル化の進展により、消費者の行動が急速に変化し、この変化した消費者ニーズに対応していくために発注者は、マーケティングの重要性を再認識するようになった。結果、この20年で発注者側のマーケティングスキルは上がったが、モノづくりだけに特化してきた印刷会社のスキルや考え方は上がることもなく、その差は大きく開いていった」(小林氏)
2つ目は、急激な印刷需要の減少により、多くの印刷会社は自社存続のため「守りのDX」への注力を優先しなければいけなかった。そして3つめは、人材不足。DXを推進するにあたり、やはり専門スキルをもった人材は必要不可欠となるが、現在もこれらの人材の育成や確保が非常に困難とされている。
重要なのは「共創」による支援
この3つの理由に対し同社では、これまで蓄積してきた技術やノウハウで、印刷会社が求めるDXを共に創り上げること、つまり「共創」に取り組んでいる。提供しているサービスでは、JP2023でも紹介した印刷通販作成ツール「in2Site」や、印刷業界向けMAツール「Printバル」、そして今年5月に発売を開始したクラウド型バリアブルソリューション「Variable Studio」などがある。
「in2Site」は、WordPressでの印刷通販サイト構築を可能とし、スマートフォン・タブレットにもシームレスに対応するレスポンシブWebデザイン仕様を採用。また、印刷通販専用ショッピングカート、印刷見積積算プログラム、運用サーバ、SSLサーバ証明書、独自ドメイン、Web入稿機能まで、すべて基本装備の印刷通販専用のECサイト構築パッケージとなっている。
「in2SiteのBtoB版であれば、既存ビジネスの深掘りや営業業務の省力化ができ、また、BtoC版であれば、新規開拓や販路拡大につながる」(小林氏)
「Printバル」は、プリントメディアをマーケティングオートメーションと融合させ、デジタルメディア同様に効果測定やデータ収集を可能とするクラウドサービス。また、人の感性を可視化・定量的に分析し、デザイン・マーケティング領域の課題を解決するオンラインサービス「EX(Explainable)感性」も「攻めのDX」に応用できると内田氏は説明する。
「EX感性」は、コニカミノルタが研究してきた感性脳工学に基づき人の感性を見える化し、デザインを定量的に解析するオンラインサービスで、すでに100社以上の導入実績を誇る。
「EX感性は、クライアントとのコミュニケーションツールとして活用することができる。当社が期待しているのは、デザインを数値化することで、クライアントと印刷会社の共通認識が可能となること。このサービスを使うことで、DXが完結するわけではないが、しかしプリントメディアの価値向上につながり、発注者にメリットを提供できるようになる。その結果、発注者からの信頼も今まで以上に得ることができるはず」(内田氏)
メーカー間の垣根を超えて最適化提案
印刷会社のDXの最終形態は「ビジネスモデル変革」だと内田氏は説明する。ファーストステップは、各種業務データ(書類や帳票)のデジタル化するデジタイゼーション。セカンドステップは、業務システム、生産システム、デジタル印刷機・加工機などの導入によるデジタライゼーション。そして最終段階として、システム活用により、業務・工程設計を根本的に見直すデジタルトランスフォーメーション、つまりビジネスモデル変革だ。しかし、真のDXを確立するには、コニカミノルタだけでは、完結できないと内田氏は断言する。
「今回のJP展でも他社連携による自動化を披露したようにアライアンスパートナーを増やしていくことで印刷会社によって異なる課題を解決していくことが重要だと考えている」(内田氏)
また、小林氏も「自動化システムを導入するために既設のデジタル印刷機を入れ替えるような提案は、印刷会社に受け入れられない。もちろん当社もメーカーである以上、自社の製品やサービスを採用してもらいたいという気持ちもある。しかし、それでは、真のDXの支援とは言えない」と語る。
実際に同社が提供する「in2Site」や「Printバル」、そして「Variable Studio」などの製品・サービスは、コニカミノルタ製品に限定されることなく、他社製品との連携が可能となっている。
印刷会社によって設備する印刷機のメーカーは様々だ。コニカミノルタ製のデジタル印刷機でなければDXを支援できない、という理由は、もはや通用しなくなってきている。逆に言えば、他社メーカーの設備であっても印刷会社のDXを支援できるサービスが求められている。そのためメーカー間のアライアンスは、印刷業界のDXにとって最も重要なポイントとなる。
同社では、今後も他社メーカーとのアライアンスも含め、印刷会社の強力なパートナーとしてDXの推進を全力でサポートしていく方針だ。
