デロイト トーマツ、「実践の場」提供が課題【DX時代の人材育成調査】
デロイト トーマツ コンサルティング(東京都千代田区、佐瀬真人社長)は、企業と個人を対象にDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の人材育成の実態と課題を探った「デジタル人材育成に関する実態調査2023~人的資本経営時代に取り組むべきリスキリングとは~」の調査結果を発表。育成の対象になる潜在デジタル人材の割合は働く人の36%で、企業のデジタル研修は一定進んでいるものの、学びをいかす「実践の場」の提供が課題になっていることが明らかになっている。
企業のデジタル人材育成・研修施策の実施率
企業に対する調査では、育成・研修施策を推進している実施率は一般企業で半数近く(46%)、DX先行企業で87%と高い割合だった。一方、育成・研修の前提となる「経営ビジョン」は一般企業(26%)・DX先行企業(66%)、「人材ニーズの定義」は一般企業(26%)・DX先行企業(50%)、「育成計画」は一般企業(25%)・DX先行企業(68%)、学びを活かす「実践機会の提供」は一般企業(31%)・DX先行企業(71%)と、いずれも一般企業の実施率がDX先行企業よりも大きく下回った。
一般企業では、e-learning受講環境の提供など、比較的始めやすい「学ぶ場」の提供から進めている傾向がうかがえる。
一方、DX先行企業においても、学びを促進する「コミュニケーション」は18%、評価や報酬に紐づく「人事制度」の整備は8%にとどまり、学ぶ「動機づけ」につながる施策まで着手できていない企業が大半となっている状況である。
デジタル人材育成施策の課題認識
一般企業においては、デジタル人材育成施策の課題を感じている項目は、「経営ビジョン(45%)」、「育成計画(57%)」などで、「育成・研修」より手前の施策に課題を感じる割合が高い状況となっている。
一方、DX先行企業においては、「実践機会の提供(53%)」や「人事制度(47%)」といった「育成・研修」後の施策についての課題認識が高くなっている。とくに、「実践機会の提供」においては、DX先行企業の多くは実施率が71%と既に着手している一方で、依然、課題を抱えている企業も多いことが明らかになった。
また、一般企業、DX先行企業ともに、「育成・研修」を実施している企業においては、制度導入をしてもその内容にはまだ改善の余地があると考えている割合が高い状況である。
DXに対する取り組み
全体の9割以上の企業がDXを検討・推進しているが、多くは業務効率化にとどまっている。一方で、DX先行企業は、「新規製品・サービスの創出」92%、「既存製品・サービスの付加価値化」76%といった付加価値向上目的に加え、「企業文化・組織マインドの根本的な変革」といった従業員を対象とした変革にも76%が取り組んでおり、一般企業との差異が表れている。一般企業では、よりデジタル人材の必要性が読み取れる。
潜在デジタル人材は36%
個人に対する調査は、エンジニアやデザイナー、ビジネスプランナーなど、デジタルに関する14職種の経験がある人を「デジタル人材」、当てはまらない人を「非デジタル人材」と定義し、分析している。その結果、日本の就業人口約3,000万人のうちデジタル人材は254万人と推計された。
次に、非デジタル人材のうち、「デジタル領域関与意向」と、デロイト独自のデジタルリテラシーアセスメントにおける「マインドスタンス」レベルの2軸から9つに分類し、両軸が「中」レベル以上の層を、デジタル人材になりえる「潜在デジタル人材」と定義し、分析した。その結果、潜在デジタル人材は、非デジタル人材の36%と推計された。
働く個人のリスキリング意向と課題
デジタル技術の発展にともない必要となるスキルを個人が習得する意味での「リスキリング」意向者は、デジタル人材では69%となっている一方、非デジタル人材では32%にとどまり、なかでも非デジタル人材の半数近くがデジタル分野のリスキリングに関して課題を感じていない状況である。
また、リスキリング意向者における課題については、必要なスキルや学習方法の明確化、トレーニング機会や時間確保、キャリアに活かせる機会不足が上位となっており、デジタル人材を拡大する上では学びに対する個人のレディネス(準備)や動機づけを促進する必要があると考えられる。
8月24日にウェビナー開催
デロイト トーマツ コンサルティングでは、同調査の結果について、2023年8月24日13時から、企業の人事や経営企画・経理財務・総務などの各部門責任者向けウェビナーを開催し、より詳細な分析をもとに示唆・提言を含めた解説を行う予定。申し込み登録は、同社サイトから。
