大阪シーリング印刷、効率的かつ高精度な「リモート立ち会い」実現
[軟包装向け「遠隔色校正システム」導入事例]顧客・営業・現場の時短と負荷軽減
大阪シーリング印刷(株)(本社/大阪市天王寺区小橋町1-8、松口正社長)は、2021年にFFGSの「軟包装向け遠隔色校正システム」を導入。関西地区のクライアントから運用を始めている。このシステムは、パッケージ業界で必須とされてきた「クライアントによる立ち会い校正」をモニター上で高精度に行えるもので、昨年2月の「TOKYO PACK 2021」での発表以来、コロナ禍で立ち会い校正のオンライン化を模索する全国のグラビアコンバーターなどから注目を集めている。導入の経緯や具体的なメリット、今後の展開などについて、営業推進部課長・北川尚司氏、大阪営業部主事・黒田圭治氏、フィルムコンバーティングカンパニー門司工場製版課課長・久門高志氏に聞いた。
コロナ禍で「立ち会い校正」の代替手段の必要性を痛感
大阪シーリング印刷は現在、国内に生産拠点を14ヵ所持ち、札幌から沖縄まで全国をカバーする営業拠点と合わせたきめ細かい製販ネットワークを構築。シール・ラベルを主体に、フィルム製品(軟包装)、紙器パッケージ、販促ツールに至るまで、多種多様なパッケージ関連製品をワンストップで提供している。近年は、中国やニューヨークにも拠点を設け海外におけるパッケージづくりのサポート活動にも力を入れている。さらに、2021年8月23日には、パッケージ印刷の未来にも目を向け、研究開発の新拠点「イノベーションセンター」を大阪に開設。このようにさまざまな視点から次々と先手を打ち続ける同社が、いま優先的に取り組んでいる課題のひとつが、「デジタル技術を活用した工程改革」である。その必要性について、北川課長はこう説明する。
「軟包装の色確認は通常、簡易校正だけで進めることが多いが、ロットが大きいもの、品質要求レベルが高い仕事では、立ち会いを希望するお客さまが少なくない。当社の場合、コロナ禍以前は年間で数百件の印刷立ち会いがあった。軟包装の生産拠点は岡山と門司の2ヵ所あり、ほとんどの場合、DTP・製版設備を持っている門司工場で立ち会ってもらうが、遠方のお客さまほど、多くの時間と費用がかかってしまう。状況によっては宿泊を余儀なくされるということもある。お客さまへの負荷だけでなく工場側にも印刷機の稼働率が下がってしまうなどの影響があった」
門司工場の久門課長は、よりリアルに現場の苦労を実感している。
「コロナ禍が長引くに連れて『Zoomなどで色校正を見られないか』という要望が増えてきたが、さすがに画面越しで色味を正確に把握してもらうのは難しく、通常の立ち会い以上に時間がかかる上に、OKが出たはずの刷り上がりを送ったら『色が違う』と指摘を受けてしまうなど、大きなロスが発生していた。コロナ禍以降、製造側としても『リモートで高精度に色を確認できる仕組み』の必要性を感じていた」
そんな中、「TOKYO PACK 2021」の会場で「遠隔色校正システム」の存在を知った。早速FFGSにデモを依頼し、大阪営業部と門司工場でテストを実施。その評価は高かったという。
「印刷立ち会いをリモートで行うことに対して、色調をどこまで再現できるのかという不安があったが、実際に見たところ、微妙な差もモニター上で確認でき、再現精度は想像以上だった。当社が推進しているDXの方向性にもマッチしているし、コロナ禍・アフターコロナにおいて人の移動を抑えていくためにも、いまがいいタイミングだということもあって、デモ会場で導入を即決した」(北川課長)
立ち会いの工程を1日単位で短縮できる感覚
2021年8月末から、関西圏の得意先を対象に運用をスタート。簡易校正を見慣れたクライアントの目に、遠隔色校正はどのように映ったのだろうか。大阪営業部の黒田主事は、具体的な反応についてこう語る。
「遠隔色校正システムを提案すると、『ぜひ使ってみたい』と前向きに検討するお客さまが多かった中、『本当にモニター上でそこまで細かくわかるものなのか』と不安がる意見が出たのも事実。ところが、実際にこのシステムを見てもらうと『簡易校正と刷り出しの色の差や現場で色調整した前後の微妙な違いも、こんなにきちんと確認できるとは思わなかった』と、予想以上の評価をいただき、営業戦略的な手応えを感じている」
シビアな色味のチェックも問題なく行える。
「あるお客さまの仕事で、パッケージにコーポレートカラーが使われており、この遠隔色校正システムで見てもらったところ、わずかな色調の変化もモニター上で確認でき、立ち会いから校了のサインをいただくまで、いつもの半分程度の時間で済んだ。これだけの再現精度があれば、他のお客さまにも満足していただけると思う」
この仕事では、修正が3回ほど入ったものの「わずか1時間程度で立ち会いが終了した」と黒田主事。相当な時間短縮効果だ。
「品質要求レベルが高いお客さまに立ち会っていただく場合、夕方遅くまでかかってしまうことも珍しくない。それがより短い時間で済み、そこに工場までの往復時間が加わると、何時間どころか半日とか1日単位で短縮できる感覚だ。時間的にもコスト的にも、お客さまにとっても当社にとっても、遠隔色校正システムのメリットは大きい」(黒田主事)
印刷現場の作業迅速化にも寄与
メリットを実感しているのは営業部門だけではない。門司工場でも、明確な時間短縮効果が生まれている。
「1校目が出てから、色調整指示を行い、次の2校目が出るまでの時間が明らかに短くなっている。感覚的には半分ぐらいの時間で2校目を出せているのではないか。現場にしつこく修正依頼するのは申し訳ない気もあるが、そのような事態になってしまったとしてもこのシステムによる時間短縮の効果を感じる」(北川課長)
久門課長も、「修正作業そのものの迅速化」を実感している。
「現在、遠隔色校正システムは、グラビア印刷機と同じフロアの一角にある検査室のような場所に設置しているので、立ち会いルームへの行き来がなければ、手洗いやエアシャワーの工程を経ずに現場の横移動だけで使用できる。そのぶん、修正内容をより速く正確に反映でき、OK判断の迅速化が図れるようになる。時間短縮と同時に、お客さまの信頼性アップにも繋がる」
営業サイド・製造現場サイドともに好評の遠隔色校正システム。最後に、今後の活用について、北川課長に語ってもらった。
「現時点ではまだ関西圏限定の運用だが、コロナ禍において人の移動や接触が制限されている現在、有益なシステムであり、お客さまからも評価を得ているので、これからさらに実績を重ねて効果を検証しながら対象を拡げていこうと計画している。次に想定しているのは東京エリア。ナショナルブランドが集まっていることもあって、もともと立ち会いニーズが高いこともあり、受注のロットも金額も大きい。東京に設置すれば、その周辺、横浜・西東京・さいたま・千葉といった支店・営業所からもほぼ片道1時間圏内となり、門司工場までの移動時間や経費を節減できる。さらに有効なツールとして活用できるのではないかと考えている」
