ページの先頭です

大信印刷、フィニッシングソリューション「KBD MOLLシステム」導入

「ジャケット貼り」を自動化〜多彩な加工のワンパス処理が可能

 大信印刷(株)(本社/名古屋市昭和区、江端茂義社長)は2021年4月、小牧工場(愛知県小牧市)にフィニッシングソリューション「KBD MOLLシステム」を導入。高級マスク箱の受注が月産10万個以上はあったというコロナ特需の全盛期、手作業で行っていた「ジャケット貼り」を自動化し、大幅な生産性向上と作業負荷軽減を実現した。現在は、レターパックやポケットファイルの制作に活用。今後もワンパスで多彩な加工が実現できる同システムの優位性をクライアントに提案し、新たな受注獲得につなげていく。


daishinprinting_pac22_2.jpg

多彩な加工をワンパスで実現


daishinprinting_pac22_3.jpg
レターパックやポケットファイルの制作に活用

 印刷・紙器を手掛ける同社の創業は1950年。2年前には70周年の節目を迎えた。企画・設計・デザイン、刷版などのプリプレスから印刷、後加工までを一貫生産できることがハード面の強みである。10年前には、二次包装では最高ランクのクリーンルームを設備。さらに近年は管理システムの導入に力を入れており、2019年11月に検版システム「コレクトアイSIS(GTB)」、今年6月にはブランクス検査システム(木田鉄工所)を導入。同社は東京・静岡・名古屋・大阪・沖縄に営業所を構えているが、これらの生産を一手に引き受けているのが小牧工場である。

 また、デザイン・企画などの「提案力」に自信を持っているのも同社の強み。営業本部長を兼務する同社の松山忠貴常務取締役は「当社では単に紙製パッケージの営業を行うのではなく、サイズや材質改善、デザイン、ノベルティや売り方のアドバイスまでを含めた提案でクライアントの販促をサポートしている」。

 同社はこれらの取り組みにより、コロナ禍で従来のお土産品や百貨店などの紙製パッケージの受注が激減する中でも、マスク箱や衛生用品、化粧品、DIYなどの新たな商材の提案により、コロナ前よりも売上を増加させた。

 そして、クライアントの販促をサポートする様々な企画の中、牽引役となっているのが「自販機システム」である。大手自販機メーカーと提携し、様々な食品の無人販売を成功させている。同社パッケージプランナーであり、「自販機マイスター」として自販機営業を推進する営業一課の山本真依係長は「クライアントの費用対効果までを含めて提案し、疑似店舗として販売員がいなくても商品が売れる様々なバリエーションの自販機を提案している」。見た目にはとても自販機とは思えないものも多いようで「名古屋に設置している冷凍肉の自販機は、特注の金のシートを貼った金ピカの自販機になっていて、待ち合わせの目印になりそうなほど」(山本係長)ということだ。

 さらに、自販機の外見だけでなく、その中で販売する商品のパッケージデザインについても、自販機の中で転がりやすく、取り出しやすい形状のものを提案しているということだ。

 「自販機の提案をきっかけに、クライアントのお客様が実際に実店舗にも足を運びたくなるような企画・提案を心掛けている。そして最終的には自販機で販売する商品のパッケージのデザインから印刷、ラッピングまでのすべてを当社に任せてもらえるようにしていきたい」(山本係長)

 さらに、昨今のSDGsの取り組みにも注力していることも同社の特徴の1つ。松山常務は「脱プラの流れの中、食品用包材もプラスチックではなく紙パッケージを提案している。また、完全に紙ではなくても、CO2排出を低減させ、環境に配慮した材料や、LIMEXなどの新たな商材の提案で紙パッケージの付加価値向上を目指している。SDGsの今後の広がりに期待したい」と話している。


daishinprinting_pac22_1.jpg

左から、松山常務、逢坂工場長、山本係長


業界の常識を覆す「特殊貼りの汎用機」

 「パッケージ印刷の世界では『ジャケット貼り』は手貼りで行うのが常識である。これを自動化できることは、業界としては常識を覆した画期的な製品であるといえる」(松山常務)

 同社が、「KBD MOLLシステム」の存在を初めて知ったのは、4年前の(株)光文堂の新春機材展。「当時は具体的な"絵"もなかったので必要性は感じなかったが、コロナ特需で必要性に迫られた。ジャケット貼りだけでなく、パッケージ印刷の業界で内職が当り前とされる様々な加工をワンパス処理できることがKBD MOLLシステムの最大の強み」(松山常務)。

 このため、高級マスクケースの仕事が落ち着いたあと、同社ではレターパックの「両面テープ貼り」も自動化できるところに着目して活用を開始。小牧工場の逢坂敏雄工場長は「きれいに貼ることができる。人の手でやるよりも品質が安定しているため、安心して作業が行える」と評価する。

 「サックマシンではできないことも、KBD MOLLシステムでは可能になる。パッケージ制作の原理原則さえ知っていれば、かなりニッチな加工も自動化できるため、まさに『特殊貼りの汎用機』と言える。営業にはその優位性をクライアントに提案し、KBD MOLLシステムの仕事を増やしてもらいたい」(逢坂工場長)

 山本係長は「化粧品サンプルの台紙などにも提案することを考えている」としており、営業としては提案の幅が広がり、武器が増えたことは間違いないようだ。

 「これまでは内職が当り前であった加工を自動化できるという点で、KBD MOLLシステムは素晴らしいマシンだと言える。ただ、複雑な加工にはそれだけセット時間も必要なため、ロットや価格次第では、手作業でやった方が効率的という場合もある。当社としても、化粧品サンプルだけでなく、このシステムの優位性を最大限に発揮できる企画を提案し、仕事を増やせるように努力していきたい」(松山常務)


daishinprinting_pac22_4.jpg

KBD MOLLシステムの前で小牧工場のスタッフ


 同社は今後、無処理版の採用などSDGsへの取り組みを加速させるとともに、ブランクス検査システムの稼働の開始やXMFリモートなど自動化によるDXの取り組みも推進していくという。「社会ニーズに敏感にアンテナを張り巡らせ、取り組みを進めていく」(松山常務)という同社の今後に注目したい。

注目コンテンツ