大洞印刷、「CO2排出量ゼロ電力」使用
LCAの観点で脱炭素社会に貢献
「世の中では何となくエコっぽいものや環境に良さそうなものが注目されているが、本当は何が環境に良くて、何が環境に悪いのか、その本質を見出した企業活動を実行していきたい」。大洞印刷(株)(本社/岐阜県本巣市)の大洞広和専務取締役は、表面的なエコ活動ではなく、現実に地球環境に貢献できる活動を展開している。環境対応製品についても、LCA(ライフサイクルアセスメント)を見据えた開発を行っている。2019年6月からは「CO2排出量ゼロ電力」を使用。このため、同社の環境対応製品は素材だけでなく、製造過程を含めて環境負荷の少ない製品となっている。

SDGsの取り組みの一環として
印刷会社を超えた、革新的な「プリント・サービス・プラットフォーマー」へ--。大洞印刷が目指すのは「印刷もできるIT企業」。そんな同社は現在、PX(プリントトランスフォーメーション)、CX(カスタマーエクスペリエンス)、SDGsの3つを大きな軸として、これに新型コロナ関連のソリューションを加えた事業展開により、クライアントのビジネスを加速させ、価値を最大化していく取り組みを進めている。
「流行だからというわけではないが、この中でもとくにやっていきたいのはSDGs」(大洞専務)。そんな中、たまたま電力会社と会う機会があって知ったというのが、CO2を排出せずに発電できる電力があるということだ。
「この電力を使用すれば、本質的に地球温暖化防止に貢献できると思い導入を決めた。CO2排出量ゼロの電力で印刷機を稼働させて印刷物を作ることにより、製造工程を含めて脱炭素社会に貢献できる」(大洞専務)

日本は火力発電のため、その過程でCO2を排出している。このため大洞専務は「印刷工場は大量に電力を消費する。ここを変えなければ、環境に良い素材などを使用して印刷しても、結局、CO2を排出する場所が違うというだけで、根本的な解決にはならない」と指摘する。この点、同社では「CO2排出ゼロ」の電力を使用しているため、環境問題に取り組むクライアントに向け、クリーンエネルギーのもとに製造される印刷の活用を呼び掛けているという。
「通常の電力と比べると年間で数百万円は高くつくが、地球環境を守っていきたいという当社の意識とコミットしているため、今後も継続していきたい」(大洞専務)
グリーンナノを使用したクリアファイルを発売
同社は2021年10月、主力製品であるクリアファイルに新たな環境配慮型商品「クリアファイルgreen nano(グリーンナノ)」を追加した。同商品は、最終焼却処分時に発生するCO2を約30%削減できるという「green nano」を使用したクリアファイル。見た感じや手に触れたときの感覚は、通常のクリアファイルと同じである。
green nanoは、焼却処分時に発生するCO2を抑制する日本発のエコ技術で、東京理科大学の阿部正彦教授・東京理科大学発ベンチャー・アクテイブ(株)が開発したもの。同技術を用いたクリアファイルは、従来のスタンダード品の透明度や耐久性といった性能はそのままに、焼却処分時に発生するCO2を削減できる。使用感も廃棄の際の分別方法も従来と変わらず、ユーザーにも優しい商品となっている。
「当社はこれまで、LIMEXや間伐材を使用した紙など環境に優しい素材を活用したクリアファイルを提供してきたが、今回、新たにgreen nanoのクリアファイルを追加した。安定的に出せる数値として、焼却処分時に発生するCO2排出量30%削減と謳っているが、理論知的には60%の削減が可能」(大洞専務)
軟包装やショッピングバッグではgreen nanoを使用している事例はあるようだが、「文具系ではおそらく当社が初めて」(大洞専務)ということだ。
国内では廃プラスチックのほとんどを焼却処分しており、正しく廃棄することでゴミの流出を防ぐとともに、さらにgreen nanoという日本発のテクノロジーを用いることにより、焼却時に発生するCO2を従来品よりも少なくできるため、地球温暖化問題や低炭素社会の実現に貢献したい企業などに推奨していく。
2022年より社用車を順次EV化
脱炭素社会に貢献する次の展開として、同社は2022年から社用車のEV化を進めていく。「CO2排出量ゼロ」の電力で充電した電気自動車を使用することで、車の使用について完全なCO2排出量ゼロの実現を可能にしていく。
「社用車を買い換えるタイミングで順次、切り替えていく。電気自動車を買うだけでは意味がなく、CO2排出ゼロ電力とセットで使用することで意味が出てくる」(大洞専務)
同社では、今後も「本質」を見出した地球環境にやさしい取り組みを進めていく方針で、これによりSDGsに貢献していく考えだ。
