大和出版印刷、Iridesseの活用で印刷価値向上へ〜デザイナー/学生の活躍を支援
「印刷物として残すべきもの、またデジタルに移行すべきものがあることに、クライアント側も気付きつつある」。このように語るのは、大和出版印刷(株)(本社/神戸市東灘区、武部健也社長)の武部俊取締役営業部長だ。同社は「印刷もできる印刷会社」を標榜する企業。Web/システム事業を強みとしており、アナログの印刷物とWebなどのデジタルを活用するメリットとデメリットの双方をクライアントに伝え、最適な情報伝達手段を提案することで信頼を築いている。
クリエイターのアイデア・イメージを忠実に再現する「Iridesse」に期待
同社のクライアントは主に大学などの教育機関。とくに昨今はコロナ禍の影響により、動画の撮影・編集の案件が増えているようだ。ただ、やはり印刷会社としてはアナログの印刷物に付加価値を与え、印刷物として「残すべきもの」を提案していく必要がある。そのような中、同社がアフターコロナ時代の印刷経営の切り札の1つとして今年3月に導入したのが、特殊トナーによる1パス・6色プリントでメタリックカラーや多彩な色の表現が可能なデジタル印刷機「Iridesse Production Press」だ。
「当社には社内デザイナーはいないが、導入後のIridesseの講習に、制作メンバーと一緒に取引先のデザイナーの方にも参加していただいた。デザイナーの方には表現の幅を広げてもらい、当社はそれを営業サンプルに使うことで、WIN-WINの関係をより強く構築していきたい」(武部取締役)

また、同社では「お世話になっている教育機関への恩返しの一貫」(武部取締役)として、学生のスタートアップ、創業支援を行うビジネススクエア「アンカー神戸」に法人会員として登録しており、ここで学生にモノづくりの楽しさを伝えるための取り組みや、クリエイティブ系の学生の作品やアイデアをビジネスにするまでの手伝い、また自社設備により支援するなどの活動も視野に入れている。
「印刷業界がイメージアップし、将来の人材確保に繋げていく取り組みを行っていきたい。当社の代表は、兵庫県印刷工業組合の理事長でもあり、また私も幼い頃から父の勤める当社に遊びに来たり、アルバイトをしに来たり、印刷業界に育ててもらったという思いがある。今後、少しでも業界に恩返しをしていくことができれば...」(武部取締役)
そして、学生の作品を形にする上でも「Iridesse」のポテンシャルには大きく期待しており、「Iridesseは、デザイナーやクリエイティブ系の学生など、クリエイターのアイデア・イメージを忠実に再現できる能力があるので、これまでとは違った展開も行っていきたい」(武部取締役)と、Iridesseによる新たなビジネスの創出に期待している。
「神戸派計画」の商品展開・ノベルティの作成にも活用
同社が「Iridesse」を導入した一番の理由は、ハイクオリティとハイスピードを実現するとともに、メタリックを含めて多彩なカラーバリエーションに対応可能であることだ。特色にはゴールド・シルバー、そして白インキを採用しており、武部取締役は「主に新規案件のツールに活用していきたい」と話す。
また、同社はIridesseの高いポテンシャルを活用し、2011年に立ち上げたステーショナリーブランド「神戸派計画」の商品展開にも活用していくことも視野に入れているようだ。
「『オンデマンド』の特性を活かし、小ロットかつデザイン性の高いノベルティの作成などに役立てたい」(武部取締役)
また、同社のクライアントである教育機関は、SDGsへの関心が非常に高い。今回のIridesseの導入をきっかけに、大学・高校などに環境対応用紙による印刷も提案していく考えだ。武部取締役は「クライアントのブランド力も上げられるのがIridesse」と話す。

さらに、Iridesseの導入は、現場オペレーターの意識向上にも結び付いている。現場ではこれまで、営業が受注してきた仕事を「事故を起こさぬよう、納期どおりに」という姿勢で印刷しているだけの感じだったようだが、今では「こんな用紙・素材にも刷れますよ」や、「こんな機能を付けて欲しい」など、積極的な意見が出るようになったようで、武部取締役はここにもIridesseを導入した成果を感じている。
「営業からだけではなく、現場からの意見も出るようになれば社風も良くなる」(武部取締役)
今年3月の導入から約5ヵ月。稼働を開始したばかりのため、具体的な案件も動き始めたところであるが「強みを生かしていくのはこれから」(武部取締役)と、Iridesseにかける期待は大きい。Web/システム系の事業を強みとしながらも「印刷物として残していくべきもの」を追求していく同社の取り組みに注目したい。
