アグフア[第3回 工場長サミット]現場の多能工化急ぐ
「コロナ禍とその後を見据えた自社の取り組み」〜業界の共通課題浮き彫りに
【(株)吉田印刷所】代表取締役専務 吉田泰造氏(新潟)

売上の2/3が商印で、残りが薬袋事業。いずれもコロナの影響を受け、雇用調整助成金を活用しながら事業の見直しを進めた。
ただ「休業で凌ぐ」というのは仕事の勘を鈍らせる。ここまで長引くと、社員の労働に対するマインドや社会性を維持させることも経営的に考える必要がある。そこで当社では、10時から15時まで会社を開放し、違う部署の仕事を見学するなど、いままでできなかった勉強の機会を提供。半分強の社員が参加している。
一方、当社独自の「スーパーライトプリント」という極薄紙印刷の技術を使って「文具」というジャンルでオリジナル商品を開発している。巣ごもり商品として薄紙の折り紙などが好評で、こだわり製品として高価であるにもかかわらず、多くの販売実績をあげた。
休業などを経て、現場の人員配置最適化への気付きもあった。今後は、従来の仕事を従来の人員配置で行うかどうかということも再考すべきだと考えている。
また、惠友印刷・大澤様にもご紹介いただいた「フレッシュプリント」についても、コロナが終息した時に、改めて情報更新の必要性、小口発注の有効性を説いて訴求していきたい。
一方、薬袋事業においては、新たな設備投資を控えており、生産キャパ増を見越した新たな需要開拓に乗り出している。併せて「脱・薬袋」をテーマに、設備の有効活用に繋がる商品開発も進めている。例えば、紙製マスク入れ。そこに高精細印刷を施したオリジナル商品を企画し、単なる環境衛生用品ではなくプロモーションツールとして訴求していきたい。
【(株)境英印刷】工務 工場長 山田高広氏(東京)

売上の約7割を占める商印は、やはり去年の今頃は仕事が半減した。ただ、幸いにも残りの3割を占める出版系の仕事の売上が2〜3割増と堅調に推移した。
アズーラによる速乾印刷の採用から3年。「慣れ」は怖いもので、忙しい時には水を絞る努力を怠る傾向が見受けられたことから、今回、空いた時間を利用して、オペレータと改めてコミュニケーションをはかり、水を絞ることの意味、メンテナンスの重要性などを再認識させた。年に数回のメンテナンスはもちろん、日々のメンテナンスも再設定した。
また、月1回開催していた部署別ミーティングを合同で行うことにした。そこでひとつの工夫として各部署がそれぞれ別の部署に「指摘」を行うようにした。結果、活発な議論に繋がり、各社員の意識の変化にも繋がった。
アフターコロナに向けては、まず、完全パウダーレスに着手したい。各オペレータのスキルに差がある中、標準化をはかり、条件が整った段階で完全パウダーレスに移行したい。
また、当社は機械1台に対して専属の機長が担当する形をとっており、特別な理由がない限り、別の機械は触らない。これは、一時的な稼働率の低下を懸念してきたためで、今後は全オペレータがどの機械でも回せるような多能工化を目指す。
【(株)教文堂】印刷部 課長 水上勝一氏(東京)

医学書専門の印刷会社。コロナ感染拡大当初、コロナ関連の出版物が増えた。しかし、3回ほど増刷した後はバッタリ止まった。やはりCOVID-19の変異が激しいことや、いまだ正体が掴めないということもあり、結論的な書籍の出版をためらう風潮が見られた。しかし、これが落ち着いたとき、医学関連の様々な書籍に必ずCOVID-19の項目が追加される。新刊はもちろん、改定、増刷という需要も見込める。今期は減収減益となったが、その需要回帰を支えに乗り切っていこうと思う。
一方、今後は印刷会社として武器が必要であり、当社では「完全パウダーレス」という武器を手に入れた。アズーラは水が絞れる、スブリマはインキ使用量を減らせる。この両方をきちっと実践すればパウダーレスは難しくない。
さらに、抗ウイルスニスによる新たな展開として、紙フォルダや名刺の商品化に向けて準備を進めている。これは、PPではなくニスを利用することで再生紙にできることからSDGsへの貢献にも繋がる。
私は40年以上オフセット印刷に携わってきた。紙のコンテンツは絶対廃れないと信じている。デジタル媒体のような透過光より、紙メディアのように反射光で物を見るという行為は、目に優しいということが第一にある。また、バッテリー等のエネルギーも必要としない。そういったものを大切にしながら、今後も印刷に携わっていきたい。
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各社の意見交換が終了し、最後に佐川社長は、「アグフアのプレートというひとつの印刷材料を共通の価値観として集い、様々な会社が議論できたことを非常に嬉しく思う。今後は、これまで以上にアンテナを高くし、情報を集め、新たなことに挑むことが大事になる。そこでは失敗のリスクもあるが、それらの経験は明日への糧になる。今後も、この工場長サミットがそのヒントを提供し、共有できる場として継続開催されることを切に願っている」と締めくくった。
