アグフア[第3回 工場長サミット]現場の多能工化急ぐ
「コロナ禍とその後を見据えた自社の取り組み」〜業界の共通課題浮き彫りに
【(株)高速オフセット】常務取締役 印刷本部長 商業印刷センター長 赤尾一氏(大阪)

コロナの影響で、新聞の受託印刷が2割減、商業印刷は当初半分以下にまで落ち込み、雇用調整助成金を活用しながらの経営を強いられた。
一方、既設のカッティングプロッターを活用し、スチレンボードで飛沫防止ボードを企画制作。印刷は一切しない商材だが、ECサイトを通じて結構売れた。今年3月末の決算は減収増益を確保した。
輪転機ではアズーラを運用しているが、当社の枚葉機は20年前から水なし専用機で、その性格上、アズーラ速乾印刷などの先進技術を採用できないジレンマを抱えている。一方、油性水なしはトラブルが絶えないことから今年3月、枚葉機に後付けでLED-UV装置を搭載し、水なしLED-UV印刷を立ち上げた。以前はインキのグロスが低いことから諦めていたが、東レから東京インキのインキを紹介していただき、実現することができた。
アフターコロナに向けては、枚葉機の更新を計画している。これまでは経営者側で設備投資の方向性を決めてきたが、今回は現場で実際にその設備に関わる人材に任せ、5〜10年先を見据えた投資を検討していく。
また、私が最近つくづく思うのは、物事を正確に実行するためには、ある程度の余裕が必要だということ。ギリギリのなかでは必ず人は失敗する。今後は、設備やシステムの活用で、余力を持ちながら仕事を進められるような工場を目指したい。
【(株)コーセイカン】取締役 管理統轄 岩井馨氏(岡山)

売上比率は、地元の百貨店グループで50%、一般で50%。イベント自粛の影響で、百貨店グループの売上が大きく落ち込んだが、その中で3つの取り組みを実践した。
当社の従業員87名の内、4割がWebグラフィックデザイナー。そこで意図的にデジタルコンテンツからのアプローチを強化し、印刷物への波及受注を試みた。結果、デジタルコンテンツの受注に成功した大口の既存顧客から、前年を上回る印刷物の受注額を達成した事例もある。
さらに、コロナの影響を直接受けにくい官公庁、学校関係へのアプローチも強化し、成果を上げた。
一方、社内的には外注に頼っていた折工程を内製化し、現場では同時に多能工化に取り組んだ。
当社では、後加工工程のほとんどを協力会社に外注しているが、調査の結果、残念ながら30件の品質トラブル中、10件近くが外部委託先でのミスだった。これはコロナ禍でのコミュニケーション不足の影響もあると思う。今後は、協力会社とのコミュニケーションを密にしていく必要性を感じている。
さらに、アズーラ速乾印刷にようやく慣れ、安定してきた。今回の工場長サミットなどで刺激をいただき、今後は現場とともにプレートの特性を活かしてさらなる高みを目指したい。
【佐川印刷(株)】工場長 川上貴紀氏(愛媛)

イベント関係や広告チラシなど、オフセット印刷の仕事はコロナ当初半減した。ただ、愛媛という地方の性格上、オフセット印刷以外にも様々な仕事を受注してきたことから、その設備を使ってマスクや飛沫感染防止アクリルパーテーションなどを企画制作し、販売した。
このように「コロナだから発生する仕事」もあり、今後も増えてくるであろう商品券や地域振興券などの仕事を印刷から加工まで一括受注している。また、ワクチン接種券もそのひとつで、オフセット印刷+デジタル印刷による追刷りの受注もあった。
アフターコロナに向けては、前述の商品券などの需要において必要になってくる偽造防止技術の習得に着手しているほか、オフセット印刷とデジタル印刷のハイブリッドソリューションにおいて、バリアブル印刷による付加価値の提供にも注力していきたい。
【(株)日報】工場長 井上聖司氏(福岡)

枚葉・オフ輪を両輪とする印刷会社。枚葉では2年前からLED-UV(後付け)へとシフトし、昨年3月には新たにLED-UV機を新設している。現在は、耐刷性を考慮してプレートにはエリートを使用しており、今後のアズーラの改良に期待している。
アフターコロナに向けては、工程や部署間で残業時間に大きな違いがあることから、今後はより多能工化を進めるとともに、人員の適正配置によって残業時間の平等化に取り組みたいと考えている。
また、コスト削減のさらなる推進も大きなテーマ。具体的にはスブリマ240線での高精細印刷を推進し、インキ使用量削減に繋げたい。また、オフ輪では水を絞ることによるガス代・インキ消費削減も考えている。
インキ使用量削減については、CTPの網点面積率のデータを取り、そこに対するインキ使用量を測定することで、実際の削減効果を「見える化」し、社員のモチベーション向上に繋げたい。また、成果に対しては報奨金制度を採用することも考えている。
