旭紙工、店名差替え物・印刷時の2枚取りによる白紙の混入防止
紙折機専用混入防止システム「EYEON-F」設置
刷り本で混入していても折工程で発見
折や製本工程で稀に起こる「混入事故」。頻繁に起こるものではないが、発生した場合のダメージは深刻だ。印刷加工・製本の旭紙工(株)(本社/大阪府松原市、橋野昌幸社長)は、混入事故を折工程で発見・防止するため、紙折機専用の混入防止システム「EYEON-F」を既設の紙折機4台に設置し、これまで年に数回発生していた混入事故を防止する体制を構築している。今後、半年に2台のペースで増設し、将来的には30台すべての紙折機に同システムを設置する計画だ。

「お客様に安心と信頼を売り、安心して仕事を発注していただける会社を目指したい」。橋野社長は自社のモットーについてこのように語る。そしてこれを実現するため、同社が積極的に展開しているのが、検査システムや場内監視カメラ設置などによるセキュリティの強化だ。
「積極的な設備投資により、乱丁・増落丁などのトラブルは限りなくゼロに近づいた。また、中綴じラインの三方断裁後の断裁不良や通常の検査機では検出されない折れこみについても、セパキャリという検査装置の設置により事故を未然に防げるようになった」(橋野社長)
また、橋野社長が「当社のセキュリティ設備で一番活躍している」としているのが、本社に20台、瓜破工場に70台設置する場内監視カメラ「見守りカメラ」だ。すべての現場の様子を過去4ヵ月にさかのぼって録画しているため、万が一のトラブルの際は、原因究明に効果を発揮するとともに、録画画像をエビデンスとして残すことができるため、品質保証に役立っているようだ。

モニターは本社と瓜破工場に1ヵ所ずつ設置されており、リアルタイムで現場を「見守る」ことができるが、現場責任者などは工場から離れた場所からもスマホで確認できるという。
「製本・加工現場は人の作業が多いため、人の動きのイレギュラーを確認するのに役立てている。また、不良やトラブルが発生した場合も、録画画像があるため、お客様に納得していただきやすくなった」(橋野社長)

折工程で混入防止。顧客起因の混入発見も
「店名差替えの印刷物の混入事故を防ぎたかった」。橋野社長は、EYEON-Fを設置するに至った理由をこのように語る。その背景には、十数年前に発生した「痛い思い出」があるようだ。
「チェーン店の仕事であったが、A店のチラシを加工して出荷した後に、B店の仕事が入ってきたのだが、顧客から『A店のチラシの中にB店のチラシが混入している』とクレームがきた。そんなことが起こるわけがなく、日報や生産履歴をもとに説明したが、結局、責任を取ることになった」(橋野社長)
この混入が事実だとするなら、A店の刷り本の中に、すでにB店の刷り本が混入していたとしか考えられないが、「これまでは刷り本の段階で含まれている混入を発見する術はなかった」(橋野社長)。しかし、EYEON-Fの設置により、旭紙工に届けられた刷り本の中にすでに含まれている混入も発見できるようになった。
「お客様起因の不良もあることは事実。これをフィードバックし、刷り本の不良も報告することで『旭紙工に任せれば安心』と思っていただきたい」(橋野社長)
現在は全30台の紙折機のうち4台にEYEON-Fを設置しているが、「見学に来られたお客様からは『これで折って欲しい』と言われる」(橋野社長)。実際にEYE ON-Fを使用する現場オペレーターは「店名など、差替えのエリアにカメラをセットするだけなので操作は簡単。設置してから何回か混入があったが、すぐに折機が停止して混入を取り除くことができる。混入したものが外部流出すると起こると大事故になる。精神的にも安心して作業できる。2つのカメラが設置されており、折る前と折った後のどちらでも検査できる」。EYEON-Fの設置後は、混入事故はゼロということだ。
同社は2020年秋に、橋野社長が個人的に20数年来の付き合いのある韓国メーカーのジニルからEYEON-Fを紙折機2台に設置。今年2月には追加で2台を設置した。ただ、コロナ禍で来日できないため、EYEON-Fをジニルと共同開発した日本の折屋・(株)サイコー(本社/埼玉県戸田市)に据付けやオペレーション指導を依頼したという。サイコーはEYEON-Fの国内総代理店であるが、橋野社長はジニルの社長と古くからの知人であることから、旭紙工では直接やり取りをしたという。
将来的には全折機に設置。守備力の強化へ
同社は今後、半年に2台ペースでEYEON-Fの増設を進める。将来的には30台の折機すべてに設置する計画だ。一方、不良を発見した社員には「ファインプレー賞」として金一封を進呈するなど、士気向上にも努めており「このため、当社の社員は不良発見に真剣。毎月40〜80件の不良が見つかるが、半数以上は印刷汚れや折れこみなどお客様起因の不良。営業を通じてお客様にフィードバック活動を行っており、ある一定の支持を受けていると感じている」(橋野社長)
同社には生産設備という「攻撃力」は十分に備わっている。今後はハードとソフトの両面で「守備力」を強化していく考えだ。今後の展開に注目したい。

