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コダック、「ゲームチェンジャー」へ〜4つのコア技術を自社完結

PROSPER ULTRA 520プレス / PROSPERプリントバー

 コダックは「drupa2024」において、ULTRASTREAMコンティニュアスインクジェットテクノロジーを搭載した「PROSPER ULTRA 520プレス」と、PROSPERインプリンティングシステムの拡張版である「PROSPERプリントバー」を中心に、高速インクジェットにおける生産の多用途性とインライン機能の向上を訴求した。


 300メートル/分の超高速印刷が可能なPROSPERヘッドはこれまで、105ミリ幅で印字するハイブリッド印刷を提案し、日本でも数百台が稼働している。今回発表された「PROSPERプリントバー」は、この「PROSPERヘッド」の拡張アプリケーションで、PROSPERヘッドを千鳥配列することで印字幅を拡張。モノクロなら最大4ヘッドで420ミリ幅、フルカラーなら最大3ヘッド(4色で計12ヘッド)で310ミリ幅までのバリアブル印刷が可能である。


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PROSPERプリントバー

 インクは、環境に優しい水性顔料インクとして、食品包装規格に対応したパッケージ用インクやパーソナルケア用インクも新たに発表されている。

 コダックジャパン・プリント事業部デジタルプリンティング営業本部の河原一郎本部長は、「コダックのソフトウェアを改良し、ヘッドとヘッドの境目を判別しづらくすることで幅広印刷が可能になっている。世界的には9インチのヴァーサマークヘッドの置き換え需要として案件がある」と説明する。

 同ソリューションは、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの印刷機だけでなく、ポストプレスや加工ラインにも統合可能で、カスタムパッケージ、セキュリティ、商業印刷アプリケーションに高品質なインプリンティング(追い刷り)を実現する。

コンティニュアス方式のプリントヘッド技術

 コダックは、コンティニュアスインクジェットテクノロジー(ライティングシステム)、デジタルフロントエンド&コントローラー(ワークフロー&カラーマネージメント)、ナノテクノロジー水性インク&プライマー(マテリアルサイエンス)という、インクジェットに関わるコアテクノロジーを自社で開発・製造しているが、今回、新たにインクジェット印刷機搬送システムのGraphic Systems Services社(GSS社)を買収し、搬送機や前後処理機も自社完結している。drupaでは、OPTIMAXプレコーターを出品し、PROSPER ULTRA 520プレスとともにインラインのデモが行われた。

 「シートカッターや折り機といった加工機も自社で開発可能。4つのコア技術をもっているのは世界でコダックのみ。今後、インクジェットプレス分野で大きな差別化になる」(河原氏)

 drupaで最大の目玉となったのは、やはり「ゲームチェンジャー」と称される「PROSPER ULTRA 520プレス」だ。コダックのPROSPERシステムのコア技術となっているのがコンティニュアス方式のプリントヘッド技術。この技術を採用しているのはコダックのみで、他の世界的なインクジェットメーカーは、すべてドロップ・オン・デマンド(DOD)方式を採用している。


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PROSPER ULTRA 520プレス

 このコンティニュアス方式でも、前世代のSTREAM技術と第4世代のULTRASTREAM技術とでは、ドロップを生成するテクノロジーは同様であるものの、制御方法が異なる。

 STREAM技術は、大小のドロップを均一に落とし、小さいドロップを風で飛ばして再循環用に回収し、大きなドロップを落としてイメージを形成する。これに対し、第4世代となるULTRASTREAMはその逆。大きいドロップに電荷をチャージして抜き取り、小さいドロップを落としてイメージを形成する。この技術により、インクサイズはSTREAMのおよそ1/3になり、インクドロップの再現性に優れることから、粒状性のある高解像度の品質で高速印刷できるわけだ。

 drupa出展機の構成は、前工程にOPTIMAXプレコーター、後工程にハリス&ブルーノのポストコーター(水性ニスによる光沢、艶出し)をインライン接続。そこからフルカラーのカタログの折りや断裁をインラインで行った他、ポスターの印刷では、印刷後巻き取ったロール紙をニアラインでカットしてスタックしていた。デモは1日3回行われ、すべてのデモでヘビーカバレッジのジョブを152m/分で印刷していた。

PROSPER ULTRA 520プレスの市場

 PROSPER ULTRA 520プレスの最大の優位性は、光沢紙を必要とするインクカバレッジの高いアプリケーションであっても、OPTIMAXプレコーターとの組み合わせにより最高解像度をフルスピードで印刷できる点。さらに、プリントヘッドおよび水性顔料インクを自社製造することによって競争力のあるランニングコストを弾き出すことができる。さらに製品の耐久性。これも自社開発によるアドバンテージだと言えるだろう。


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OPTIMAXプレコーター


 drupaの会期中にも、PROSPER ULTRA 520プレスを導入の意向を示した商業印刷会社が多く見受けられた。

 「デジタル技術はコンベンショナルな印刷手法を凌駕しつつあるが、次のステップに進むのに最も重要な要素はアプリケーションの開発である」と指摘する河原氏。まずそのひとつがパーソナライズ化である。その背景には、コスト増の傾向にある用紙の削減、郵便コスト増にともなう印刷物の付加価値化といったニーズがある。とくに日本ではDMにおける郵便コストの割合が高い(米国48%、日本75%)ため、パーソナライズ化による印刷物の付加価値化が必要視されている。

 さらにエフィシェンシー(効率化)において、タイムトゥーマーケット短縮の追求に大きな関心が寄せられているという。

 「小ロットの印刷物を、データ入稿から如何にスピーディに製造し、効率良くデリバリーするか。ここに注目する印刷会社がPROSPER ULTRA 520プレスに大きな関心と興味を寄せている。現在は商業印刷向けだが、今後はOEMを通じて軟包装や紙器用途向けの製品も出てくる。そこでも『エフィシェンシーの追求』がひとつのテーマになってくるだろう」(河原氏)

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