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アインズ、水なし印刷によるカーボンオフセット訴求

水管理不要で色調が安定、独自技術も開発

 アインズ(株)(本社/滋賀県蒲生郡竜王町鏡2291-3、谷口彰社長)は、琵琶湖のある滋賀県の印刷会社として、環境に配慮した印刷にいち早く取り組んできた。ノンVOCインキやFSC認証をはじめ、東レの研究開発主要拠点のある滋賀県ということもあり、2003年には日本WPAに加入し、水なし印刷への挑戦を開始。現在は版数で商業印刷物の6〜7割を複数台ある水なし印刷専用のオフセット枚葉機とオフセット輪転機で印刷している。さらに、水なし印刷を活用した独自技術として「UV水なしエコダンプリント×グリーンアイ×脱プラ印刷」や「UV水なしSFC(スーパーファインカラー)」などを開発し、クライアントに環境に配慮した高付加価値な印刷物を提案している。

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水なし印刷による独自技術をPRする林田氏(左)と松岡氏


 同社は1877年に創業し、2027年には創業150周年を迎える老舗の印刷会社。従来の印刷だけでなく、時代が求めるコミュニケーションツールの提供を経営理念に掲げ、商品開発、販促支援、デジタルコンテンツ、地域クラウドファンディング、地方創生を目的にアンテナショップ「ここ滋賀」を運営するなど、幅広い事業を展開している。また、事業コンセプトに「ソーシャルグッドプロデュース企業への進化」を掲げており、営業推進部 ゼネラルマネ--ジャー 東京支社長の林田頼将氏は「社会・お客様・地域にとってかけがえのない存在になれるよう、全社員が一丸となって絆づくりに取り組み、提供する商品・サービスを通じて、社会課題や顧客課題の本質と向き合っている。また、企業の持続的な成長・地域の持続的な発展・日々の幸せを実現するため、総合力でソーシャルグッドプロデュース企業に進化してきた」と説明する。

 また、環境保全活動では「海洋・湖沼プラスチックごみ問題」への取り組みとして、「脱プラ印刷」に取り組む。新規事業グループ 新規事業チーム チームリーダーの松岡正宏氏は「従来のPP加工をUVニスに置き換えることで、PP加工と同等の耐摩擦性を維持しつつ、使用するプラスチックの体積量を当社比で従来の15分の1に抑えている」と説明しており、同社はこれにより社会貢献を果たし、持続可能な社会の実現に努力している。

湿し水の悪影響を受けずに印刷品質向上、水周りのメンテからも解放

 同社は2003年9月に水なし印刷の運用を開始。20年の経験により水なし印刷は自社の印刷スタイルとして完全に定着しているが、松岡氏は「変換の過渡期があった」と振り返る。同社が水なし印刷に取り組んだ初期には、水なし印刷に相応しい知識や環境はなかった。インキ粘度と印刷機の温調が整備できず、冬季や休日明け特有の低温障害により、常にインキ着肉不良、トラッピング不良や色再現の濁りとインキ膜厚過多による乾燥不良などの悩みがあったようだ。

 ただ、「長所もあれば短所もある当然の特性と理解できれば、水なし印刷の有効性は容易に理解できた。印刷や製版工程から排出される有害な廃液を大幅に削減でき、湿し水の悪影響を受けないことで印刷品質の向上と安定が図れ、水回りのメンテから解放されるなどのメリットは際たるものだった」(松岡氏)と水なし印刷のメリットを語る。

 水なし印刷は今でこそ環境に優しい印刷として知られているが、同社ではまず技術的なメリットに着目し、印刷業界の中でも早い段階で導入した。そして現在、水なし印刷は環境負荷低減への取り組みが高まり注目されているが、林田氏は「水なしで印刷しているというだけでは、クライアントは納得してくれない。『バタフライマーク』という証明が入ると説明することで、クライアントも環境に対するアピール度が高くなると納得し、満足していただける」と営業面でのメリットについて説明する。

 また、同社では各水なしインキメーカーとタイアップすることで、インキ特性比較、適正温度域の調査、インキローラーのニップと硬度調整、ブランケット表面処理の変更に至る全てのテストを繰り返すことで、最も改善効果の高かったインキ組成変更と印刷環境設定を見つけた瞬間を起点に、その後も継続的に調整を繰り返し、現在は最適な資材供給により、安定した水なし印刷環境を実現している。昨今は水なし印刷のさらなる可能性発掘に着手しており、環境負荷低減と機能性、美粧性のさらなる優位性を目指している。


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「水周りのメンテと管理が楽」と水なし専用枚葉機の前でオペレーター


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