ミマキ、初のテキスタイル・アパレル印刷向けDTFプリンタをリリース
[TxF150-75]白インク循環機能強化〜安定稼働と充実のサポート体制
「新しさと違い」─(株)ミマキエンジニアリング(本社/長野県東御市、池田和明社長)は、テキスタイル・アパレル印刷用途に向けて、同社初のダイレクト トゥ フィルム(以下「DTF」)プリンタ「TxF150-75」およびDTF専用熱転写顔料インク「PHT50」を開発。4月から販売を開始する。発売に先立ち、同新型機を初公開した「JAPAN SHOP 2023」(東京ビッグサイト)の会場で、営業本部グローバルマーケティング部の原田智充担当部長に開発の経緯やプリンタの特徴などについて取材した。
ウェアプリント印刷手法の特長と差別化
現在ウェアプリント市場では、主に4つの印刷手法による技術的な棲み分けがある。
まず、最も広く採用されているのがシルクスクリーン印刷だが、この方式では版が必要であるため小ロットの生産に不向きで、フルカラーでの印刷は手間と色数分の版作成が必要となる。
一方、ラバーシートを利用した熱転写方式も多く利用されているが、デザインが印刷された転写シートを生地に定着させる際、転写に不要な部分を手作業で取り除く「カス取り」作業があり、人手を割く手間と時間が必要になる。
また近年では、衣類や生地に直接デザインを印刷するDTG(Direct To Garment)プリントも普及している。これは版を用意する必要がなく、フルカラープリントにも対応するが、インクの「滲み」の問題から生地の前処理が必要だ。この前処理をプリンタで自動化するものもあるが、人の手で伸ばすという工程が必要で、結果的に2〜3ステップの印刷工程になる。
これらに対し、急速に普及している印刷方式がDTFプリントである。まず、転写用の特殊フィルムにプリンタで直接デザインを印刷し、次に、印刷したフィルムにホットメルトパウダーと呼ばれる粉をふりかけた後に熱を加えて乾燥させることで、フィルム上に転写可能なインクの層を形成する。そのインクの層を熱プレスによってTシャツなどの生地に転写させることで成果物が完成するというものだ。「転写可能なインクの層」を形成するため、綿だけでなく、ポリエステルやナイロン、これらが混在した素材に対しても同一手順で印刷でき、前処理なしでTシャツに必要なインク濃度で印刷できる。
ミマキが今回発売する「TxF150-75」は、このDTFプリントの転写シート作成に用いる最大印刷幅80センチのインクジェットプリンタ。「安心・安定のDTFプリンタ」をコンセプトに開発されたものである。同社初のDTFプリンタ上市について原田部長は、「DTFは、市場に出始めてからまだ4〜5年の技術。ようやく市場での様々な課題が洗い出された今がベストなタイミングと判断し、まさに『満を持して』の市場投入となった。現在DTFは、市場全体の普及率が少ないが、そのポテンシャルは非常に高い」と説明する。

3つの技術的優位性
市場における「TxF150-75」の優位性については、大きく分けて「安定稼働」「充実のサポート体制」「ECO PASSPORT認証インクによる安心・安全」の3点が挙げられる。
【安定稼働】
これまでのDTFプリンタで課題となっていた「インク吐出不良」に対し、安定稼働をサポートするMimakiの技術として、ノズル抜け検出機能「NCU(Nozzle Check Unit)」と、ノズル抜けを他のノズルで補う機能「NRS(Nozzle Recovery System)」を搭載。「NCU」は、ノズルの状態を赤外線センサーが自動で検知し、ノズル抜けを発見した場合は、自動でクリーニングを実施してノズル抜けの解消を行う。一方、「NRS」は、「NCU」が発見し、クリーニングでも改善できなかったノズル抜けを別のノズルで代替してプリントする機能だ。両機能により、ノズルに問題が発生した場合でも、サービスマンの修理を待つことなくプリントを再開でき、生産を継続できる。
また、空気に触れやすい状態にあるボトルインクなどでは、高速で稼働するプリントヘッドの中で気泡が発生し、ノズル抜けの原因となる。そこで「TxF150-75」では、インクの包装形態にアルミパック設計を取り入れ、工場から真空パックされたインクは、プリントヘッドで吐出されるまで一切空気に触れない「脱気インク設計」となっており、「インク吐出不良」のリスクを軽減している。
一方、「白インクの詰まり」の問題は、白インク中の色素密度が高いことから、インクパックやインキ供給経路で分離し、個体化することに起因する。そこで今回、白インクを定期的に循環させることで顔料の沈殿を効果的に抑制する機能「MCT(Mimaki Circulation Technology)」をさらに強化している。これまでは、インクカートリッジからプリントヘッドの手前のチューブまでを循環させていたが、「TxF150-75」では、プリントヘッドのダンパー内にある白インクまでを循環させ、より「白インクの詰まり」のリスクを軽減している。
【充実のサポート体制】
ユーザーの問題をすばやく解決し、顧客満足度をあげるため、地域密着型のサービスをコンセプトに国内16拠点でアフターサービスを実施。全国の約90名にもおよぶサービス担当者はすべて自社スタッフで、充実したサポート体制を完備している。「TxF150-75クラスのプリンタなら、全国の拠点のサービスマンが修理対応可能である」(原田部長)
【ECO PASSPORT認証インクによる安心・安全】
CMYKおよび白の5色で構成されたDTF専用の熱転写顔料インク「PHT50」は、繊維の安全性に関する国際規格「OEKO-TEX(エコテックス)」の取得に必須のECO PASSPORT認証を3月末に取得予定である。環境負荷を低減し、ユーザーの作業環境にも配慮されたプリンタである。「サイン&ディスプレイ分野などとは違い、人の肌に触れることが多いテキスタイルのシステムでは、インクの認証は重要なポイント」(原田部長)
全世界シェア30%目指す
DTFプリントは、従来の印刷方式で課題となっていた版の用意、カス取り作業を不要とし、印刷工程は無人運転が可能なため、省人化に貢献する技術として市場で急速に導入が進むことが予想されている。そこで同社がターゲットとするマーケットは、「DTGプリントの置き換え」だ。原田部長は、「スクリーン印刷からの技術移行は未知数だが、投資コストやビジネス用途としての生産性を考えれば、DTGプリントからの移行を積極的に訴求していく」との見解を語っている。
「TxF150-75」は、4月の販売開始を予定しており、本体価格は130万円(税別)。Tシャツをはじめとするウェアプリント用途を対象に、年間600台(全世界)の販売を見込んでいる。「全世界におけるDTFプリンタの過去5年間の導入台数は約1万1千台。1年あたり約2,000台として、その30%のシェアを目指したい」(原田部長)
なお、DTFプリント分野に向けて同社が提供する製品は、プリンタとインク、RIPソフトのみ。転写シートの作成に用いるフィルム、ホットメルトパウダー、パウダー塗布装置および後加工機、熱プレス転写機については、プリンタ販売時に同社の推奨仕様を提示した上で、販売代理店経由で提供されることになる。
