萬印堂、トヨテック製自動給紙カッティングプロッターを同人ボードゲーム試作・少量生産に活用
厚紙対応と自動搬送機能評価
ボードゲーム、カードゲーム製造の(株)萬印堂(本社/東京都千代田区外神田3-7-2ラティスデュオ末広3F、山口真司社長)は、2023年5月のオフィス移転と合わせ、トヨテック製の自動給紙カッティングプロッター「DG-4060 II Plus」を導入した。試作品ニーズへの対応と少量生産、リードタイムの短縮などが主な狙いだ。様々なカッティングプロッターを検証する中、2〜3mmの合紙にも対応し、自動搬送機能も搭載していることが決め手となった。山口社長は「本格稼働はこれからであるが、当社のやりたいことはできそうとの感触は掴めた」としており、同機の活用により、同人ボードゲームのさらなる市場拡大に貢献していく。

同社は1958年、東京都北区の東十条で創業した。もともとは伝票などの事務用印刷を主体としてきたが、先代の作道昌弘顧問がボードゲーム好きだったことからボードゲームの製造をはじめ、現在はボードゲーム、カードゲームの製造がほとんどを占める。そして特徴的なのは、大手のボードゲームメーカーが出しているような市販のボードゲームだけでなく、日本最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」に出展する個人やサークルをメイン顧客にしていることだ。
「『街コロ』などの市販のボードゲームも一部製造しているが、大半はゲームマーケットの出展者が考えた『同人ボードゲーム』の製造で、ゲームマーケットで即売する作品を作っている」(山口社長)
ボードゲームにはチップやボード、箱などが含まれており、一般の印刷通販では扱っていないことが多い。また、個人顧客が中心のため、50〜100部の小ロットとなり、一般の印刷会社に依頼すると割高になってしまう。その点、「当社はボードゲームの同人市場が拡大する初期の段階からこの分野でビジネスを展開しているため知名度も高く、多数の個人顧客から同じような仕様のボードゲームを一時期に集中的に発注してもらえるため、小ロットでも低価格での受注が可能になっている」と山口社長は話す。
また、同社ではさらに受注を増加するため、「早割キャンペーン」を展開している。「ゲームマーケット」は毎年2回、春が4月〜6月、冬が10月〜12月頃に開催されており、その2〜3ヵ月前に受注が集中してしまう。そこで「あまりにも直前の注文の場合、お断りしていることもあったのだが、当社としてももったいないし、お客様も困ってしまうので、ゲームマーケットの3〜4ヵ月前に発注していただける場合は割引させていただくことで、生産体制の平準化を図っている」(山口社長)
一方、同人だけでなく最近は「ゲーミフィケーション」として、企業の研修用ゲームとしてボードゲームの需要が増えているという。「欧米では昔からあるのだが、一方通行の座学ではつまらないので、ゲームをしながら参加者が勉強していくという手法である。そこにボードゲームやカードゲームを取り入れることで、コミュニケーションも取りやすくなるということで日本でも注目されてきている」(山口社長)。これについても、企業研修用のボードゲームは社内でしか使わないため小ロットが多く、通常の印刷会社では技術的にできても割高になるということで、同社に注文が集中しているようだ。
振動刃により2〜3mm厚の合紙のカッティングにも対応
同社ではこれまで、抜きについては協力会社に依頼し、「型」を製作してビク抜きで対応していた。このため、個人顧客には予算の関係から"注文する前に、一度実物を見てみたい"という「試作品」のニーズに対応できていなかった。これに対応するため、同社では以前から小ロット生産に対応するカッティングプロッターを探していたようだが、同社が求めていた2〜3mmの合紙にも対応し、さらに自動給紙も可能で少量生産に対応するカッティングプロッターはなかなか見つからなかったようだ。
そのような中、商社の新星コーポレィションから紹介されたのが、IGAS2022のトヨテックブースで紹介されていた自動給紙カッティングプロッター「DG-4060 II Plus」だ。その場で興味を持ち、さらにpage2023でもデモが実施されていた同機を検討。「当社が求めていた機能とマッチすることが確認できた」(山口社長)ことから導入を決定。今年5月下旬、東十条から現在の秋葉原の新オフィスへの移転とタイミングを合わせ、同機を導入した。
「厚みだけなら対応している機種もあるが、価格も高額でサイズも大きく、試作機としてオフィスに置くには不向きなものだった。DG-4060 II Plusは値段やサイズなども含めて当社のニーズに合致した」(山口社長)

そして、本稼働に向けて実際にトヨテックの技術研修を受けたところ、「カッティング精度についても、マーカーで読んでいるためカット位置も正確で、切り口もすごくきれいに仕上がる。当社でやりたいことはできそうとの感覚がある」と手応えを感じているようで、本稼働に向けて準備を進めているところだ。
また、「DG-4060 II Plus」にはハーフカットの機能も搭載されているため、「厚めのチップなど、木のパーツにシールを貼るような場合はハーフカットの機能を活用したい」(山口社長)ということだ。
秋葉原のアクセスの良さを活用してリアル店舗のサービスを検討
同社では、訪問営業という営業スタイルはとっておらず、ホームページからの注文がすべてである。このため、ホームページでいかにサービスの魅力を伝えられるかが集客に影響を与えることになる。このため、山口社長は「DG-4060 II Plus」の導入により、試作品ニーズにも対応できるようになったことをホームページでオープンにすることで、さらなる集客につなげていきたい考えだ。
「ホームページで仕様や価格を公開し、そこにお客様が入ってくる営業スタイルなので、試作でも実績や料金をオープンにすることで集客につなげていきたい」(山口社長)
また、同社の新オフィスは秋葉原という、「同人」のアイテムをアピールするには絶好のロケーションにある。このため、山口社長は個人顧客などに実際にオフィスにデータを持ち込んでもらい、より迅速に「同人ボードゲーム」を製造する構想を練っている。
「同人ボードゲームの市場は非常に伸びており、今年5月のゲームマーケットでは発注量もコロナ前の水準に回復した。早ければ1年以内にでも実店舗のサービスを展開したい。また、初めて同人ボードゲームを制作する初心者でもデータのやりとりという障壁をなくし、誰でも簡単にボードゲームを制作できる会社にしたい。将来的にはボードゲームの大手通販サイトのような存在を目指したい」(山口社長)
次回のゲームマーケットは今年12月。小ロットでも試作品製造が可能になり、そのスタイルにも慣れてきているはずである。「DG-4060 II Plus」を活用した新たな展開に注目したい。
