TOMY'S、「薄い」無線綴じを推奨〜特殊技術と糊で4頁、1mm以下も可能
「製本はスポーツみたいなもの。感覚を鍛えればその分、精度もスピードも向上する」。(有)TOMY'S(本社/東京都荒川区、富岡誠治社長)は、同社を知る人々から「日本一、体育会系の製本所」と呼ばれる企業。元・サッカーコーチの富岡社長は、「うちの社員は良く動く。全員がすべてのポジションをこなす。工場の設備は社員がポジションチェンジしやすいようにフォーメーションされ、最大のウリである『短納期』を実現している」。同社の業務は毎日が「試合」のようなものだ。
同社の創業は1962年。今年で60周年を迎える。2014年7月に社名を(有)新星社製本所から(有)TOMY'Sに変更。「業界仲間からは、『とても製本会社の名前とは思えない』と笑われた」。だが、この社名には富岡社長の強い思いが込められている。
富岡社長が同社に入社したのは30年前、22歳の頃。務めていた印刷会社が倒産し、メーカーの紹介で面接に行った。そこで当時の社長から言われたのが、「10年頑張って、次の社長をやってみないか」という言葉。同族でないにもかかわらず、入社前から次の社長候補として見込まれていたわけである。
その期待に応えるためにも、「先代が築いた会社を引き継ぎ、仲間たちと必死に技術を磨いてきた。この技術というバトンを、さらに次の世代に渡していきたい」(富岡社長)。印刷会社から信頼される製本所であり続けるため、日々、技術向上と納期短縮に努力している。
同社に仕事を依頼しているある企業は、同社の仕事ぶりをサッカーに例え、「的確なパスを出してくれるため、こっちも良いシュートを決めることができる」と評価している。
判断力とスピード、チームワークで「短納期」を実現
同社では、毎日の予定を綿密に組んで共有。全員が一日の業務の流れを掴み、手があいたときにどこを手伝えば良いかを各自で判断する。富岡社長は「チームワークで仕事をしている小さな会社のため、全員がすべてのポジションをこなせるようにしている」と、短納期を実現している秘訣を明かす。また、「社内ワンストップ」を徹底していることも短納期の要因の1つだ。
さらに、同社は「薄い無線綴じ」「薄いアジロ綴じ」を得意技術としており、TOMY'Sオススメの製本方式として推奨している。本文4頁、1mm以下の製本も可能である。
「製本の強度は、糊の量で決まるわけではない。適切な場所に最適な量を塗布することで、しっかりと製本することができる。当社では、本の背中が低くても最適な糊の塗布量と位置、温度調整が可能な技術により、1mm以下など薄い無線綴じやアジロ綴じに対応している」(富岡社長)
そして、このような特殊な製本でも短納期が可能で、3〜4万のロットでも「1、2日で製本が可能」(富岡社長)。ノベルティ用の塗り絵などにも、針金を使わないため子供にも安全だと需要があるという。
平成26年に「紙粉リサイクルプロジェクト」でGP認定
無線綴じのミーリングで大量に発生する「紙粉」。これは、紙の繊維がバラバラになっているためリサイクルすることができず、同社でも「燃えるゴミ」として処理するしかなかった。
そのような中、ある建築資材の企業から、同社に声がかかった。コンクリートに「紙粉」を混ぜると、ローコストでコンクリートの強度が増すというのである。同社はこれを「紙粉リサイクルプロジェクト」として活動を開始。環境に配慮した取り組みであることが評価され、日本印刷産業連合会の平成26年度、「GP工場」として認定された。「燃えるゴミに出すのに、毎月1万円程度かかっていたため、結果的にコスト削減にも結び付いた」(富岡社長)
朝、「試合」が始まり、ハーフタイムの昼食後には、「昼寝しないともたない」(富岡社長)。業務終了のホイッスルが鳴るまで、社員はポジションチェンジを繰り返しながら動きに動く。これが「日本一、体育会系の製本会社」と呼ばれる理由である。自動化、デジタル化を売りにする企業が多い中、このような「体力」を強みとする企業があってもいい。今後の活躍に期待したい。