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大和出版印刷、自社ブランド「神戸派計画」開発

神戸らしさをカタチに

 「神戸派計画」は、大和出版印刷(株)(本社/神戸市東灘区、武部健也社長)が2011年に立ち上げたステーショナリーブランド。コンセプトは「シュッとしていてユニセックスなデザイン」。男女の隔たりなく使えるのが神戸らしいものだという。これまでに開発したラインアップは30シリーズ。「神戸」と「書く」をテーマに、デザイナーやクリエイターの想像力と、印刷会社として培ってきた技術ノウハウを掛け合わせ、印刷会社ならではのアイテムを生み出している。

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全50色のカラーバリエーションで展開する「iiro」


万年筆愛好家を満足させる専用ノート「GRAPHILO」

 「神戸派計画」のデビュー作となったのは、万年筆専用ノート「GRAPHILO(グラフィーロ)」。製紙メーカーと共同開発したというこのアイテムは、万年筆愛好家の「書き心地」へのこだわりを満たした製品となっている。

 「GRAPHILOに書くとペン先の滑りが良く、また、水性インクの発色も良くなる。乾きは悪くなるが、輪郭は滲み過ぎない。平滑性を高めつつ、水性インキが紙にしみ込むぎりぎりのラインの紙を開発した」(武部社長)

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万年筆専用ノート「GRAPHILO」を手に武部社長


 万年筆愛好家には、すらすらと書きたい人、かりかりと書きたい人、ぬらぬらと書きたい人がいるらしいが、自身も万年筆愛好家という武部社長は「グラフィーロは『万年筆ぬらぬら派』と名付けており、ぬらぬらと書きたい人にぴったり」。ちなみに、武部社長は「もちろんぬらぬら」派ということだ。

 また、GRAPHILOは万年筆での書き心地が良いという紙質だけでなく、印刷、製本して製造するノートとして、印刷会社のアイデアと技術が隠されている。罫線のタイプはノートの罫線に白インクを使用しており、「書くときは水平に書くためのガイドラインになり、読む目には罫線は見えにくいため、文字が読みやすい」(武部社長)。

 また、「印刷屋なら不思議に思うはず」(武部社長)というのが、GRAPHILOの一部に採用している本文188頁のタイプだ。

 「通常なら折丁16頁の倍数になる192頁となるところを188頁としている。見返しと次の頁を貼り合わせることで、全ての頁を開きやすくした」(武部社長)

 なお、GRAPHILOには、無地/方眼/罫線/白インクのタイプが用意されている。

 万年筆愛好家の武部社長によると、デジタル化が進む中、若年層を中心に、多くの人が筆記具で文字を書かなくなっているという。その一方、万年筆愛好家は「書く」ことにこだわる人が多いため、相対的に万年筆ユーザーは増えているようだ。

 「私は経営者である一方、今年で関西学院大学の4回生になるが、大学の授業でも、パソコンとともに万年筆を使用している」(武部社長)

 万年筆は、書くスピードや手軽さなどではボールペンなどの筆記具に劣るイメージもあるが、万年筆で書かれた文字には温かみがあり、書いた人の思いを感じられるのは確かだ。そして、万年筆は単なる「筆記具」ではなく、万年筆愛好家にしか分からないペットのような愛着もあるのかも知れない。武部社長も「私は30本以上の万年筆を持っているが、万年筆を眺めながらお酒を飲むのがたまらない」と話す。

 そして、そんな万年筆愛好家の心をくすぐるアイテムとして生まれたのが、ISOT2015で日本文具大賞・機能部門グランプリに輝いた、万年筆のペン先を拭き取る吸取り紙「SUITO(スイト)クリーニングペーパー」である。

 「印刷すらしていない。万年筆のペン先を拭き取りやすいようにカッティングしただけのアイテム。しかし、万年筆ユーザーの中には、ペン先を拭き取る所作にまでこだわる愛好家も多い。その心を掴んだことが、グランプリに選ばれた理由なのかも知れない」(武部社長)

 「せっかくのお気に入りの万年筆をティッシュペーパーなどで拭き取りたくない」。そんな「万年筆ぴかぴか派」の心を掴むSUITOクリーニングペーパーは、ノベルティー用として大手メーカーが採用するほどであるという。

50種類の豊富な色彩を楽しむロングセラーの「iiro」

 また、「神戸派計画」のロングセラーとして紹介したいのが、色彩を楽しむノート「iiro(イイロ)」だ。カラーバリエーションは全50種類で、表紙の柄はラインとドットの2種類がある。中面頁の罫線は表紙と同じ色を使用しているのが特徴だ。

 どの色を男性が使っても、女性が使っても、不思議と不自然感がなさそうで、iiroを見れば「神戸派計画」がコンセプトとする「シュッとしていてユニセックスなデザイン」とは何かということが分かりやすそうだ。

 「ユニセックスなデザインにより、男性が赤のドットを使用していても、女性が青のラインのノートを使用していても不自然さはないはず。PUR製本で開きも良く、雑記帳として会社員から学生まで、幅広く使用されている」(武部社長)

 iiroを見て、ノベルティやOEMで作って欲しいというクライアントも多いようで、武部社長は「2011年に立ち上げたが、ここ2〜3年で、ようやく東京の文具業界からも認知されてきた」と話す。同社は「神戸派計画」のアイテムだけでなく、デザイナーやクリエイター、個人工房などとコラボした様々なアイテムを東京・表参道の「神戸派商店」(要予約)とオンラインショップ(https://fromkobe.jp)にて販売するほか、「神戸派工場」では、これらのOEMやノベルティのニーズに応えている。

 「ものづくりにこだわりのある人たちとコラボしながら、印刷業者として今後も『良いもの』を開発していきたい。誰もが納得できる、世界一高価で、価値の高いノートを作るのが夢である」(武部社長)

 神戸らしく、格式の高いブランドを目指す「神戸派計画」。今後の新商品開発に期待したい。

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