国府印刷社、社内有志で「企画部」設立〜新商品開発で新規取引先拡大に成果
(株)国府印刷社(本社/福井県越前市、有定耕平社長)は2020年7月、コロナ禍で激減した受注をカバーするため、社内から有志を募り、「企画部」を設立した。各部門の代表1名ずつで構成された企画部のメンバーは7名。週1回、社外アドバイザーも交えて企画会議を行いながらPDCAを繰り返してきた結果、実績につながる数々の新商品開発に成功した。有定社長は「2020年は売上は減少したが、多くの新規取引先を獲得できた」と企画部設立の成果について話しており、2021年は新商品の販売拡大に注力するとともに、さらなる新商品開発に努力していく考えだ。
「企画部のミッションはシンプル。クライアントや消費者に手に取ってもらい、喜んでもらえる商品、サービスを企画すること」(有定社長)

同社は昨年、大口受注先である旅行関係の印刷物が新型コロナウイルスの影響で激減。これまで、新商品の企画などはあまり積極的ではなかった同社だが、「新しいことに挑戦していかざるを得ない状況になった」(有定社長)。そこで全社員に新商品の発案を求めた結果、複数人から発案があったのが一時的なマスクの保管としての「マスクケース」。これが初の企画商品となった。
そして7月、本格的に新たな商品・サービスの企画に取り組むため、「企画部」を設立。また、社外アドバイザー(楽通の田村社長)からの提案によりDTP制作部・印刷部・製本部・営業部・総務部・東京DTP制作部の各部門から立候補、または選出し、そして鳥居寛智工場長を「社長」とする企画部がスタートした。
ちなみに、企画部の「社長」は工場長の役職で決定したのではなく「くじ引きで決まった」と鳥居工場長。有定社長は「クライアントの笑顔をゴールに企画提案することはもちろんであるが、『企画する中で、自分たちが楽しむことを忘れずに取り組む』ことを目指している」と話す。
新商品を世の中に出すことを使命に
「企画部」のメンバーは、新商品を世の中に送り出したいとの情熱を持つ社内有志。それぞれが、新たな商品を生み出したいという使命感を持って企画に取り組んでいる。企画部のメンバーにそれぞれの思いを語ってもらった。

DTP制作部の小林さんは「普段はパソコンと向き合っているだけの業務なので、意見交換しながら新商品を企画するのは楽しそうと思いました。紙を使用したボードゲームのような商品を企画したいです」。製本部の漆崎さんは「自分で企画した商品が世の中に出るのは楽しそうだと思いました。製本の知識があるので、このデザインだと後工程で不具合が出るなどのアドバイスができるのが強みだと思います」と役割をアピール。カラフルな紙を使った商品を企画したいという。
また、総務部の坂下さんは「企画部の中では話をまとめたり、進行を管理する役になっています。100均で販売しているような、安くて便利な文具用品を企画したいです」。印刷部の田野中氏は「企画部では新たに、和ごころとは別の使い捨てマスクケースも作ってみて、自分でも新商品を企画してみたいと思った。コロナ後も活用できる商品を考えてみたい。」東京DTP制作部の伊東氏は「昨年に発表した、色こより綴じのポケットパンフレットを世の中に広めていきたい」。
企画部の「社長」である鳥居工場長は「日常の業務では見られない積極的な一面を見ることもある。企画部の設立でメンバーが成長したことを実感している。さらなる新商品を企画するとともに、今ある商品のさらなる販売拡大に努力したい」。
次に、「企画部」で開発した新商品の一部を紹介する。
既存印刷物の素材を二次活用する「動画で再甦」
コロナ禍の昨今は、直接、打ち合わせもできないことが多いためチラシやパンフレットを新しく作成するのは難しい。そのような中、東京DTP制作部のメンバーが発案したのが、既存のチラシやパンフレットの素材を活用して動画を作成する「動画で再甦サービス」だ。
東京DTP制作部の伊東氏は、採用の経緯について「もともとあるチラシなどのデータを二次活用すれば、販促効果の高い動画を手軽かつ安価に作成できると考えた」と話す。動画は30秒〜2分程度で、価格は5万円〜15万円。3日〜2週間程度で作成できる。
「この案は企画部内でも『面白いね』と賛同を得て、1ヵ月ほどで形になった。すでに数件の実績が出ている。現在、本社のDTP制作部でも動画を作成できるようにスキルを磨いている」(有定社長)
もともとある印刷物の素材を活用できるという同サービスは、既存顧客だけでなく、新規取引先の拡大にもつながっているようだ。
長期使用できる抗菌マスクケース「和ごころ」
「和ごころ」は、使い捨てでなく、繰り返し使用することを想定した抗菌マスクケース。越前和紙に厚紙を貼り合わせる合紙加工を施すことで形を保ち、内側に抗菌加工を施すことで、清潔に長く使用できる。衛生面に優れるだけでなく、地元の福井県もアピールできる商品であることが特徴だ。
個人での利用はもちろん、企業のノベルティとしての利用、ロゴや名入れなどを施し、オリジナルマスクケースとしての引き合いも多く、管理運営を担当している企画部メンバーの総務部・坂下さんは「いろんな媒体で広告を出してきた結果が出てきています。結婚式のノベルティや、企業の周年行事の記念品向けなどに、大ロットの受注も出てきています」と説明する。現在、同社を代表する人気商品となっている。
色こより綴じによる「ポケットパンフレット」
「ポケットパンフレット」は、名刺交換の時に手軽に渡せる名刺サイズのパンフレット。綴じ方は、糸でも針金でもない新しい中綴じ「色こより綴じ」。和紙をこより状にひねり糊で固めた「水引」で製本するため、環境、安全性にも優れている。有定社長の発案による企画商品だ。
「小さな会社案内として、名刺とともに渡すことでビジネスツールにもなる。キャラクターのノベルティ、お菓子の説明書、子供用のおもちゃの説明書など、用途の可能性は大きい。色は全7色あり、デザイン性にも優れている」(有定社長)
◇ ◇
有定社長は今後の展開として「アフターコロナを見据え、世の中に必要とされるものを作り出せるようスキルアップしていきたい。常に新しいことにチャレンジする姿勢が大切だと考えるようになった」と話す。コロナ禍で否応なしに取り組んだ企画部の設立は、逆に企業姿勢に良い影響を与えたのかも知れない。「企画部」のチームワークで生み出される次の新商品に期待したい。
