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ナショナル製本協同組合、圧倒的な「価格差」で決断〜PSC 製本管理システム「綴之助」導入

10年以上使用のシステムから切り替え

 ナショナル製本協同組合(東京都板橋区、藤本繁幸代表理事)は、主に出版社や大手印刷会社などを取引先に、実用書や小説、コミックの製本から発送までを一貫生産している。同協組は今年1月、10年以上使用してきた基幹業務システムをピー・エス・シー(株)の製本管理システム「綴之助」に切り替えた。切り替えた当初の理由は「圧倒的な価格差」であったが、運用を行っていく中、実務面でも様々なメリットが見えてきているようだ。


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青木 専務理事

 ナショナル製本協同組合は昭和42年8月、10社が集まり協同組合としてスタートした。現在の組合員は5社。組合員各社ではなく、ナショナル製本で集約して仕事を受注しており、青木久光専務理事は「実態としては協業組合に近いと思います」。これにより、生産性と効率化を高めている。

 保有設備は、並製本が5ライン、上製本は1ラインだ。生産キャパとしては並製本300万冊、上製本45万冊が可能だが、「並製本は多い時で月産280万冊ほどの受注がありますが、上製本は年々少なくなっていますね」と青木専務理事は昨今の厳しい現状を説明する。

「不良は内部で食い止める」。検査体制に自信

 ナショナル製本の第1の強み。それは人の目による検査に加えて、充実した検査システムによる徹底した「品質管理」にある。全ラインに乱丁検査装置を搭載しているほか、トライオート(製本カバー掛け機)の不良検知機も補助的に活用している。オペレーターによる目視検品は並製本なら200〜300冊に1冊、上製本なら50〜100冊に1冊の頻度で抜き取り検品を行っている。

 「この検品体制により、万が一不良が見つかった場合、前後の範囲が限定されるため、検品を行う際にも不良本を追いかけ易く、不良の外部流出も減少しました」(青木専務理事)

 「不良本は表に出さない。読者の手に渡る前に、内部で食い止める」。これがナショナル製本の品質管理のモットーである。

 また、生産キャパを超えるような急な受注にも柔軟に対応し、納期を絶対に崩さないことも強みとしており、これをプロとしての誇りとしている。

 「常用は62名ですが、多少の生産キャパを超えた場合は派遣社員等を動員して柔軟に対応しています。特に並製本は予備を含めて5ラインあるので、受注状況に合わせて柔軟に対応しています」(青木専務理事)

見た目にも分かりやすい「五感」に訴える操作画面が魅力

 さて、そんなナショナル製本では10年以上にわたり、某大手メーカーの基幹業務システムを使用していた。取り扱いには何ら問題はなかったようだが、「ただ1つ大きな問題がありました」と青木専務理事。Windowsがバージョンアップするたびにソフトを作り直す必要があったようで、その度に1,000万円ほどの費用が掛かっていたということである。そしてWindow10になった時、4,000万円かかると言われ、これが10年以上使用してきた基幹業務システムを見直す契機となった。

 「さすがに非生産設備に費用が掛かり過ぎると思い、前々から気になっていたピー・エス・シーさんに相談したところ、1,000万円程度で同等の機能のシステムを提供できると聞き、切り替えを決断しました」(青木専務理事)

 製本管理システム「綴之助」に切り替える際に依頼した機能は、受注管理から工程管理、作業指示、販売管理など基本的には従来システムと同等のもの。しかし運用を進めていくにあたり、使い勝手など、その他の面でも様々なメリットが見えてきているという。

 「さすが印刷・製本業界に特化しているからなのか、『綴之助』に使用されているフォントは以前のシステムと比べて見やすく、『五感』に訴えるというか、作業ストレスの軽減につながっていると現場からは聞いています。また、使用している用語なども簡単な言葉であるため、初めての使用でも分かりやすく、デジタルのシステムながら、良い意味で、どこかアナログ的な要素を残しているシステムであると感じています」(青木専務理事)

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「書体が見やすく、用語も分かりやすい」と事務スタッフ

 また、「綴之助」は従来のシステムと違い、Windowsのバージョンがアップしても費用が掛からないことも魅力的であるという。

 「将来的には損益計算書の作成など、財務面も含めたシステムにしてもらいたいとピー・エス・シーさんに相談しています。経理担当者も、基幹業務システムとして、すべてを任せたいと言っており、使用している現場の評価は非常に高いと思います」(青木専務理事)

メーカーサポートも高く評価

 現在、「綴之助」と連携しているパソコンは19台。このうち、総務、営業、生産管理で使用している9台が入力可能になっているが、これらはいずれも社内LANのみでつながっており、インターネット回線にはつながっていないという。

 「コンピューターのウイルス対策には100パーセントはあり得ません。従って、弊社はメインサーバーをインターネットには接続していません。このため、プログラムの修正時にはリモートで修正してもらうことはできなかったのですが、以前のシステムからの移行に期間がかかったにもかかわらず、ピー・エス・シーさんは嫌な顔1つせず、毎回、会社に来て対応してくれて、非常に感謝しています」(青木専務理事)

 今後の目標について青木専務理事は、これまで通り「品質管理」を徹底していくとともに、サービス面をさらに強化していく姿勢を示す。

 「昨今は製本だけでなく、発送まで含めた仕事も増えており、製本もサービス業に近いと感じることが多くなっています。従来はなかった仕事にもうまく対応しながら、新たな時代の製本業へと少しづつ変革を遂げ、生き残りを図っていきたいです」(青木専務理事)

 コロナ禍による巣ごもり需要なども手伝い、出版市場は一部回復もみられるようだ。厳しい現状の中、さらなる飛躍に向けて奮闘する同協組の躍進を期待したい。

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