FFGS、「真のトータルソリューション実現」を目指して
Hohner社製中綴じ機:日本仕様標準機への改良完了
「改善」「お客様貢献」で高まる存在価値
Hohner社製中綴じ機3モデルの国内独占販売をきっかけに「本気のポストプレスソリューション」を本格化させる富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(辻重紀社長、以下「FFGS」)。昨年は、国内ユーザーの要望を取り入れた「日本仕様標準機」への改良を終え、このコロナ禍でもこれらHohner機への関心は高まっている。今回、同社が「中核事業」と位置付けるポストプレスソリューションの拡充を加速させる背景と、「改善提案」を主眼に置く具体的なソリューション展開について、デジタルソリューション営業部の鈴木崇之課長に話を聞いた。

ポストプレスは「中核事業」
ワークフローなどのソフトウェアをはじめ、印刷関連機器、材料、デジタル印刷機など、印刷業界向けに幅広い開発・マーケティング・販売・技術サービスを展開するFFGSが、ポストプレス分野のソリューションを強化する背景には、「お客様に対する真のトータルソリューション実現」を目指す同社の絶対的な方針がある。
ポストプレスソリューションの専門部署「デジタルソリューション営業部」がポストプレスに本格的に取り組み始めたのは8年前。それまでの同社のポストプレス事業は、「これが欲しい」というユーザーの要望があってはじめて初動を起こす「受け身」の商売だったという。同営業部の鈴木崇之課長は「FFGSのトータルソリューションを構築する上で、最も難易度が高く、かつ重要だと認識していたのがポストプレス分野だった。当社が目指す『真のトータルソリューション実現』に向けて、主体性を持った同分野の事業強化は必然だった」と振り返る。いまやポストプレス分野は同社の「中核事業」と位置付けられている。

コロナ禍で全世界のあらゆるマーケットが疲弊するなか、「改善ソリューション」に徹することで、ポストプレスソリューションにおける存在価値を高め、多くの実績と信頼を得てきた同社に対する海外メーカーからの期待値も高まっている。とくに最近ではHohner機の国内導入が増えていることもあり、「FFGSに当社の製品を日本で売って欲しい」という海外メーカーからのオファーが増えている。いずれにしても、これらのパートナーシップも含め、ユーザーの仕事内容や課題に合わせ、国内・海外メーカーとのアライアンスによる後加工機器のスポット的な提供や導入サポートの事業は今まで通り行っていくことに加え、「専売権」を持つ製品の提案も積極的に進めていく方針だ。「専売権を持つ製品は自社製品と同等の扱いで、愛情を注ぎ込めることから、お客様の困り事に対して、製品・サービスともに自信を持って提案を行っていく」(鈴木課長)
それだけにメンテナンスやアフターサービス体制は重要となる。同社では、機器のメンテナンス・保守サポートを担うグループ会社「富士フイルムGSテクノ」においてポストプレス分野を一層強化していく方針を打ち出している。鈴木課長は「とくに海外メーカーの製品を扱うにあたってアフターサービスは重要になる。富士フイルムGSテクノは、その分野においてプロの集団。高いレベルでサービスを提供できる」と自信をうかがわせる。
「1台数役」のHohner新機種リリース予定
「FFGSでしか販売できない機械」として最初の製品となったのは、Hohner社製後加工機である。2019年から独占販売に乗り出し、現在、デジタルプレスにも対応し、折機とインライン接続のハイブリッドモデル「HSBFS9」、セミオートタイプのスタンダードモデル「HSB9000」、上位機種のフルオートモデル「HSB13000」の3モデルの国内展開を本格化させている。
とくに昨年、国内ユーザーの要望を取り入れ、徹底した「日本仕様標準機」への改良を終えたことから、このコロナ禍でもこれらHohner機への関心は高まっているという。具体的には、薄紙の折丁に対する中綴じフィーダーの構造改良や、薄紙搬送する上での対応治具の新規設置・改良、さらに大型機に標準装備されているエアーカーテンを中型機のHSB9000にも標準装備するなど、とくに海外にはあまりない薄紙への対応改善が施されており、これらに関しては国内ユーザー3社でも改良を完了し、現在稼働している。

主力であるHSB9000導入のトリガーとなっているのは、小ロット化が進む中で老朽化した大型機のリプレイスをはじめ、外注に頼っていた大中ロットの仕事を内製化することで、社内の加工高を上げたいというものだ。機種選択においては、「価格設定」や「短いセット替え時間」などがあるが、中綴じ機の選択肢が狭まる中で、「メンテナンス体制の拡充」、あるいは「印刷工程のトータルサポート」といったFFGSへの「安心感」も大きく作用しているようだ。
一方、来年には現行の3モデルに加え、新機種がリリースされる予定だという。HSB9000はコストパフォーマンスに優れた中型機だが、市場では大型機の持つ機能と比較されることも多い。そこでHohner社側でも大型機の標準機能をHSB9000に搭載するなど、柔軟な仕様設計で高い評価を得ている。
今回の新機種は、簡単に言うと「1台数役」の中綴じ機。オフセット印刷やデジタル印刷のバリアブル、またはオフセットとデジタルの合本、さらに折りながら中綴じするなど、機械をモジュール化することで様々なソリューションをカバーできるハイブリッドマシンとなる。「これはワールドワイドの要望から生まれたものだが、国内でも関心は高まることが予想される。デジタル印刷の後加工機は専用機になっていることが多い。これを汎用機にすることで機械の稼働率を上げるというコンセプトである」(鈴木課長)
FFGSとHohner社の両社は、今後もパートナーシップを強化していく方針で、Hohner社側もコロナ禍で販売に苦戦する中、日本市場に対する期待は高い。今後は共催による販促イベントなども企画していく考えだ。
「スマートファクトリー構想」において高まるFFGSへの期待
前記のスポットビジネスにおいて、おもしろい事例がある。カバー掛けを人海戦術で行っていた会社に対して、その仕事が継続的な受注もあったことからFFGSが工程の機械化を提案。(株)西岡製作所(東京都千代田区)の製本機「トライオート」を勧めた。そんな中、下取りする中古機があることを聞き、オーバーホールでの導入を提案し、採用に至ったケースだ。
「我々が介さずユーザー自らが機械化に踏み切ったならば新台購入という選択肢しかなかったかもしれない。当社が西岡製作所と相談し、ユーザーの予算に応じたオーバーホール機を提案。もともと顧客第一主義だった西岡製作所にも同意を得たかたちで納入していただいた。当社がユーザーとメーカーの間でしっかりディレクションした結果、成し得た事例である。顧客から課題を聞いてアクションを起こすことはどこでもできる。こちらから課題を定義し、顧客に納得いただいた上でFFGSの総合力でフォローしていく。これは当社にしかできないと自負している」(鈴木課長)
一方、業界が標榜する「スマートファクトリー構想」において、印刷工程全体をカバーする製品ポートフォリオを持つ同社への期待は高い。ただ鈴木課長は、ポストプレス工程までを網羅したスマートファクトリー構築の難しさと、市場の状況に応じた柔軟な考え方の必要性も訴えている。
「当然、富士ゼロックスの工程管理ワークフロー『Production Cockpit』で見える化を促進し、効率改善に取り組むことは有用であるが、一方で現状ではオフラインによる後加工の方が効率的なケースも見受けられる。何より、同分野では多くの場合、新旧含めた設備が混在している。ワークフロー連携できる機種、できない機種が混在した状況は今後も続くと思われる。その中でも、自動化による部分最適を前提とした設備投資を目指す方向性はある。工場全体でのスマートファクトリー化はその先にあるのではないだろうか」(鈴木課長)
「機械売りではなく、改善、ソリューション達成のための設備投資を促し、提案する」というポリシーで、その「本気度」を示しているFFGSのポストプレスソリューション。最近では「製本工場を立ち上げたい」「品質を向上させたい」「省人化・省力化したい」「市場の課題を教えて欲しい」など、ユーザーは、「この機械が欲しい」ではなく、その先にあるポストプレ工程の効率化や改善を試行錯誤する中で、FFGSへのオファーは増えている。「このような相談に対するソリューションは当社が最も得意とするところ。今後も人員などを含め、体制を整備・強化していく方針である」(鈴木課長)
