田中紙工、「カード加工」で業界に貢献〜年間10億枚以上、60年以上の実績
(株)田中紙工(本社/東京都板橋区、田中真文社長)は、トランプやカルタ、トレーディングカードなどの加工を得意とする「裁ち屋」として長年にわたり信頼を積み上げながら企業ブランドを構築してきた。そして今や年間のカード加工枚数は10億枚以上。「カード加工の田中紙工」は十分に周知されていると思われるが、「まだまだ周知されていない」と田中社長。今後もさらなる周知に努めながら、カード加工で印刷業界に貢献していく考えだ。

「1本の紙の毛を縦に断裁できます」。裁ち屋として60年の歴史を持つ同社のキャッチフレーズである。同社はその高度な断裁技術により、コンマ5ミリのズレでもヤレといわれるカード加工の世界で受注を伸ばしてきた。田中社長は「カード加工を経験の少ない企業に発注するのは非常にリスクが高い」と警鐘を鳴らす。
その点、同社はカード加工を得意とする裁ち屋として、トランプやカルタ、トレーディングカードなどを中心に、この20年間は毎年、年間10億枚以上を加工してきており、申し分ないキャリアと折り紙付きの技術ノウハウを持っている。過去にはISOT、ここ数年はpageに毎年出展しており、すでに印刷・関連業界では「カード加工の田中紙工」の企業ブランドは十分に周知されていると田中社長自身も思っていたようだ。
しかし昨年、その認識を覆す出来事が起こった。創業時から60年近い付き合いのある印刷会社の工務が、あるカード加工の見積もりを別の企業に依頼したのだという。
「2018年にM&Aしたグループの印刷会社の昇文堂に、たまたま見積もり依頼が入った折に、田中紙工で行う後加工まで含めた見積もりを行ったが、その印刷会社が後加工のみの見積もりが欲しいと昇文堂に打診をしてきた。従来から昇文堂はカード印刷を行い、当社はその後工程であるカード加工のみを行ってきたが、その印刷会社の工務は、長年付き合いのある田中紙工がカードの加工を得意としていることを知らなかったことを大変驚いたと同時に、カード加工を得意とする田中紙工の名が、まだまだ周知されていないことを感じた」(田中社長)
つまり、その印刷会社の工務は、カードの発注に不慣れで、田中紙工がカード加工を得意とする企業であることを知らなかったということになる。このため、田中社長は「まだまだ周知しきれていないことを痛感した」として、改めて「カード加工の田中紙工」を業界に周知させていきたい考えを示している。
印刷会社に「カード面付け」のレクチャー開始
同社は2021年より、印刷会社の営業や工務の社員に向けて「カード面付け」のレクチャーを開始した。これにより、印刷会社の営業力強化に貢献していく。
「カードの面付けは非常に複雑であるため、後加工の知識や配慮なく面付けすると加工賃も高くなり、また納期にも影響が出てしまう。印刷会社の営業や工務の方にこれをレクチャーすることにより、カード関係の営業に競争力を持っていただきたい」(田中社長)
同社のクライアントである印刷会社は400社以上はあるようだが、まずは受注頻度の高い顧客から、Zoomなどのオンラインも活用しながら順次レクチャーを進めていく。また、面付けレクチャーだけでなく、カード加工を発注する場合の注意点など、問題点を事前に想定した「予防保全」のアドバイスにより、顧客のカード営業を後押ししていく考えだ。
「この業界は下手をすれば『大名商売』とも言われかねない。そうならないように、当社では『実直な商売』を心掛けている」(田中社長)

士気向上のための様々な取り組みを実施
同社の経営方針は「社員第一」。その実直な商売により、コロナ禍においても経営は順調なようだが、その反面、従業員にとっては残業が多いなどのストレスも多いはずである。そのような中でも社員に頑張ってもらうため、同社では社員の士気向上のための様々な取り組みを行っている。
「毎年、忘年会のときにベストオペレーター賞、アシスト賞、努力賞、新人賞、精勤賞として、金一封とともに手渡している。昨年末はコロナで忘年会を実施することができなかったため、今年は年始に懇親会はなしで社内で新年会を行い、社長の所信表明とともに各賞を表彰した。また、昨年のコロナ禍における休業手当についても、法律では6割支給でいいのだが、当社は有給扱いで10割支給した」(田中社長)
また、一昨年からは毎月1回、感謝の気持ちを上司や先輩・後輩などに贈る「サンキューカード」の取り組みを実施。これを最も多くもらった人を表彰している。
さらに、板橋区の産業振興課の紹介により、人事評価制度を再構築するため、教材として中小企業診断士養成コースの東洋大学の社会人学生に作成を依頼。これが非常に役立っているようで、田中社長は「社内に『人事評価制度作成委員会』を編成した。社員のさらなる士気向上につながっている」と、これによる一層の技術・サービス力、提案力などのレベルアップに期待する。
同社にカードの後加工を依頼すれば、長年の技術ノウハウにより品質が保証されることはもちろん、印刷会社の利益につながる提案をしてくれそうである。
