中西印刷、「印刷を超えた印刷会社」へ 〜 XMLによるオンラインジャーナルを推進
印刷を通じて文化学術の発展に貢献する--。中西印刷(株)(本社/京都市上京区、中西秀彦社長)は、学会誌・学術印刷全般、査読編集、学会事務委託など、学術発展を支援する事業を展開してきた。昨今は、XMLによるオンラインジャーナルの推進など、先進的な活動に取り組み、創業156年の経験と最新技術で「印刷を超えた印刷会社」への変革に挑戦している。

同社の創業は慶應元年。木版印刷で開業した156年の歴史を持つ企業である。以降、時代の変化に対応した経営で戦時中も途切れることなく印刷業に専念してきた。
主に官庁印刷、出版印刷を手掛けてきたが、学者を目指していたという5代目・中西亨社長の時代から、現在の事業の要である学術関係の印刷を手掛けることに。子息の7代目・中西隆太郎会長は「父親の三兄弟は、兄弟揃って『京大』」。家業を継ぐことを条件に大学に行かせてもらったため、学者になる道は諦めたが、尊敬する教授とのつながりの中から、学会誌・学術書の印刷、査読編集、社内に学会事務所を置くなど、学術発展を支援する事業を展開した。現在、売上の9割以上をこの分野で占める。
そして日本のさらなる学術発展のため、平成8年より展開しているのが、学術誌をインターネット上で提供する「オンラインジャーナル」分野への進出だ。その後、平成11年にはイギリスのオックスフォード大学と提携してXMLを学び、日本で初めて和文のオンラインジャーナルを作ることに成功した。

教授の中には、PDFをインターネット上に掲載することをオンラインジャーナルと思っている人もいるようだが、中西会長は「PDFは紙を前提としたフォーマットであり、デバイスに向いていない」と指摘する。膨大な学術誌をオンラインジャーナルとするには「検索」の機能が不可欠で、それにはXMLが最適なフォーマットであるという。学術情報XML推進協議会の事務局長も務める中西社長は「PDFはあくまでも、印刷物を画面上で見るだけのもの。スマホでPDFは読みづらいが、XMLならデバイスごとに最適化し、写真も動画も貼ることができ、さらに最近はオープンデータの概念があり、実験の元となるデータに直接飛ぶこともできる」と、その優位性を強調する。最近は同協議会において「縦組み」のXMLの研究を進めているようだ。
ロケーションは「京都の霞ヶ関」。優秀な人材の確保で新時代に対応
同社が本社を構えるのは、京都府庁や京都府警本部の隣接地。いわゆるエリートと呼ばれる人々が行き交う場所で、中西会長は「いわば、京都の霞ヶ関」。このため、ロケーションだけの問題でないのは当然だが、同社には数多くの優秀な人材が入社してくるという。
「教授として生計を立てていけるのは一握りのエリートのみである。研究者としては見切りをつけ、教授の紹介で入社してくる学生もいるが、もともと優秀な人材であるため、当社の重要な戦力となってくれている」(中西会長)
大学との関わりからの優秀な人材の確保により、同社はXMLなど最先端技術で業界の先駆を走っているわけだが、大学との関わりによる、ある教授との出会いは、中西会長のその後のキャラクターにも大きな影響を与えることになる。
中西会長は、京都府印刷工業組合の前理事長であるが、理事長挨拶などで必ずお目に掛かるのが「ダジャレ」である。連発し、会場を笑わせるだけでなく、時には感心させたりもする。そのようなキャラクターのきっかけになったのが、30数年前に出会った京都大学のある助教授であったようだ。
「旅行、魚釣りなど仕事以外でも楽しくお付き合いしていたが、とにかくダジャレが大好きな先生で、その影響を大きく受けた。とにかくダジャレを飛ばし合い、先生がダジャレを言う前に、こう言ってはダメですよと潰しにかかる。先生に『先制』攻撃を掛けるわけである」(中西会長)
これにより、組合の理事長挨拶などでも、事前にネタを用意することもあるが、即興でダジャレがでるように鍛錬されたようである。
中西社長の新著「スマート老人の逆襲」発刊
中西社長は、処女作「活字が消えた日」を発行して以来、これまでに十数冊の著作があるが、昨年10月に新刊「スマート老人の逆襲」を発刊した。
「パソコンが世に出て40年。パソコン少年はパソコン中年となり、パソコン老年となった。若い頃からコンピュータと格闘してきただけに、スマホやタブレットの使いこなしもひと味違う。これからはITに長けた老人が先頭に経ち、IT社会を主導していくべきである」(中西社長)。年齢を言い訳にしてIT社会から逃げるべきではないと、老人を鼓舞する内容となっている。
中西社長はこの他、「印刷屋の若旦那コンピュータ奮闘記」「印刷はどこへ行くのか」「電子書籍は本の夢を見るか--本の未来と印刷の行方」など業界の動向を見据えた興味深い著書を数多く発刊している。
今後の展開について中西社長は「印刷を超えた印刷会社を目指していきたい」としており、XMLの推進をはじめ、最先端技術で変化の時代に対応し、生き残っていく姿勢を示している。
