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朝陽堂印刷、創業130年の技術力と信頼で飛躍

昨年に6代目社長が誕生〜「意志があれば道は通ずる」を経営理念に

​ 創業1892年─。朝陽堂印刷(株)(本社/京都市南区、髙橋洋平社長)は、来年創業130年を迎える老舗の印刷会社である。今年創始130年を迎える京印工組と同時期に誕生し、4代目の髙橋督治社長は平成12年〜17年の6年間にわたり理事長を務めるなど、同社と京印工組には深い縁を感じるものがある。昨年11月には髙橋東作社長(現会長)から6代目となる髙橋洋平社長に経営のバトンが継承された。大判印刷、特色印刷で独自性を打ち出すとともに、印刷の前後工程の強化で顧客を囲い込み、厳しい時代を乗り越えていく考えだ。


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髙橋会長(左)と髙橋社長

石版印刷所として「髙橋朝陽堂」創業

 朝陽堂印刷の正真正銘の前身である「髙橋朝陽堂」は、佐藤朝陽堂で修業を積んでいた初代・髙橋貞次郎氏が独立して創業。記録としては1892年の創業となっているが、髙橋会長は「実際には1891年以前に独立したようで、その証拠となる逸話が髙橋家には残されている」。貞次郎氏は日本に輸入されて間もない石版印刷を導入、最先端技術を扱う印刷業者の1人として印刷業界に華々しくデビューした。

​ 「髙橋朝陽堂は布地印刷も手掛けていたようで、当時、京都で一、二を争う木綿問屋とも深いつながりがあったことが、当時の記録から覗える。貞次郎氏は近代化を推進し、最新の印刷機械を次々に整備。時代と技術の進歩に敏感な特質を遺憾なく発揮し、髙橋朝陽堂の基盤を確固たるものにしていった」(髙橋会長)

 また、組合加入についても京印工組が100周年の際に発刊した「京都印刷1000年史」によると「大正6年1月の組合行事に私の曾祖父にあたる貞次郎が載っているため、それ以前に加入していたことになる」(髙橋会長)

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創業者の髙橋貞次郎氏

 転換期となったのは1952年。現在の朝陽堂印刷(株)として法人組織化した時である。1962年には2代目・久次郎氏の後を継いで清二氏が3代目社長となり、十条の新事務所・工場で事業を展開。1985年には手狭になった事務所・工場を取り壊して新社屋を建設。それにともない大規模な設備投資を行った。「広いスペースを必要とするオフセット輪転機を導入したのもこの時期である。ハード面だけでなく、ソフト面も充実させることで企画力のある提案型印刷企業を目指した」(髙橋会長)

 1994年には、4代目の督治氏が社長に就任。京都府印刷工業組合の理事長も務め、後に旭日雙光章も受章した人物である。2006年、5代目となる現在の東作会長が社長に就任。東作社長の時代に、JapanColor工場の認証取得や品質検査装置の導入など、品質保証への取り組みを加速させた。そして2020年11月、6代目の洋平社長が誕生。大手印刷会社での十数年のキャリアを活かし、家業のさらなる飛躍に向けての取り組みを開始している。

大判印刷、特殊印刷で独自性を発揮

 同社は、包装紙や地図などの大判印刷、特色印刷を特長とする印刷会社。戦後、すぐに四六全判オフセット印刷機を導入するなど意欲的な設備強化を進め、現在は包装紙や手提げ袋など、大判の特色印刷を広範囲で受注している。昭和40年代からはスーパーのチラシを手掛けるなど、制作から印刷までの企画主体の提案型印刷業へと脱皮。京都地区のフリーペーパー「ぱど」も創刊から15年が経過した。

 「A倍の印刷機を設備する印刷会社は京都でも希少な存在である。大判印刷機や特色インキ調色システムにより、価格でクライアントに貢献できることはもちろん、コーター付きの菊全4色機には数年前に品質検査装置を設置したことで、印刷物を『品質保証』できる体制も構築した」(髙橋社長)

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本社の社屋外観

 今後の戦略として髙橋社長は、印刷を「核」としながら、その前後工程にさらに注力していく考えを示す。

 「当社は企画、デザインから印刷、その後工程までワンストップサービスで提供できることを強みとしているが、これをさらに強化する。これによりクライアントを囲い込み、競合との差別化を図っていきたい」(髙橋社長)

 昨年に130年の歴史ある印刷会社の6代目に就任した髙橋社長は今年で40歳。「意志があれば道は通ずる」を経営理念に掲げ、従業員が意志を持って楽しく仕事に取り組んでもらえるよう、新社長に就任以降、営業・現場の社員1人1人との面談を実施している。

 「社員の『意志』を実現できるように、環境を整備しながら組織強化に努めていく。常に改善を続け、これによりクライアントに選んでもらえる印刷会社を目指していきたい」(髙橋社長)
 
 130年にわたり事業を継続できたことについて、髙橋会長は「これも偏に当社を選んでいただいたクライアントのお陰と感謝の気持ちでいっぱいである。今後、印刷会社として『何を残していくか』を考えながら進めていきたい」。京都の老舗印刷会社として、歴史に残る取り組みを進めていく考えだ。

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