コダックジャパン、オフとデジタルで印刷業界にコミット
ワールドワイドでコダックの事業全体の7〜8割を占める印刷関連事業。プレート、CTP機器、ワークフローを三位一体とするオフセット印刷事業と、「唯一無二」の尖った製品ポートフォリオを持つインクジェット事業を両輪として、2025年はより印刷業界へのコミットメントを強化していく。そこで今回、コダックジャパン・プリント事業部プリント営業本部の中川武志本部長と、同プリント事業部デジタルプリンティング営業本部の河原一郎本部長に、それぞれの分野における現状とソリューションについて語ってもらった。
ハイブリッドセールス強化
プリント事業部プリント営業本部 中川武志本部長
日本経済全体を俯瞰してみると、人材不足や物流問題、資材の高騰など、多くの課題が顕在化した1年だったと認識している。一方で、旺盛なインバウンド需要などによる明るい兆しも見え始め、印刷業界においても、とくに商業印刷分野は比較的堅調に推移したとみている。これはプレートの出荷量などでも見て取れる。
2024年の国内におけるプレート出荷量は、1年を通してみると前年比ほぼフラットだが、4月以降では前年比数パーセントのプラスに転じている。これは、前述のインバウンド需要や大阪・関西万博、あるいは選挙なども影響していると思われるが、決定的な要因は「わからない」といったところだろう。また、日本製紙連合会が調査・発表している紙・板紙需給速報によると、10月の印刷・情報用紙の出荷量が26ヵ月ぶりのプラスに転じた。それ以前も月々の減少幅は縮小傾向にあり、我々も少しずつ「底打ち感」を感じている。実際に当社の業績にもそれが反映されていると捉えているが、同時に新聞印刷分野や出版印刷分野では依然厳しい状況が続いており、印刷市場全体で見るとバラツキ感もある。
そんな中、我々の基本的なポートフォリオは、プレート、CTP機器、ワークフロー、デジタルプレスであり、これまでと変わらないが、昨年からとくにこれまで分断されていたプリプレス関連とデジタルプレス関連のセールスを組織として融合し、「ハイブリッドセールス」に切り換えている。
これは、drupa2024でコダック社が掲げた「オフセットとデジタルの共存」という重要なテーマに沿った取り組みで、そこには我々が「印刷業界にコミットする」というミッションにおいて、従来のソリューションとデジタルソリューション両方の完全なポートフォリオ全体にわたるイノベーションを実証していくという強い意志がある。これはワールドワイドにおいて段階的に進めている動きで、現在はとくにアジア地域で推進しており、昨年はこのコンセプトを実現しうる人材教育や組織体制を手掛けた1年でもあった。
また、drupa2024をきっかけに、お客様が海外のデジタル印刷事情に関心を寄せていることを感じている。とくに米国の情報や事例には敏感になっており、これに対して当社内では世界から情報が集まるイントラネットを構築しており、営業のケーススタディなども共有され、お客様には一歩先の情報を提供できる体制が整っている。結果として、オフセットとデジタル両方の理論武装を兼ね備えることで販路や営業アプローチの幅も広がっている。
分野別では、無処理プレート「SONORA XTRA」が堅調に推移し、コダックジャパンのプレート出荷全体の7割弱を占めるまでになっている。コダックCEOのジム・コンティネンザは「ラスト スタンディングマン」という言葉をよく使う。これは「プレートの最後のプレイヤーになる」という意味で、プレートの供給に関しては絶対的にコミットメントしていることがわかる。
SONORAは、環境配慮やコスト削減などのメリットがあるが、今年とくにクローズアップされたのは群馬工場の存在。地政学リスクやメーカーの市場撤退なども相まって、供給リスクへの関心度が非常に高まっている。我々は米国のメーカーながら、日々出荷されるプレート事業に関しては、日本の群馬県で技術開発し、製造している。これは物流面でCO2削減にも繋がり、プレート事業における群馬工場の存在は大きなアドバンテージだと考えている。
一方、一昨年8月に三菱王子紙販売(株)との協業を正式に発表した製版フィルム出力ソリューションは、当社に新たな市場をもたらしている。
現在、スクリーン印刷やフレキソ印刷、プリント基板製造などの分野では、製版用フィルムが使用されているケースが多くあり、近年ではイメージセッターの老朽化や部品供給の終了などが課題となっている。これに対し、同ソリューションは、コダックのプレートセッター「TRENDSETTER」で現像処理薬品を必要としないドライ方式の三菱製紙サーマルレーザーフィルム「TRF-IR830」を出力し、これらの課題を解決するもの。このチャレンジは、プレートセッターの販売に大きく寄与し、実績を積み上げることができた。
2025年は、トータルサプライヤーとして、まさに「ONE KODAK」を標榜し、お客様の課題解決やチャレンジをサポートすることで「経営パートナー」としての機能を強化していく。とくにウェビナー形式での情報発信の機会を増やしていく考えで、外資系メーカーとしての存在価値も高めていきたい。