多田紙工、初のGP工場認定を取得
TADクロスメディアは「GP普及準大賞」
(株)多田紙工(本社/埼玉県さいたま市、多田信社長)が新たな展開に乗り出した。同社の関連企業であるTADクロスメディア(株)はこれまで「2023年 GP普及大賞(製本・表面加工部門)」や「2024年 GP普及準大賞(同)」を受賞し、業界内外で高く評価されてきたが、今回は母体の多田紙工自身が「2024年 GP工場認定(オフセット部門)」を取得したのである。これにより、同社の環境保全への取り組みが一段と深まり、持続可能な社会への貢献がさらに明確になった。多田社長の「環境にやさしいものづくりは、私たちの未来への責務」という言葉に、その意義が凝縮されている。
同社は1971年、埼玉県川口市に裁ち・折りの企業として創業。「先代は、設備一本槍で業容を拡大してきた」(多田社長)とのことで、国内屈指の折、中綴じ、断裁の設備力と技術力で印刷業界をサポートしている。特に折機については、ミニ折からA倍、特殊折りまで幅広く対応しており、多田社長は「全てのメーカーを所有している」。多田社長は若い頃、折から仕事を覚えたようで、折の知識とノウハウには特に自信を持つ。「すべての折機メーカーについて、細部に至るまでの知識がある。折の『オタク』に近い」(多田社長)。
「en-courage協同組合」を設立。技能実習生を積極的に採用
現在の従業員はパートなどを含めると200名近くまで拡大。同社では技能実習生も数多く雇用している。多田社長は近年の人手不足の社会課題を解決するため、約8年前に外国人実習生の受け入れ事業等を通じ、真の国際貢献と中小企業の活力を高めるサポートを行う「en-courage協同組合」を設立、現在も代表理事を務める。取材時も「明日からスリランカまで技能実習生の面接に行くんですよ。この業界は力がいるので女性を雇用する企業は少ないが、女性の方が言語を覚えるのが早いので、女性を雇用する予定」(多田社長)。同社では「行動力で成果を出す」ことを経営目標に掲げているが、まさに多田社長が率先して新たな行動を起こしていっている。
同社が「環境」に本格的に取り組むきっかけとなったのは「針なし・糊なし・加熱なし」で副資材を一切使用しない「エコプレスバインダー」の導入である。「歯型」の圧着のみで製本を実現する革新的な製法で、環境負荷を大幅に削減する。同製品は、環境意識の高い企業や自治体からも注目を集め、同社の環境配慮型製品の代表的な事例となっている。
さらに、同社では社内外での環境活動の認知向上を目指し、これまでもさまざまなプロジェクトを推進してきた。社内では、環境活動を推進するための専任役員を配置し、各部門からメンバーを集めて定期的な会議を実施する体制を整えている。これにより、環境配慮が単なる企業理念にとどまらず、日常業務に根付いた実践的な活動へと進化している。
2023年には、さいたま市の「SDGs企業認証」を取得
同社が「GP認定」を取得するまでの過程では、さいたま市の「SDGs企業認証」の取得をはじめ、社内改革が重要な役割を果たした。環境対応を進めるために全社的な意識改革を行い、特に「健康経営」に基づく取り組みを通じて、従業員の健康意識を高めることに成功した。
さいたま市の「SDGs企業認証」は、地域社会や環境への貢献を積極的に進める企業に与えられる認証である。多田紙工がこれを取得したことは、同社の社会的責任への真摯な取り組みを象徴している。この認証を受けるためには、具体的な数値目標の提出や、達成状況の評価が求められるようで、同社では、環境負荷の削減や資源効率の向上といった具体的なアクションプランを策定し、これを実践することで認証を取得した。
多田社長によると、さいたま市が定める基準は厳しく、特に環境対策において具体性と持続性が求められる。同社は、「エコプレスバインダー」をはじめとする環境対応製品を提案することで、市場のニーズに応えるだけでなく、自治体の厳格な基準をクリアする体制を構築した。
社員を健康的に雇用するための「健康経営」への取り組み
また、同社の「健康経営」への取り組みは、単なる従業員の健康促進にとどまらず、企業全体の生産性向上や、環境活動との相乗効果を生むものとして注目される。同社では、全従業員の健康診断結果をもとに、「E判定」を受けた従業員に対する個別面談を実施。具体的な改善策を共有することで、従業員一人ひとりが健康課題に向き合う体制を整えた。
この背景には、過去に大腸がんで従業員を失うという、痛ましい経験があったという。健康診断で指摘されていたにもかかわらず、対応が遅れたことから、同社は「健康経営」の重要性を改めて認識。現在では、社長自らが全従業員と面談を行うなど、トップダウンでの積極的な取り組みが行われている。
また、同社では「GP資機材認定」を受けたオンデマンド印刷機を保有しており、この設備が環境対応型製品の製造において重要な役割を果たしている。この印刷機は、使用するトナーや資材が環境基準を満たしており、同社が提供する製品の環境価値を一層高めるものとなっている。
このような取り組みは、単に製品やサービスの質を高めるだけでなく、業界全体に対しても新しい基準を提示するものである。同社の「エコプレスバインダー」やGP資機材認定を受けた設備の存在は、製本業界が持続可能な未来へと進むための象徴的な要素であると言えるだろう。
1月下旬に業界内外の展示会に出展し、環境対応製品のさらなる普及へ
今回の「GP工場認定」取得を契機に、同社はさらなる成長を目指している。2025年1月22〜23日、さいたまスーパーアリーナにおいて開催される「彩の国ビジネスアリーナ2025」や、同日にポートメッセなごやで開催される「光文堂新春機材展 PrintDoors 2025」への出展を予定しており、これらの展示会を通じて環境対応型製品の普及をさらに推進する計画だ。
とくに、「彩の国ビジネスアリーナ2025」では地域密着型の製品提案を行い、埼玉県内の企業や自治体への認知向上を図る。その一方、同社の顧客である印刷会社が多数来場する「光文堂新春機材展 PrintDoors 2025」には、関東圏外の新たな市場開拓を目的とし、より広範囲な顧客層へのアプローチを目指して初出展する。
また、同社は「行動力で正解を出す」という経営目標により、迅速な意思決定と、柔軟な行動を重視する企業文化の構築を進めている。この姿勢は環境対応に限らず、持続可能な未来を築くためのリーダーシップを発揮するものといえそうだ。同社のさらなる挑戦に注目したい。