FFGS、「マーケットイン」時代の真の総合ベンダーへ
「お客様に寄り添う」- グループシナジーで価値共創
安田庄司技術本部長に聞く
富士フイルムグラフィックソリューションズ(株)(山田周一郎社長、以下「FFGS」)は、2025年も「お客様に深く寄り添う」をポリシーとし、富士フイルムのグループシナジーから生まれる、よりリアルなソリューションで業界との「共創」の関係構築を目指す。今回、新年の幕開けに際し、FFGS・取締役常務執行役員の安田庄司技術本部長に、「マーケットイン」時代の「真の総合ベンダー」としての役割についてうかがった。
「連携」が進展、新たな息吹に
印刷業界においては、昨年も非常に厳しい状況が続いたと認識しています。とくに大きく環境が激変したとは捉えていませんが、やはり資材の高騰にともなう生産コストの上昇に加え、慢性化する人手不足が印刷経営を圧迫した1年だったように感じます。
ただ、このような状況の中で5月下旬からドイツ・デュッセルドルフで開催された印刷・クロスメディアソリューション専門メッセ「drupa2024」は、来場者の減少なども含めて様々な見方があるようですが、私はその存在価値が改めて実感できたイベントだったように感じます。過去のdrupaは、「CTP drupa」「インクジェットdrupa」など、その時々の技術トレンドを反映した名称で呼ばれましたが、今回はとくにこれといったネーミングはなかったように思います。その中で、山形大学の酒井教授は、過去のdrupaを「連携」という視点で俯瞰して見ていて、この「連携」が形を変えながら進展したdrupa2024だったという見方を示しています。さらに、デジタル化がより実感できたことに加え、AIが印刷産業においてより身近な技術となり、私もその新たな息吹を感じました。よく他産業の方から「印刷は大変だろう」と言われますが、今回感じたこの新たな息吹によって、個人的には「まだまだ期待できる業界」だと再認識しました。
「染み出している領域」にも寄り添えるグループ力
そんな印刷業界に対して我々富士フイルムは何ができるか...。基本スタンスは変わりません。社長の山田が強調する「お客様に寄り添う」ということがポリシーです。そこは変えるつもりもないし、崩していませんが、ただ、想定以上に幅広い領域をカバーする必要があることを実感した年でもありました。多くの印刷会社では、すでに生産工程の効率化を推し進め、さらにBPOなどをはじめ、印刷以外にもその事業領域を広げています。その印刷から染み出た事業展開の動きが、我々の想定を上回るスピードで進んでいるように感じます。もちろん企業間の格差はあるにせよ、限られた経営資源の中で本業を効率化しながら新たなビジネスを模索し、実行しています。この現状を見て、その染み出している領域でも我々が寄り添い、一歩先を行って支援する必要性を感じた2024年でもありました。
ここでは、富士フイルムグループのシナジー効果が発揮できると考えています。もともとFFGSの強みは刷版材料を中心とした印刷業界とのパイプ、あるいはアナログ/デジタルの両方を事業としている点にあり、さらには我々の背後に富士フイルムグループのデジタル専門部隊による技術的シナジーや支援、アドバイスなどがあることも改めて我々の「強み」と定義しています。その一例としてFFGSでは、茨城県つくば市と電子通知サービスの共同研究を行い、今年からこのサービスが採用される予定です。これは当社のシンプルプロダクツ事業部が持っている技術で実現したもので、この事業の枠組み自体を印刷会社に繋げていくという試みも始まっています。
当社の本業とも言える刷版の消費量は、想定通り減少傾向にあります。しかし、依然として非常に重要な事業だと位置付けており、この「アナログ」を大事にしながら、当社はアナログが苦手な部分にはデジタルを提案することができます。昨年はdrupaをきっかけにデジタル印刷製品のラインアップを拡充、年末には新たに乾式トナーPOD機2機種を追加ラインアップし、より幅広い要望に応えられる体制が整いました。
ただ、我々の強みは箱物だけではなく、その周辺にあるソフトウェアや色・品質管理のソリューションの体制も整っており、ここが大きな差別化のポイントになると考えます。改めて社内でも再認識を促すとともに、お客様へ周知する活動も行っていきます。