コニカミノルタジャパン、2025年も「共に印刷の未来を創る」を実践 [砂子慎一事業部長に聞く]
DX支援をさらに加速〜ビジネスパートナーとして共に発展を
--異なる業界から来た砂子事業部長から見た印刷業界の強みや特徴について
砂子 私自身は、2023年9月にコニカミノルタジャパンに入社したが、それ以前は、東芝機械(現・芝浦機械)に勤務し、工作用機械や産業用機械などの販売を行っていた。当時は、ダイカストマシンというアルミの成形機を中心に自動車や二輪自動車、弱電設備など企業を主な顧客として営業を行っていた。プロダクションプリンターも産業設備という点では同じであり、ご縁があって今の会社にお世話になることになった。
私が以前の会社で担当していた自動車や弱電設備の企業は、比較的ドラスティックに生産拠点を海外に移行していった。しかし、日本の印刷業界は、「地産地消」、つまり国内で生産し、国内で消費するビジネスが圧倒的である。生産拠点を海外に移して国内市場が停滞していった業界に比べれば、日本の印刷業界は「厳しい」とはいえ、まだまだ国内に仕事として需要が存在する非常に恵まれた環境にある業界だと思う。もちろん仕事量は全体的に減少傾向にあるが、やり方次第では、まだまだ新たなビジネスの可能性を秘めているはず。この市場環境は、言い換えれば、日本の印刷産業の強みと言える。
すべての業界を顧客として高い印刷品質ときめ細かいサービスを提供し、また、印刷会社は日本全国に存在しているので、地域差なくタイムリーに製品を提供することができる。さらには長年に渡り培ってきた情報コミュニケーション技術で地域活性の一翼を担っていることも大きな特徴といえる。
また、近年では、特殊な紙への印刷や加工など、付加価値を高めて提供する取り組みが加速している。さらに情報コミュニケーション産業として、印刷だけでなく、顧客のビジネス全体を支援するサービスまでサポートしている印刷会社も多く、私が今まで抱いていた印刷会社のイメージとは違っていた。
--逆に印刷業界の課題と思われることについて
砂子 「地産地消」が大半を占める日本の印刷市場では、海外からの進出はそれほどないと思うが、逆に言えば日本からの海外進出も少ないのは、課題の1つかもしれない。
また、自動車メーカーなどでは、部品1つの原価を計算し、また部品を取り付ける時間までも厳しく管理されるなど、徹底した原価管理が行われている。もちろん印刷会社では、独自の規定による原価の設定・管理が行われていると思うが、印刷物というプロダクトを生産していることを考慮すると、もっと緻密な原価管理の必要があると思う。徹底した原価管理ができなければ、DXや自動化などの取り組みを行っても思うような成果を残すことはできない。そのための支援をコニカミノルタとしても積極的に行っていきたい。
--DXへの関心は高いが実際に取り組むまでには至らないケースが多いと思うが、その要因は
砂子 DXを推し進めて成功している会社もいると思うが、まだまだ少数派だと思う。「DXに取り組まなければ」という危機意識は持たれているが、「何から始めればいいのかわからない」というのが現状である。
当社や競合各社が提供しているデジタル印刷機は、すべての機能がデジタル技術で制御されているのでDXとの親和性が非常に高い生産機と言える。印刷枚数や色調整など、生産における数値をデジタルで管理されており、この技術をもっと活用してもらうことでDXへの第一歩を踏み出してもらいたい。
--DX支援のための施策について
砂子 DXをはじめとする自動化の支援については、ワークフロー全体を最適化する製品などをあらためて訴求していく。
ロボティクス技術や搬送技術のインライン化による自動化などは、その前工程が確立できていなければ、運用することができない。つまり装置だけを導入しても自動化を実現することはできない。DXの取り組みは、かたちとして見えにくいため、ロボティクスや搬送装置などを導入したくなるが、その前工程の自動化を確立しなければ効果測定など、真のDXによる運用ができない。そのため当社としては、その運用支援を行っていきたいと考えている。
DXにより、自動化や効率化が実現することで、従来の作業時間が大幅に削減できる。その削減できた時間を、よりクリエイティブな作業時間にシフトすることで、今までにない付加価値を創出できるはず。
--印刷の価値向上に向けたコニカミノルタの取り組みについて
砂子 大量に印刷して大量に消費するという印刷物の使われ方はペーパーレス化や環境問題の観点から減少していく。しかし紙でしか表現できないものも数多くある。我々が提供しているデジタル加飾システムは、印刷物の価値を高めることができる。例えば、商品パッケージにデジタル加飾技術によるメタリック加工やスポットニスによる凹凸感を施すことで、消費者の目を引く演出を付加することができる。これにより、紙の価値を高めるだけでなく、ブランドオーナーの販売促進にも貢献できるようになる。
また印刷産業は、ものづくり産業としての側面のほか、情報産業としての機能も有している。パーソナル情報を駆使したDM制作を印刷・宛名印字・発送までの一連の工程を担うことができる。この生産工程については、デジタル印刷機との相性が非常に高い領域である。さらには、印刷・加工技術やデザイン創造力を組み合わせることで、費用対効果の高いDMとして提供する技術がある。これらの取り組みに対し、コニカミノルタとしてのソリューションを提案していきたい。
--2025年に強化していく事業について
砂子 当社は、「ラベルフォーラムジャパン2024」でフルカラー高速デジタルラベル印刷機「AccurioLabel 400」を出展し、実演を通じてその機能を紹介した。出展して感じたことは、ラベル印刷業界は、デジタル印刷機への関心が高いということ。商品ラベルは、モノが売れるだけ必要であることから、減少傾向の商業印刷物とは、まったく異なる印刷物と言える。そこに個性やアイデアなどを付加していくことで、今までにない市場を創出できるはず。
また、B2インクジェットのAccuruoJet KM-1シリーズについては、これまでの高品質という価値提供のほか、RGBデータが主流の同人誌印刷分野において、圧倒的な画質やUV印刷によるメディア対応力が評価されており、今後はそういった分野にも自信を持って積極的に提案していきたい。