西濃印刷、「Made in 印刷会社」に信頼〜「MIクラウド」で社内のスモールDX推進
グループウェア「つながるワークス」とも連携
2020年、新型コロナウイルスのパンデミックは、従来の社会の常識を一変させた。リモートワークもその1つ。西濃印刷(株)(本社/岐阜市七軒町15、河野俊一郎社長)は2018年4月に木野瀬印刷(株)(愛知県春日井市)が開発した印刷業向けクラウド型経営管理システム「MIクラウド」を導入。河野社長は「その1年半後にコロナ禍となったが、MIクラウドがなければリモートワークも実現できなかった。働き方を自由にしてくれたツール」と振り返る。アフターコロナもMIクラウドを活用しながら、社内のDXを推進し、業務効率化による生産性向上にもつなげていく考えだ。
同社は創業126年の印刷会社。社名は、西濃と呼ばれる岐阜県大垣市で発祥したことに由来している。当初は市町村誌や官公庁の印刷物などが中心であったが、20数年前に岐阜市の街中をはじめ、岐阜県全域のショップやグルメ、こだわりのグッズなどの情報を発信するフリーペーパー「aun」の発行を開始したことを機に、民間企業にも受注を拡大。編集部門を設け、企画・デザインから前工程、印刷、Webなど、紙媒体・電子媒体を問わず、情報伝達を生業とする印刷業として幅広い顧客ニーズに対応している。そんな同社は2021年、会社の理念を「ちゃんと伝える、を堅実に続ける」と新たに作り替えた。
さらにウイズコロナの中、新たな取り組みとして開始したのが動画制作事業だ。2023年には従来倉庫として使用していた建物をリノベーションし、新施設「ヒトノワスタジオ」としてオープン。1階は交流スペース、2階は編集部門等が入る事務所、3階は2つの撮影スタジオを配置。よりクリエイティブで高品質な動画制作が可能になった。
「最近の実績としては岐阜県の銘菓である鮎菓子を販売する店舗を巡る『鮎菓子タクシー』のプロモーション動画を制作した」(河野社長)。動画制作からの切り口で顧客に提案し、「Webや印刷物へのシナジーにもつなげたい」(河野社長)。
クラウド型のMISを検討。「印刷会社」が開発したシステムに関心
同社は2001年ごろからオンプレミスのMISを活用していたが、Windowsのバージョンアップのたびにシステムもバージョンアップする必要があり、手間と高額な費用が発生していた。さらにクラウドではないため、外部からアクセスできないことに不便を感じており、「クラウド型で、使いやすいMISはないか」と河野社長は感じていたようだ。
そんな中、2017年春頃に、業界団体のセミナーで出会ったのが、木野瀬印刷が開発し、自社でも運用している「MIクラウド」だ。河野社長は「企業規模も同程度の印刷会社が開発したということで、様々な悩みを共有しやすいのではないかと関心を持った」としており、システム会社ではなく、共通言語で話せる同業者が開発したシステムであることに最大の関心を抱いたという。
また、クラウド型であることも導入条件に合致したポイントであったが、導入から1年半後のタイミングでコロナ禍となり、河野社長は「制作だけでなく、営業の社員も在宅で伝票入力や発行をクラウドで行えることは、コロナ禍において大変喜ばれた。MIクラウドにより、コロナ禍でも比較的混乱なく業務を行うことができた」と振り返る。さらに、アフターコロナの現在も一部の社員は在宅勤務を行っているようで「従来は、産後は退職というのが常識であったが、産後も在宅勤務で働き続けてくれる社員もいる。優秀な人材を繋ぎ止められるというメリットにもつながっている」(河野社長)と話す。
そして、営業・制作だけでなく、現場でもタブレットで工程の進捗状況を把握できるようになったため、「早めに段取りに取り掛かる準備ができるようになり、無駄な時間の削減にもつながっている」(河野社長)。営業も、MIクラウドの導入前は月末にまとめて伝票を起こすことが多かったようだが、リモートで早めに処理できるようになったことから、「案件の情報についても現場に早めに共有できるようになり、全体的な効率化につながっている」(河野社長)。さらに、工程管理や外注、紙の手配などもパッケージになっており、MISのシステムとしても、付加価値や利益の指標を管理するといった「印刷会社の実情を理解したシステムに仕上がっている」(河野社長)ため、オペレーションについては容易に移行することができたようだ。
スケジュール共有、チャットワークなどで業務の進行がスムーズに
また、同社では「MIクラウド」と合わせ、グループウェア「つながるワークス」を導入。これを連携させることで、社内の様々な情報を共有し、業務の効率化を実現している。
まず、スケジュール共有については、これまでは「社員が外出しているか、社内にいるか程度しか分からなかった」(河野社長)が、社長を含めて全社員の予定を共有できるようになり、お互いのスケジュール調整が容易になった。「私のスケジュールの空きを見て、勝手に予定を入れられていることもある」と河野社長は苦笑するが、従来はハードルが高かった社長とのスケジュール調整も容易になったことで、案件の進行がスムーズになるなどのメリットも生まれているようだ。
そのほか、会議室の予約や配送スケジュールはもちろん、「これまでは通達事項などは書面に書いて配布していたが、つながるワークスの掲示板に書き込むだけで、即座に全社員に情報が伝わるのは便利な機能」(河野社長)。クレーム事例なども掲示板で共有しており、「回覧」する必要がなくなったことは社内のスピーディーな情報伝達につながっている。
さらに、勤怠や稟議書への活用、チャットワークによるコミュニケーションなどにも活用しており、「社内のスモールDXを推進するきっかけとなった」(河野社長)。現在は活用しきれていない「日報」の機能なども今後は有効的に活用していきたいということだ。
今後の課題は分析データを活用して生産性向上につなげること
同社では「MIクラウド」を活用し、制作関連の部門などは作業時間を入力することにより、案件ごとに利益を生み出しているかを分析しているが、河野社長は「完全には徹底できておらず、マネージャーの認識で差があるため、今後はデータ入力を徹底し、その分析結果を有効的に活用していきたい」と今後の課題について話す。基準を整備することで、生産性の向上など、活用効果を最大限に発揮していきたい考えだ。
今後、MISの導入を検討する印刷会社に向けてのアドバイスとして河野社長は、「MIクラウドは低いハードルでDXに参入できるツール。印刷会社の実情を理解したシステムに仕上がっているので、MISでやりたいことがはっきりしている会社の場合、自社なりにカスタマイズして導入することも良いと思うが、初めての導入であったり、MISのことがあまり分からない場合、ベーシックな機能のままで十分に活用できる」と推奨している。
「MIクラウド」の導入から2024年4月で6年。その間を振り返ってみても、「やはり悩みを共有、共感してもらえるというメリットは大きい」(河野社長)と、同社にとって「MIクラウド」の選択に間違いはなかったようだ。今後も同システムを効果的に運用しながら、業務効率化とDXを推進していくという同社に注目したい。
