富士フイルムBI、DX実証の場へと進化した「Future Edge」
自動化のあり方をさらに深堀り〜最適生産環境を具現化して提案
[シリーズ - 印刷の未来を体感・創造する「ショールーム」]
人協働による自動化
DXによるスマートファクトリー化への対応が求められている印刷業界ではあるが、コストや設置スペース、デジタル人材不足などの理由から、その取り組みを躊躇している印刷会社も少なくない。そこでFUJIFILM Smart Factoryでは、自動化のレベルを段階化した提案も行っている。
高橋孝典氏(グラフィックコミュニケーション事業本部 DX事業部 ソリューション開発統括グループ DX2グループ グループ長)は、「全工程の無人化を目指すのではなく、生産工程の品質を担保するために、人との協働による自動化が重要だと考えている。仕事内容や設備環境などは、個々の印刷会社によって大きく異なるため、自動化の方向性は、さまざまと言える。そのため当社では自動化のレベルを段階化して、各工程における作業品質に合わせた自動化を定義することでシステムや機械の役割分担を明確にし、個々の印刷会社にとって最適な自動化提案を行っている」と人協働による自動化も、これからの印刷会社にとって必要だと説明する。
完全自動化や人協働による自動化、ニアライン活用による自動化など、そのあり方はレベルによって異なるが、どの自動化提案でも中心的な役割を担っているのが、印刷の全工程を一元管理する統合型ワークフローシステムを実現するソフトウェア「Revoria One Production Cockpit(以下、Production Cockpit)」だ。Future Edgeでは、設備しているすべての機器が「Production Cockpit」につながり、印刷の自動化や工程の見える化を具現化している。
自動化を支える「Production Cockpit」
これまで各生産設備のジョブの開始や終了など、全体の生産工程の管理を中心に稼働していたProduction Cockpitだが、現在は各工程の間、つまり印刷から後加工機への移行や後加工から梱包、発送など従来、人が介在してきた工程管理についても、このソフトウエアがロボットシステムやAGVの管理を行うことで工程間の自動化を実現している。また、工程管理の情報や生産実績情報をデータ化しているため、見える化や作業の自動化・省人化のさらなる改善に向けた提案にも活用していく。この工程間の自動化こそが新たにFuture EdgeのSmart Factoryに加わった要素の1つだ。
「Production Cockpitは、仕事の状況に応じてロボティクスをコントロールできるので、設備の前で作業の進捗状況を確認する必要がなくなる、これにより、これまで人が介在していた作業を自動化・省人化することができる」(高橋氏)
ロボティクスの活用で作業負荷が軽減されることは、ものづくりを生業とする印刷会社にとって大きなメリットとなる。しかし、丸林氏は、「ロボティクスやAGVなどで各工程の人手作業の置き換えができたてたとしても、自動化生産ラインとして、『いつ、何を運んだのか、何を仕分けたのか』などトレーサビリティを担保できなければ意味がない。つまりロボティクスやAGVで各工程間の作業が省人化されたとしても、その管理を人が行っているのでは、我々が目指す真の最適生産環境とは言えない」と指摘する。
すべての作業データを一元管理
Future Edgeでは、生産設備のほか、ロボティクスやAGVなどもProduction Cockpitによって管理されている。具体的には、「いつ、何を運ぶのか」などの作業情報は、Production CockpitからAGVに指示を行う。そして指示通りの搬送を完了した時点で、その情報はProduction Cockpitにフィードバックされる。ロボットも同様に仕分けた冊子単位のデータを認識し、その作業情報はProduction Cockpitで管理されている。これらのデータはすべて蓄積され、ジョブごとに作業時間を確認することが可能で、これにより各工程間において、どこに時間を要したのかなど、ボトルネックとなっている工程を抽出し、改善につなげることができる。
「AGVによる自動搬送やロボットによる仕分け作業の自動化などに目が行ってしまいがちだが、本当に認識してもらいたいのは、これらロボティクスが、どのようにマネジメントされているのかということ。ロボティクスによる自動化・省人化は、あくまでも手段であり、我々が目指しているのは、最適生産環境のための自動化である」(丸林氏)
最適生産環境とは、各印刷会社の自動化を促進するだけでなく、品質を担保することができ、さらに収益性のある生産環境の構築が前提であり、それこそが同社が提案するスマートファクトリー化でありDX化である。
新たな価値提供に向けて
Future Edgeでは、生産現場における「CO2排出量の見える化」への取り組みも検討しているという。
丸林氏は、「今後は品質やコストだけではなく、印刷物の製造におけるCO2排出量も発注者からの選定要件になってくることが想定される。印刷会社には対応が求められるはずで、DXによるスマートファクトリー化でそれに応えたい」とSDGsを見据えた新たな展開について語る。
SDGsへの対応などが求められる現在の市場において、発注者側は、脱炭素に取り組んでいる企業をパートナーとして選択するケースが増えている。産業を問わず取引をしている印刷会社にとって、この発注者ニーズへの対応は、急務である以上に大きなビジネスチャンスとなる。Future Edgeでは、新たな付加価値創出としてカーボンニュートラルという新たな武器を印刷会社に提案していくことを目指している。
