アイフィスジャパン、PDF書出し&プリフライトチェック時間を大幅削減
Switch×PitStopで自動化〜人為的ミス排除、ストレス軽減、属人化も解決
膨大なPDF書き出し作業、手間のかかるプリフライトチェック―。それは、かつての(株)アイフィスジャパン(本社/東京都港区六本木、大澤弘毅社長)の制作現場で日常的に行われていた工程だった。しかし、2015年に「ENFOCUS PitStop Server」を導入してプリフライトチェックを自動化し、さらに2023年に「ENFOCUS Switch」を導入し組み合わせて活用することで、同社の業務効率は飛躍的に向上した。月間82時間もの作業時間を削減し、創出された時間は動画作成などの新たな価値創造へつながっている。生産性向上の先に見据えるのは、業務の質とスピードのさらなる進化だ。同社の変革のプロセスを取材した。

同社は、1995年に設立された金融情報ベンダーであり、投資情報事業、金融ドキュメントソリューション事業、ITソリューション事業を柱として展開している。機関投資家や証券会社、個人投資家向けに提供する証券調査レポートや業績予想データは、同社の中核事業であり、金融業界における情報流通の重要な役割を担っている。
また、投資信託の目論見書や販売用資料の制作・印刷・配送を行うファンドディスクロージャー事業も展開し、紙媒体とデジタルメディアの両方を駆使したサービス提供に強みを持つ。とくに近年は大手金融機関と連携し、若年層向けの資産運用ソリューション開発にも注力。スマートフォンを活用した新しい情報提供の形態を確立している。プロダクショングループ ディレクターの髙田氏は「私たちの使命は、必要な情報を必要なタイミングで、誰もが理解しやすい形で届けることにある。情報格差を解消し、より多くの人々が正しい意思決定を行える環境を整えることが重要」と話す。
そして、その理念の実現には、膨大な情報処理と迅速なデータ提供が求められる。こうした背景から、同社はドキュメント制作の効率化と品質向上に向けて、業務フローの見直しと自動化の推進に取り組んできた。
そんな同社がPDFプリフライトチェックの自動化を目指して2015年に導入したのが、(株)ソフトウェア・トゥーが提供するENFOCUSのPDFプリフライトチェック・自動修正ソフトウェア「PitStop Server」だ。それまでの同社では、IllustratorやInDesignなどのネイティブデータでの入稿が主流で、入稿ミスやプリフライトチェックの煩雑さが大きな課題となっていた。
「以前は確認用の軽量PDFと入稿用PDFを混同するミスが多く、プリフライトチェックも各オペレーターの裁量に任されており、属人化が進んでいた。チェック漏れによる品質トラブルも避けられず、業務の安定化が急務であった」と浜田氏は振り返る。
PitStop Serverは、PDFデータのプリフライトチェックと自動修正機能を備えた高機能ソフトウェアで、従来の手作業では見逃されがちであった細かなミスも確実に修正することで、データ品質の安定化と作業効率の向上を同時に実現した。
また、ホットフォルダを活用し、入稿データを指定のフォルダにドラッグ&ドロップするだけで、プリフライトチェックが自動で実行されるフローが確立された。これにより、各オペレーターが個別に行っていた確認作業が一元化され、属人化の解消とともに、ヒューマンエラーの大幅な削減が可能となった。「手作業のチェックでは見逃してしまうような細かなエラーも、PitStop Serverであれば確実に検出できる。データ品質の安定化と同時に、確認作業の負担も大きく軽減された」とプロダクショングループ 制作アートディレクターの浜田氏は話す。
パンデミックを機に社内フローのすべてをデジタル化
2020年以降、世界を襲ったコロナ禍は、同社の業務フローにも大きな転機をもたらした。リモートワークの急速な普及により、紙ベースの業務は完全なデジタル化へとシフト。しかし、その過程で新たな課題が浮き彫りになった。
「毎日約200件の案件が稼働する中、デジタル化の進展と在宅ワークフローの導入により、従来の対面業務での業務体制よりも工数がかかり、細かな調整や確認作業の効率が低下する課題が生じた。
とくに、一作業ごとに手作業で行う煩雑な後処理が増え、作業者の負荷が増加。また、在宅勤務では社内との作業環境の違いから業務効率が低下するなど、様々な要因から品質にもばらつきが生じるケースが増えてしまった」と、プロダクショングループ 制作チームの石井氏は振り返る。
このような状況の中、従来のフローを維持するだけでは業務負荷が増加する一方であったため、同社はSwitchを活用した自動化による効率化を決定。その後、後処理作業を含めた業務全体の最適化を進め、作業の標準化と品質向上を実現していくことになる。
PitStopとSwitchの融合で、業務フローを再構築
2023年に導入したENFOCUSの「Switch」は、業務全体の自動化を可能にするハイエンド自動化フローデザインソフトウェア。最大の特徴は、複雑な自動化フローも設計図を視覚的に構築できる柔軟性にあり、プログラミングの専門的な知識がなくても直感的に操作することが可能だ。
Switch導入後は、従来オペレーターが手動で行っていた入力作業後の後処理を自動化。ファイルをホットフォルダに投入するだけで、入稿用のPDF書き出しとクライアント確認用の軽量PDFを自動で書き出し、リネームを行った上で所定のフォルダに格納するという煩雑な作業を自動で行うフローを構築した。Switchの設計構築を担当する石井氏は「データを落とし込む入口のホットフォルダは1つにし、そこから細分化して全部で46種類のフローを作成した。これによりデータを落とし込めば単ページや見開き、単色やカラー、そして印刷後の納品PDFまで、あらゆるデータのPDF書き出し作業を自動化した」と説明する。

さらに、「PitStop Server」と連携して活用することにより、同社では導入後13ヵ月で月間82時間という時間コスト削減の成果を達成している。
自動化したフローのミスは完全に排除。精神的な負担も軽減
同社がSwitchとPitStop Serverを組み合わせて得られた効果は、単なる時間短縮や業務効率化にとどまらない。従来、PDF書き出しに費やしていた時間を、Webや動画作成などクリエイティブな業務に充てられるようになった。さらに属人化も解消され、誰でも同じ品質で作業できる環境が整った。
また、従来の手作業のチェックでは避けられなかったヒューマンエラーが、Switch導入後は完全に排除された。浜田氏は「PDF格納先の間違え、プリフライトチェック漏れ、トンボの消し忘れなど、過去に悩まされてきたエラーは一切発生していない」と話す。これは業務の信頼性を飛躍的に向上させただけでなく、社員の精神的な負担も大きく軽減した。
さらに、作業フローの標準化により、誰が担当しても同じ品質で成果物を納品できる体制が整った。これは、属人化の解消だけでなく、急な人員変更や業務の繁閑期にも柔軟に対応できる強固な組織基盤を構築することを意味している。
「Switchの導入後、社員の意識も大きく変革した。単なる作業効率化ではなく、どうすればもっと良い業務フローを作れるかという視点で、現場から改善提案が積極的に上がるようになった」と浜田氏は話す。その1つが、名入れ作業のワンパス化だ。
「現在、この作業は、InDesignでスクリプトを使用し、名入れ・PDFの書き出しの自動処理を行い、その後書き出されたPDFを手動でSwitchに取り込んで処理するという2つの流れになっている。しかし、これでは依然として人の手が介在するため、完全な自動化とは言えない。今後はこの工程をワンパスで完結させることを目指している」と、制作チームの石井氏は話す。

具体的にはロゴデータとInDesignのファイルを直接Switchに投入することで、自動的に名入れ処理を行い、PDFを書き出す仕組みの構築を計画中だ。この仕組みが実現すれば、作業者は手動での書き出し作業を行う必要がなくなり、さらに大幅な工数削減とミスの防止が期待できる。
「名入れ作業をワンパス化することで、これまで以上に生産性が向上し、よりクリエイティブな業務にリソースを集中できるようになる。これが今後の業務改善における重要なポイントになると考えている」と石井氏は強調する。この取り組みは、同社が目指す業務プロセスの完全自動化への大きな一歩であり、実現すれば今後の業務効率化と品質向上のさらなる推進力となりそうだ。
AIとSwitchの融合で広がる「夢」と新たな可能性
同社の制作部門にとって、もはやSwitchは単なる自動化ツール以上の存在となっているという。その存在感はあまりにも大きく、社員たちは「気づけばSwitch中心のワークフローになっている」と話しているほどだ。しかし、その言葉の裏には業務効率化を超えた"夢の広がり"が確かに存在している。
「Switchがなければ、正直ちょっと不安になる。それくらい今の当社の業務にとって欠かせない存在になっている。でも、それは単に便利というだけでなく、『もっとこんなことができるのではないか?』という想像力を刺激してくれるツールだからである」と、浜田氏は話す。

今後の目標は、AIを活用して、新たな自動化のステージに進むことだ。データ処理の精度向上や新たな付加価値創出にも期待する。髙田氏は「AIとSwitchが連携できるようになれば、さらに複雑な業務も自動化できるかもしれない」と将来を展望する。
「私たちにとってSwitchは、未来を切り拓くパートナーであると言える。使えば使うほど可能性が広がり、気づけばなくてはならない存在になっていた」と、浜田氏は話す。
「私たちにとって自動化はゴールではなく、新しい可能性へのスタート地点である。今後も業務フローの最適化を追求しながら、より付加価値の高いサービスを提供していきたい」と髙田氏は話す。単なる自動化ツールでなく、組織全体の成長を促進する「Switch」をパートナーに、同社の「夢」はまだまだ広がり続けていく。
