価値協創で新たな潮流|ミリアド、参加者の声をデータ化〜イベント運営でキュリアを活用
印刷会社と発注者で価値協創を展開
諸資材価格の高騰やエネルギーコストの上昇など影響により、あらゆる産業界で新規ビジネスの獲得が難しい状況になっている。そのような市場環境のなかにおいて(株)ミリアド(樋口清政代表取締役CEO)は、スマホコンテンツ制作システム「キュリア」を印刷会社に提供し、新規受注を生み出す「創注」を支援してきた。その流れは、さらに進化・発展を遂げており、現在では「キュリア」の機能を基軸とした、印刷会社とクライアントによる「価値協創」が始まっている。
キュリアとは、スマホサイトやキャンペーンコンテンツ(ガチャやスクラッチなど)を「誰でも」「最短1分で」「制作上限なし」でフルカスタマイズして作成できるサービス。配信もデザインQRやNFCシールなど利用者にダウンロードの手間をかけない方法で行うことができる。印刷機などの生産設備のような大掛かりな投資コストの必要はなく、また、Webコンテンツ制作など、これまで多くの印刷会社が苦手としてきた領域に対し、専門知識不要で参入できることから、現在までに300社を超える企業で採用されている。
広範囲デジタルスタンプラリー企画をキュリアで受注
(有)ソーゴーグラフィックス(熊本県人吉市)は、「キュリア」のデジタルスタンプラリーを活用し、クライアントである九州中央山地観光推進協議会が実施した町おこし企画を支援している。
九州中央山地観光推進協議会では、紙のスタンプラリーによる町おこしイベントの開催を予定していた。そこで企画全般の運用についてソーゴーグラフィックスに相談し、その際にキュリアの機能である「デジタルスタンプラリー」の提案を受け、採用を決定した。
本来であれば、キュリアの提案で新規受注獲得となるのだが、このイベント企画には、さまざまな課題も山積していた。その1つが広域なスタンプエリアだ。
今回のスタンプエリアは、九州中央山地を構成する7つの市町村が対象となっており、すでに各市町村を2箇所ずつ合計14箇所のスポットをラリーすることが決定していた。しかし、スポット間の最長移動距離が100kmを超えているところもあり、従来のスタンプラリーの概念を遥かに超えている。
もう1つが参加者に贈られる景品だ。当初、用意されていた景品は、木製の名入れができるキーホルダーとボールペンであった。しかし、これでは最長100kmを超えるスタンプラリーを考慮すると参加者にイベント自体の魅力を感じてもらうことは難しい。
距離感を払拭する「ドライブスタンプラリー」として開催
ソーゴーグラフィックスは、移動距離が長いことを逆手に取り、ドライブやツーリングなどを楽しむ人たちを対象とした「奥九州ドライブスタンプラリー」とういネーミングを提案。これであれば、距離感ではなく各地の観光スポットめぐりなどのレジャー感覚でスタンプラリーに参加してもらえる。さらに最大スタンプ獲得数を14箇所10スタンプとし、より参加しやすいルールを設定した。
景品についても先着ではあるが3スタンプでコースターを、さらにスタンプを完全制覇した参加者には、オリジナルのデザインをプリントできる「オリジナルスニーカーを作れる権利」を用意。これら景品についてもソーゴーグラフィックスが制作を担当している。
2022年10月22日から2023年1月22日にわたり開催された同イベントでは、136人が参加。デジタルスタンプラリーという新たな付加価値ツールに魅力と可能性を感じた九州中央山地観光推進協議会では、翌年も同様のかたちでドライブスタンプラリー企画を実施している。
発注側と受注側が協力して改善策を模索
第3回目となる「奥九州ドライブスタンプラリー」は、2024年10月12日から12月22日の期間で開催された。第1回目の開催以降、九州中央山地観光推進協議会とソーゴーグラフィックスは、より最適なイベント運営について協議を重ね、改善策を実施してきた。
主な改善点としては、デジタルスタンプラリーと並行して第2回目から紙のスタンプラリーを採用。これは第1回目の参加者データを分析した結果、比較的シルバー世代の参加者が多かったことから採用された。実際に「紙のスタンプラリーにして欲しい」といったニーズがあったわけではないが、参加方法の選択肢を広げることで利便性の向上を図っている。
獲得スタンプ数についても、これまでの10個から7個に減らし、参加者の負担を軽減。また、スタンプ設置場所を変更することで、過去の参加者でも新たに楽しめるように配慮している。
さらに景品についてもオリジナルスニーカーから大人気ゲーム機に変更することで子供たちの参加だけでなく、孫へのプレゼント目的のシルバー世代への参加も促している。これに加えて、球磨牛や宮崎牛など地元特産品も景品として追加。景品の選択肢を増やすことで、どの世代に対しても参加して景品を獲得する楽しみを提供できる工夫を凝らしている。
併催企画のフォトコンテストの活性化にも貢献
このドライブスタンプラリーでは、第1回目の開催時から併催企画として「フォトコンテスト」を実施しているが、初回の参加者は、わずか5組であった。改善に向けての協議を重ねた結果、一眼レフなどの本格的なカメラではなく、誰でもスマホで手軽に撮影できる環境を整備することで参加促進を図ることとした。
新たな仕組みでは、キュリアのフォトフレーム機能を活用。この機能では、ご当地キャラを使用したフォトフレームで撮影ができるので、写真を撮って楽しむ、という価値を提供している。また、各スポットに設置されたスタンプを獲得するためのQRコードが印刷されたポスターの隣にフォトフレーム用のQRコードを設置し、参加促進に向けての改善を図っている。
データ収集ではなく参加者の声を拾い集めること
さらに第3回目から応募フォームにアンケート項目を設け、「企画を知ったきっかけ」について調査を実施。取集したデータを元に集客手段や広告媒体に関する検証を行い、より効果的な広報宣伝に役立てていく。これもデータ取得と分析が容易にできるキュリアだからできる改善活動といえる。
スタンプラリーなどのイベント企画は、思ったほどの集客ができなかったことから単発開催で終わってしまうケースが少なくない。そのためソーゴーグラフィックスでは、キュリアのデータ収集機能を活用して改善点を洗い出し、発注者と情報共有することでイベント自体のブラッシュアップを図っている。また、発注者側でも紙のスタンプラリーでは、入手できない情報をもとに企画の見直しを図ることができるので、より最適化されたイベントとして開催できる。
つまり収取したデータは、参加者の生の声、リアルな感想である。この参加者の生の声は、発注者側にとっても価値ある情報であり、受注者側にとっては、差別化戦略につながる。
今回の事例では、キュリアを基軸に発注側と受注側が収集したデータをもとに改善策を出し合う「価値協創」を実践し、より良いイベントとしての開催を目指している。つまり「発注者側の要望をそのままカタチにするだけ」、あるいは「受注者側の提案をただ受け入れるだけ」、ではなくイベントの成功という共通のゴールに向けて両者が協力して価値を生み出していることだ。
第3回目となるドライブスタンプラリーは、開始1ヵ月で初回の136人に手が届く100人超がすでに参加しているという。両者では、紅葉を迎える時期での開催となることから、さらなる参加者増に期待をかけている。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。