価値協創で新たな潮流|三和綜合印刷、「推し活グッズ」が好調
UVオフセットで化成品に特化
知財は『説得力』という武器に
同社の最大の強みであり、企業価値の源泉とも言えるのが「商品開発力」だ。年間に最低でも4アイテムの商品化を目標に掲げる同社では、その最重要テーマとして「実用新案を取得できるもの」と「ユニバーサルデザインの要素を取り入れたもの」という条件を課している。
とくに実用新案について近江社長は「東京での展示会がきっかけ」だと説明する。
「当社が商品化したものには、必ず付加価値が存在するわけだが、常に新しいものを探し求め、目が肥えた関東地区のお客様に、そのオリジナリティを、自信を持って訴求するひとつの手段として、知的財産は『説得力』という大きな武器になる。現在、23の実用新案を取得している」(近江社長)
この商品開発力を集結し、2〜3年前から取り組んできた「推し活グッズ」の事業がここにきて大きく開花している。
もともとクリアカードをきっかけに火が付いた事業だが、いまでは型抜きクリアPPカードやクリアスタンド、フォンタブ(スマホ本体とケースの間に挟んでストラップが付けられるもの)、立体クリアジオラマなど、数々の推し活グッズをリリースし、ノベルティ会社や出版社、印刷会社からの受注を伸ばしている。アクリル素材よりも単価を抑え、短納期、大量生産できるのが強みだ。
とくにカード類の受注が伸びている背景には、付帯事業である封入サービスを含めたワンストップサービスがある。最近の傾向として、カードを透明PPに入れるだけでなく、中身の見えないアルミ蒸着の袋に入れ、数種類のカードをランダムに封入するなどの細かな要望も多く、これらを一括受注できる体制を整え、内製化率を高めることで高い利益率を弾き出している。
「推し活グッズの売上は年々増加しており、新たな事業の柱として成長している。以前から売上の50%を占めるクリアファイルの比率を、売上を落とさずに40〜45%まで引き下げたいと考えていた。今期はその数字を達成している」(近江社長)

今後は「作業領域の幅」を広げる
コロナ禍において、いち早く抗菌マスクケースに着手し、過去最高の業績を叩き出した実績もある同社。時流に応じたスピーディな商品開発を行いながら、その「価値」を明確に訴求することで、新たな事業の柱として定着させ、バランスの取れた事業ポートフォリオ構築を目指している。
一方、同社は今年、UV5色ニスコーター機と油性4色機を廃棄し、省エネ補助金を活用してUV6色ニスコーター機を導入。UV8色機との2台体制で、より化成品に対する経営資源を集約し、「UV+化成品+ノベルティ」のブランディングを強化している。

さらに、今後は「作業領域の幅」を広げるべく、設備投資も活発化させていく考えだ。
「シルクスクリーンや箔押し、溶着機などの後加工設備を含め、『作業領域の幅』を広げていきたい。これが『商品開発の幅』にもつながり、良好な循環を生んでくれることを期待している。ノベルティ分野のトレンドをいち早く掴み、それを貪欲に発信していくことで、この市場にはまだまだ大きな伸び代があると確信している」(近江社長)
