ページの先頭です

「こだわりの本」を作り続けていける業界へ[京都製本工組100周年記念特別インタビュー]

記念事業として「製本の100年」発行、組合のECサイト開設

--9月28日に開催される「創立100周年記念式典」について。

■藤原 14時からの記念式典では、来賓等からの挨拶に続いて「優良永年表彰」として(有)文政堂、新日本製本(株)、(株)オービービーの3社を表彰する。また、100周年記念事業として記念書籍の出版と組合のECサイトを開設するが、まずは「製本の100年を振り返る(仮題)」という書籍の紹介を行う。

■大入 これは、当組合の記念誌という位置付けではなく、(株)勉誠社という出版社が発行するもので、京都だけでなく「製本の100年誌」として発行するもの。当組合から8名が参加しての座談会を実施したので、その内容に加えて、当組合から提供した資料などをもとに掲載する。来春までには発行の予定で、価格は2000円。B5サイズで100ページ以上のボリュームとなる。

■藤原 また、このたび組合の公式ホームページを開設したが、その中にある「ECサイト」のページについての説明を行う。

 順次、組合員からオリジナル商品を集めていく予定で、これにより組合員が製作した製品をオンラインで販売できるようになる。これにより、京都の製本技術を広く全国に発信し、新たな顧客層を開拓できることに期待している。

パネルディスカッションも開催

■藤原 その後は記念講演として、奈良女子大学研究員人文科学系教授の磯部敦先生をコーディネーターに、書物史研究所属 愛知医科大学非常勤講師であり、「製本」に非常に興味をお持ちという安井海洋先生、そして当組合から、私と昔の製本業界に詳しい(有)酒本製本所の酒本社長の2名が参加して、約1時間のパネルディスカッションを行う。「京都の製本100年の振り返りとその未来」のようなテーマで開催される予定である。

■大入 第3部の祝宴では、組合員をはじめ、京都府・京都市、全製工連、京都印刷関連7団体の理事長などの来賓を迎え、100名程度が参加しての懇親会を盛大に開催する。

--京都製本業界での「第3の市場」への挑戦事例について。

■藤原 当社は印刷組合にも加入しているが、そのほかに「喫茶店」の商社会にも入っていて、そこの理事長とも懇意にしており、喫茶店の仕事も色々とさせていただいている。喫茶店のお客さんはコーヒーを飲むだけでなく、「空間」を楽しみに来る人も多い。本を読みながら寛ぎたいという人もたくさんいるので、そこに弊社でできる何かを提案し、つながっていくことを考えている。

 また、大阪府印刷工業組合では「ペーパーサミット」を催しておられるが、京都の書店・取次の業界では、2025年の年明けに「ブックサミット」という催しを開催するようなので、そこにも組合としてワークショップなどで協力し、連携していくことができればと考えている。

「こだわりの本づくり」で製本の魅力訴求。イベントの開催や連携も

■大入 次の100年を見据えた時、未来ある製本業界になるためには、先ほども話したが「こだわり」の持てる本を作り続けていかなければならない。これがキーワードだと考えている。本を所有する人に「これがこだわりの1冊」と思われるような本を作っていきたい。そうなれば、製本加工賃についても「これなら高くてもしゃーないな」と言われるようになるのではないか。そのようなレベルまで、本作りを押し上げていきたい。そのための取り組みを組合としても行っていきたいと考えている。

■藤原 創立100年というのは、振り返りの大きな節目だと思うので、今までの蓄積された技術の継承を考えると、理事長が話されたことは非常に大切なことだと思う。しかし、いくら作っても売れないと続けていけないので、組合としては、組合員が作った商品が販売してリターンになるような仕組みを作っていく。

 その1つがECサイトであり、先ほども話したイベントとの連携などである。これにより、組合員が消費者と直接つながる機会を増やすことが大切だと考えている。

■大入 今回、これまでの100年を振り返り、次の100年を考えていくという中に、色々なヒントが隠れていると思っているので、そのヒントをしっかりと掴んで、次の100年を迎えられるようにしていきたい。

■藤原 紙の本の魅力を分かってくれる人は必ず一定数いるので、その人たちの"心に刺さる本"をこれからも作っていきたいし、それが我々の使命であると思う。情報伝達の手段は多様化しているが、大切なのは「情報の重み」であると考えている。情報の重みのある本は今後も残っていくと思うので、我々は本の価値を見直し、さらに高い品質とデザイン性を追求していく必要がある。

 読者に感動を与え、心に残る一冊を作ることが、製本業界の明るい未来を切り開く鍵になると信じている。