双葉工芸印刷、新たな色管理体制が実現[CMS構築サポート事例]
高度な品質要求にも確実・効率的に〜損紙・損版などの無駄が激減
協力会社の平台校正でも「自社の基準色」の再現が可能に
こうして自社完結のジョブにおいては生産効率が格段に向上した。しかし、色に関してはもうひとつ難題があった。それは、協力会社に外注する平台校正のマッチングだ。
「以前から、平台校正の色が合わずに苦労することが多々あったが、今回その対策に踏み切るきっかけとなったのは、ある洋菓子メーカーさんの仕事。店舗のディスプレイツールを、3週間ほどで100アイテムほど制作するという超短納期の仕事だったが、本紙校正の要望があったため、すべて平台で対応。ただ、これだけの数を従来と同じ環境のまま進めたのでは、色調整に時間がかかり納期に間に合わない。そこでFFGSに相談したわけだ」(藤井課長)
協議の結果、双葉工芸印刷の刷版カーブを協力会社のCTPに適用することで、「双葉工芸印刷の基準色を再現できる環境」の実現を目指すことになった。
「この協力会社は校正専業の会社なので、本来は1社のためにカーブを動かすことはできないが、事情を話して、FFGSの協力のもと、新たにカーブを1本つくっていただいた。たまたまCTPセッターや刷版、RIPなどの使用機資材が当社と共通していたので、インキは当社から支給するなど、他の条件もできる限り整えた上でトライしてみようと」(藤井課長)
両社にとって異例の策ではあったが、その効果はてきめんに表れた。
「平台校正機は印圧が軽いので色が浅くなる傾向にあり、無理に濃度を乗せるとつぶれてしまうことがあったが、新しいカーブを当ててからは濃度感が向上して、中間のメリハリもしっかりと出るようになり、PRIMOJETの色にかなり近づいた」(藤井課長)
実際、先述の洋菓子メーカーの仕事では、ほとんどのアイテムが「一発校了」だったという。
「いままで、平台の初校でOKをいただくことは皆無だったので、正直、驚いた。PRIMOJETだけでなく平台校正でもお客さまから高い評価をいただけるようになったのは大きな成果。社内の印刷オペレーターも『格段に刷りやすくなった』と評価していた」(藤井課長)
取材時点では、大手食品メーカーから受注したプロモーションツールの仕事が進行中で、これも平台校正をとる予定だという。藤井課長は「ここでも今回のCMSの成果が出るのではないか」と期待を込める。
「このお客さまの仕事は、タレントさんの写真を使うものも多く、品質にはかなりシビア。以前はお客さま立ち会いで校了をいただいても、印刷で微妙に色が合わず、納品後にクレームになることがあったが、今後はそれがなくなると思う」
定期診断を通じて数値管理の考え方が徐々に浸透
社内のみならず協力会社も含めた「共通色基準に基づくCMS」の構築。その効果は、実際の仕事の中で明確に表れているが、「この環境をいかに維持していくか」も重要な課題だ。そのため同社では、FFGSによる「定期診断サービス」を活用し、年に2回、品質チェックを行っている。これは、印刷機やプルーファーの色再現の状態を測定し、その分析結果を現場にフィードバックするというもの。問題点が見つかれば、必要に応じてFFGSの技術スタッフが現場でフォローを行う。
ただ、藤井課長によると、定期診断の意義が現場に理解されるまでには、しばらく時間がかかったという。
「とくにベテランのスタッフは、自分たちが貫いてきたやり方に強い確信を持っており、新しい数値管理の考え方はなかなか受け入れられなかった。しかし、定期診断のブランクが空くと色の精度が落ち、診断実施後には再び色が合うようになるということが何度かあり、そんな結果を目の当たりにしたことで、定期診断・数値管理の重要性を肌で感じられるようになってきたようだ」
定期診断は同社にとって、各デバイスの「色の状態」を数値で確認する場であるとともに、日常の色管理や改善の取り組みの効果を理論的に把握する機会にもなっており、これが現場の納得感につながっている。
「刷版カーブ、ドットゲイン、インキ濃度、網点など、一つひとつ課題を潰していき、その結果を客観的なデータで見せていただくと、『なるほど』と腑に落ちる。その積み重ねで、現場の理解が少しずつ深まっていった」(藤井課長)
印刷現場の意識も変化し、「カーブで直す」発想から脱却
色基準の策定からデバイス間のマッチング、定期診断まで含め、約4年間にわたり色管理の変革に取り組んできた双葉工芸印刷。現在も継続中ではあるが、これまでの効果について、藤井課長はこう総括する。
「まず、刷り直しや版の再出力といった無駄が大幅に減り、生産効率が上がったこと。そして、品質に厳しいお客さまからのクレームも激減し、当社の色をより高く評価していただけるようになったことが大きい。また、色が合わない場合でもその原因が特定しやすく、効率よく確実に修正が行えるようになった。これも生産性アップにつながっている」
また、現場の意識の変化も重要な成果だと語る。
「色を合わせ込む際、『印刷機側で何とかしてみよう』という意識が以前より強くなったと感じる。これまでは、『印刷ではここまでしか色が出ない』と限界を決めてしまって、その範囲を超えると刷版カーブで対応しようとしていたが、その考え方から脱却し、カーブに頼らずに合わせられるようになってきた。これは、印刷現場でチェックすべきポイントを今回あらためて学べたことも関係していると思う。インキの乳化など、日々のオペレーションの中で把握できる部分だけでなく、つねに網点を細かく見て、スラーやダブりなども判断できるようになってきたので、そうした印刷機コンディションの調整だけで色の問題が解決するケースも増えてきた」(藤井課長)
こうしたさまざまな効果を踏まえた上で、藤井課長は今後の課題として「営業のさらなる知識向上が必要」と強調する。
「お客さまの高度な要求に応え続けるには、現場だけでなく営業も、もっと知識やノウハウを身につける必要がある。今回のCMSの再構築によって現場環境は整ってきたが、たとえば、お客さまから色に関する指摘を受けた際に、原因や対策について根拠を示して営業が明確に説明できるかどうか。そのための教育が次の課題である。FFGSにはぜひ、定期診断とセットで営業向けサポートもお願いできればと思っている」(藤井課長)