原色美術印刷社、創業70周年「サービス業へ転換」
3つの改革で利益率改善
「Cloud CIRCUS for Creative」導入&実践までの4ステップ
同社がCC社の専任担当者と開催している2週間に1度の定例会議で受けているサポートの内容について、大きく4つに分けて紹介する。
(1)目標設定
「ありたい姿」と「目標」の設定を行う。日々の営業活動における提案数や提案内容を管理しやすく、またサポートしやすくするため。同社は2025年以降のありたい姿として「印刷メディア・Webメディア・ドローンを3本柱としてクライアントの課題解決を行う会社となる」を設定しており、管理指標として印刷+αにおける「提案数」や「商談数」といった数値を、月次単位で設定している。
(2)デジタルツールについて理解を深める
CC社が運営する専用の学習動画で、制作方法など提案に必要な基礎知識を習得する。講習では、各サービス2時間ほどかけてツールのコンセプトや機能の理解、制作方法の学習、サンプルの作成を行っている。
(3)提案型の営業スタイルの理解と実践
専任担当者による提案型営業の基礎研修を実施。ヒアリングのコツから、課題把握に必要な質問の流れ、既存サービスとデジタルツールを組み合わせた提案内容も考案する。
同社は、カーディーラーに提案していたDMを電子ブックで代用するという提案内容を考案。カーディーラーでは、販売促進の手法がオンラインに置き換わっていたものの、コンテンツを作成する工数や費用が高額になっており、紙のDMをそのまま電子化できる電子ブックはフィットする提案だった。サンプル品とともにクライアントにプレゼンする提案資料と、他社の相場を含めた提案金額の設定まで行い、本番の提案に備えている。
(4)クライアントに提案、定例会議で案件を確認しながらPDCAを回す体制
案件状況の管理のため、営業担当者1人ひとりが案件管理表を作成。同社の定例会議では、この表の情報をもとに、チーム全体でクライアントの課題について仮説を立て、受注に向けたアドバイスを互いに行っている。これにより、提案活動のボトルネックを早期に見つけることができる体制を構築している。同時に、本来1営業社員のなかで完結しがちな案件情報が、定例会議参加者全員に共有されるため、失敗と成功のノウハウがチーム内に蓄積され、全体の受注確率も向上しているという。
「提案型営業スタイル実践」の苦労
こうして提案型の営業スタイルの導入に踏み切った同社だが、その浸透には苦労もあった。印刷業自体が、もともとクライアントからの発注を起点に案件に対応する受け身の営業スタイルが中心のため、営業担当者自ら提案し、案件を創出することで受注に繋げていくという能動的な営業スタイルに不慣れな社員も多かった。田尾社長はデジタルツールへの理解や提案スキルの習得はもちろん、社員に対して「印刷+αで、付加価値をつけた提案を行うこと」に対する意識づけを継続的に行うことも重要だと語る。
「提案型の営業スタイルを実践でき、かつ業績を上げている営業担当者の特徴は、『お客様の課題を解決したい、役に立ちたい』という意識が非常に高いことだと感じている。その意識を起点に制作部隊などもうまく巻き込み、クライアントの課題に刺さる質の高い提案ができている」
将来的には、全営業担当者が、同じスキルと意識のもと、提案型の営業スタイルを実践できることを理想とし、今後も意識づけや教育にも継続的な努力が必要だと語る。
導入から3ヵ月で20件の受注に成功!会社全体の利益率が4%改善
CC社との定例会議を繰り返し、積極的な提案活動に踏み切った同社。営業チーム全体でクライアントの課題に対して仮説を立てる中で、もともとカーディーラー向けの提案として考案していたCC社の電子ブックサービスを「WeBook!」という自社サービスとして展開することで拡販できるのではないかと考えた。早速、「WeBook!」の提案を始めたところ、すぐに受注へ発展し、結果的には他のデジタル関連のサービス含め、3ヵ月間で20件の受注に成功した。
2022年度2月時点では、提案型の営業スタイルを実践している営業担当者個人において、最高で利益率15%の改善に繋がっており、また企業全体で見ても4%の利益率改善に繋がっているという。受注数や売上だけでなく、昨今の印刷業の経営における重要な論点のひとつである利益においても成果が出てきている。
田尾社長の語る「業態転換による挑戦的未来」
「紙の役割も変わり、あらゆる事業領域も益々ボーダレスになってきている。これからは、印刷会社の競合は、もはや印刷会社ではないかもしれないと考えながら、事業に向き合っていく必要がある」と語る田尾社長。印刷物を通して、クライアントの要望に答えていくことも重要であると述べつつ、時代の変化や印刷需要の低迷を考慮し、売上や利益率改善を図る観点でも、今回の業態転換は重要だったと話す。
今後は、開発した新しいサービスやCC社のデジタルツール等を今以上に活用し、印刷物については外部のパートナーでの製造も取り入れ、印刷+αにおける領域で、よりクライアントの販売促進の課題解決のパートナーとして躍進していく。今後の同社のさらなる変化に注目していきたい。