原色美術印刷社、創業70周年「サービス業へ転換」
3つの改革で利益率改善
広島県にある印刷会社が、「デジタルで付加価値をつけたサービスの開発」「提案型営業スタイルの導入」「営業管理体制の改革」を実践し、成長を加速させている。2023年3月26日に創業70周年を迎えた(株)原色美術印刷社(本社/広島市西区商工センター7-5-48)だ。これまでチラシやDM等のオフセット印刷を事業の柱としてきた同社が70周年という節目を経て、「製造業からサービス業へ」という方針を掲げ、「クライアントの販売促進における課題を、印刷+αのサービスで総合的に解決できるサービス業」として業態転換を進めている。コロナ禍で紙媒体の減少が進み、印刷業界全体で売上高減少が進む昨今において、状況を打破すべく田尾社長自ら取り組み始めた改革について、その内容とこれまでの軌跡を伺った。
創業70周年、これまでの原色美術印刷社
1953年、広島県広島市で設立された原色美術印刷社。今回インタビューした田尾直也氏は、同社の4代目社長である。今では印刷事業だけでなく、Web制作や動画、電子ブックといったデジタルの領域を含む12の分野でサービスを提供する。しかし、2013年に同氏が代表取締役社長に就任した当時は、事業内容も創業から大きく変わらず、チラシやDMといった紙媒体を中心とする印刷事業を手がける企業だったという。
「就任当時は、クライアントからいかに大型の案件を多く獲得するかということに注力していたが、印刷業界全体のトレンドもある中、当社の印刷事業の売上も減少傾向にあった。今後のさらなる変化を見据え、それまで取り組んできた領域以外で案件獲得や売上の拡大に挑戦していく必要があった」
当時を振り返り、こう語る田尾社長は、注力していた営業方針と合わせて新しい取り組みを始めることで、同社の売上の拡大を実現していく。なかでも、大量ロットではないがコンスタントに案件を獲得できるという観点で、印刷事業におけるカーディーラーへの拡販を、西日本および関東地方を中心に強化していった。クライアントに選ばれた理由は、同社が有する「自動車の販売促進における独自のノウハウ」だった。営業も制作も自動車の販売促進の分野に精通しており、またクライアントからの相談にはすぐに対応できる体制をつくっていた。この拡販が、後々同社のさらなる業態転換のきっかけとなっていく。
デジタル化への対応と、印刷+αのサービス展開に踏み切ったきっかけ
その後、時は経ち2020年。当時、すでにメインクライアントだったカーディーラーでは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、販売促進の手法が大きく見直される。紙を中心とした折込チラシやDMの中止・削減が起こったのだ。クラインアントは、エンドユーザーとの接点を、スマートフォンといった情報機器を中心に据える方針で、販売促進の手法をメールマガジン等のオンラインで発信できるものに切り替えていった。同社の売上も大幅に減少し、再びさらなる変化を求められるようになった。
「非常に大きな危機感を持った。それまでも売上が減少するといった事象はあったが、自社の技術やノウハウを活かしながらも、印刷+αのサービスの提案や、デジタル化への対応を進めて行かなければならないと強く感じた」(田尾社長)
同社は、紙以外の販促手法の導入を推進するクライアントにも選ばれる、付加価値のあるサービス開発と、またそれらを自主提案することができる営業スタイルの導入を急務として進めていくことになる。
サービス開発と「Cloud CIRCUS for Creative」
当時同社は、新規サービスの開発について、「印刷技術や独自のノウハウに+αで提案できるサービス」「過剰な設備投資をせずに新規参入を検討できるサービス」という2つを軸として検討を進めた。例えば、印刷技術を活用できる観点で導入した立体物への印刷。UVインクを使用し、アクリルや木材・金属など様々な素材への印刷が可能である。これにより、ノベルティ領域へ参入した。また、協力会社との360度パノラマコンテンツ事業の立上げや動画制作など、クライアントの販売促進の課題解決に繋がる事業に挑戦していった。
そんな最中、田尾社長の目にとまったのが、クラウドサーカス(以下「CC社」)が提供する印刷会社向けのデジタル提案支援サービス「Cloud CIRCUS for Creative」だった。
このサービスは、印刷会社の「商談創出」に繋がるツールと「単価・利益率改善」に繋がるツール(電子ブック等)の提供がセットになったもの。また、ツール導入後も、専任担当者による定例会議や研修を通して、目標設定や案件および企画の相談、価格設定といった、提案型営業の実践において必要なアドバイスや営業管理支援を行う。このようなコンサルティングも通常サポートとして組み込まれている。
当時同社は、紙と親和性の高いデジタルツールであれば取り組みやすく、かつ印刷+αの提案ができることで、将来的には印刷案件の受注にも繋げていくことができるだろうという狙いから、「Cloud CIRCUS for Creative」の導入を決めた。