プリプレスから「経営改革」提案|日本アグフア・ゲバルト 岡本勝弘社長に聞く
[新春インタビュー]今春に新ブランド発表〜プレートビジネス再加速へ
「アルミの世界的な価格高騰と供給不足によりプレートメーカーとして『我慢の年』を強いられた」と昨年を振り返る日本アグフア・ゲバルト(株)の岡本勝弘社長。その状況が改善に向かう中で、2023年は「プリプレスを起点とした経営改革」という視点で独創的なソリューション提案に乗り出す方針を打ち出している。また、アグフア・ゲバルトグループのオフセット事業譲渡にともない、日本においても社名変更を含む新たなブランディングが計画されている。そこで今回、岡本社長に今年一層アクセルを踏み込む計画のプレートビジネスと、新たなブランディング展開について語ってもらった。
2022年はアルミ供給不足で「我慢の年」
昨年は年明け早々、新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置からのスタートで、残念ながら終始コロナ禍の話題が絶えない年だった。さらに社会情勢を一変させたのが、2月からのウクライナ情勢問題。世界経済を大きく揺るがす事態となっている。
これら問題が世界的なインフレを加速させ、印刷業界も資材の高騰や物流の停滞によって大きく影響を受け、我々アグフアを含むプレートメーカーにおいても、とくに世界的な価格高騰と供給不足に陥ったアルミの問題は過去にないほど深刻な状況が続いた。この背景には、エネルギー価格の高騰にともない欧州のアルミ製錬メーカーが製造量を調整したことなど、複合的な要因がある。
言うまでもなく、アグフアの主力事業はプレートビジネス。日本においては2月のpage展の段階で、高耐刷性ガム処理プレート「Adamas(アダマス)」と検版性に優れた機上処理プレート「Eclipse(エクリプス)」という2種類の環境対応プレートの新製品の拡販にアクセルを踏み込もうとした矢先のことだった。我々は世界的なアルミ不足課題に直面する中で、既存ユーザーへの供給維持を最優先とし、不本意ながら新規を含む営業拡大に向けた活動を抑制せざるを得ない状況が続いた。当初の戦略プランを実行できない「我慢の年」だったというのが正直なところである。
商業印刷・パッケージ分野で「アダマス」に確かな手応え
しかし、第4四半期(10月〜12月)に入ると、価格・供給ともにこの状況は改善の方向に進み、我々も新規営業活動を開始。新型コロナの状況の落ち着きと政府の景気刺激策などによる景況感の改善もあって、我々が提案するアダマス、エクリプスの新規導入も進んだ。
とくにアダマスは商業印刷に加え、パッケージ分野でも新規での採用が進んでいる。視認性をはじめ、刷り出しの速さ、印刷適性などを理由に、無処理版からの入れ替えもあった。パッケージ業界は、依然として特色やUV耐刷の問題で無処理化しづらいマーケットではあるが、この分野のプリプレスにおけるケミカルレス化、あるいは環境対応を実現するプレートとしてアダマスが注目され、この分野で我々も非常に手応えを感じている。
一方、プレートにおいては、価格改定を発表し、お客様には値上げのご無理をお願いしたが、これにともなって採用を中止するユーザーはほとんどなかった。これは価格だけではなく、アズーラによる速乾印刷などのアグフア独自の技術、あるいはプリプレスから印刷までのサポート力をお客様から認めていただいている結果だと思っている。
ワークフロー製品については、サブスクリプションモデルの採用比率が高まっているほか、クラウドワークフローの引き合いもここにきて増加傾向にある。この背景には、エネルギーコストの上昇、加えて半導体不足によるPCサーバーの供給不安などがあり、昨年は助成金を活用した投資も多かった。
さらに、当社のもうひとつの主力事業で、ここ数年伸びてきたインクジェット分野は、昨年も引き続き堅調に推移した。分野別で見ても商業印刷、サインディスプレイ、パッケージなど様々で、世界的な物流遅延による納期遅れは若干生じたものの、半導体不足の影響が軽微だったことから供給面で問題は生じなかった。今年はその受注残もあり、良いスタートを切れると見ている。